京急大師線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 22:16 UTC 版)
概要
「京急の創業路線」であり、路線名の通り沿線の川崎大師(平間寺)の参拝路線として開業した[2]。寺社仏閣へのアクセスを目的とした日本初の参詣鉄道であった[3]。また、当路線の輸送サービスと新聞などのプロモーションの影響により、正月に川崎大師に参拝することが庶民の間で人気となり、近代以降の初詣の一般化に大きな影響を与えた[3][4][5]。現在は臨海部の京浜工業地帯への通勤路線としても機能している[2]。基本的に線内折り返しの普通列車のみで、京急川崎駅で京急本線と接続している。
路線データ
- 路線距離:4.5 km
- 軌間:1,435 mm
- 駅数:7駅(起・終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1,500 V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 最高速度:60 km/h[1]
- 保安装置:C-ATS
- 列車無線:誘導無線方式(IR)、デジタル空間波無線方式(デジタルSR)(併用)
沿線概況
大師線は多摩川の南側を大師道(国道409号)に沿って東西方向に走っている。
京急川崎駅1階の大師線ホームを発車すると、北東へ直進して本線への連絡線および川崎変電所へ至る車両基地を右折し、東方へ直進して大師道(国道409号)を平面交差する。やがてカーブで減速し六郷橋(および旧六郷橋駅)の下をくぐる。そのまま徐行運転を続け、東南東方向にカーブし港町駅に至る。そして、ほぼ東へ直進し、運河橋梁付近を高架で通過し鈴木町駅付近で地上に戻る。そのまま地上を直進し川崎大師最寄りの川崎大師駅を出た付近で再び大師道(国道409号)と平面交差する。川崎大師駅からは東北東方向に約0.2 kmほど進み、国道と並行して東方へ直進する。そのまま東門前駅を通ると、2019年に地下化された大師橋駅へ至り、ここで産業道路(神奈川県道6号)と、首都高速横羽線を立体交差で通過する。大師橋駅を過ぎると東南東方向に向きを変えて地上に上がり、終点の小島新田駅に達する。
2005年頃から港町駅 - 大師橋駅間の沿線で大規模マンション建設が相次ぎ、2007年から2016年の10年間だけでも沿線人口は33%増加した[6]。鈴木町駅、川崎大師駅、東門前駅の南側は昔ながらの商店街も賑わっており、商店街の周辺に閑静な住宅地も広がっている。大師道(国道409号)より北側は多摩川リバーサイド地区、大師河原・殿町地区として大師線地下化事業や首都高速川崎線整備とともに都市再整備が進められ、工場跡地を利用した大規模マンション(リヴァリエ)や複合商業施設(マーケットスクエア川崎イーストやミナトマチプラザなど)の建設も行われた。
川崎大師で有名な大師線ではあるが、大師橋・産業道路以東に広がる工業地帯や、60を超える企業・機関が誘致されているキングスカイフロントへの通勤路線としての一面もあり、小島新田駅周辺からは浮島地区各社の通勤バスも発着している。また、大師線沿線から東京都心、横浜方面、羽田空港へのアクセスが良好なこともあり、都心回帰による沿線人口の増加とともに朝夕の乗客の流れに変化が起きている。
運行形態
普通列車のみ運行されている。全列車が京急川崎駅 - 小島新田駅間を往復する運用で、他路線との直通や途中駅での折り返しはない。ワンマン運転は行われていない。
毎年大晦日から元日にかけては川崎大師参拝客のため終夜運転が行われる(2021年以降は未実施)。また、かつては本線からの直通電車が年末年始に運転されることがあった。1956年から1972年まで(1965年と1971年は工事の影響で運転せず)は品川からの直通急行が運転され[7]、2000年代初頭の正月ダイヤでは本線からの直通列車が運転されたことがある[8][9]。
基本的に平日ラッシュ時5分間隔、日中は10分間隔の運転となっているが、1月上旬の川崎大師参拝客輸送を始め、沿線行事やイベントのある日には日中6分間隔に増発される。
原則、京急川崎駅では3番線を使用する。車庫に入る場合のみ1番線を使用する。
注釈
- ^ 開業後の一か月平均の収入が70 - 80円。火力発電などの経費を差し引いた純益が50円前後に上ったが、一因としては運賃が六郷橋 - 大師間で上等8銭・下等5銭と高かったこともある。1932年3月2日、横浜蚕糸外四品取引所に額面20円で株式上場したところ前場で22円80銭、後場で23円まで高騰した。
出典
- ^ a b 『京急電鉄のひみつ』 - PHP研究所
- ^ a b “京急の最初の路線「大師電気鉄道」が開業した日 川崎~大師間 -1899.1.21”. 乗りものニュース (2022年1月21日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ a b “鉄道トリビア(286) 初詣の慣習は鉄道会社の集客競争がきっかけで広まった”. マイナビニュース (2015年1月10日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “初詣の成り立ちは鉄道のプロモーション?!初詣の意外な歴史に迫る!”. マツログ. オマツリジャパン (2020年12月28日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “初詣は「日本の伝統」じゃない! 実は、鉄道会社がつくり上げたものだった”. Merkmal(メルクマール) (2022年5月21日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “京急大師線連続立体交差事業”. 川崎市. 2020年10月11日閲覧。
- ^ 吉本尚 『京急ダイヤ100年史 1899−1999』 電気車研究会、1999年4月1日 p.110-p119
- ^ 『京急初の横須賀方面〜川崎大師直通特別電車「だるまエクスプレス2003」運転 12月1日(日)から会員480名募集』(プレスリリース)京浜急行電鉄、2002年11月22日。 オリジナルの2003年2月2日時点におけるアーカイブ 。2015年8月4日閲覧。
- ^ 『年末年始、電車・バス輸送ダイヤについて』(PDF)(プレスリリース)京浜急行電鉄、2003年12月9日。 オリジナルの2005年2月10日時点におけるアーカイブ 。2015年8月4日閲覧。
- ^ 京急新1000形が大師線運用に|鉄道ファンrailf.jp 2008年1月9日閲覧
- ^ 朝日放送『ビーバップ!ハイヒール』2009年12月17日放送。
- ^ 『鉄道ピクトリアル』電気車研究会、1993年3月。
- ^ 「鉄道ニュース」『信号保安』第11巻第12号、信号保安協会、1956年12月1日、16頁、ISSN 0286-3006“信号場の開設”
- ^ 『鉄道ピクトリアル』2017年8月号 (No.935) p238 - p239、電気車研究会。
- ^ a b 京急大師線連続立体交差事業(1期(1)区間)地下運行を開始しました。 - 川崎市建設緑政局、2019年3月5日閲覧。
- ^ “3月3日(日)大師線運休およびバス代行輸送実施のお知らせ”. 京浜急行電鉄. 2020年5月19日閲覧。
- ^ “京急線6駅の駅名を2020年3月14日(土)に変更します” (PDF). 京浜急行電鉄 (2019年12月16日). 2019年12月16日閲覧。
- ^ 2010年10月21日より導入。
- ^ “駅別一日平均乗降人員”. 京急電鉄. 2021年4月9日閲覧。
- ^ “川崎市統計書”. 川崎市. 2021年1月1日閲覧。
- ^ “道路施設等の計画的な老朽化・地震対策の推進について” (PDF). 川崎市. p. 8. 2019年1月25日閲覧。
- ^ a b c d 川崎市建設緑政局 (29 January 2021). 令和2年度 川崎市まちづくり委員会 (PDF). 令和3年1月29日 大規模投資的事業についての資料 (PDF). pp. 8–10. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “京浜急行大師線連続立体交差事業 都市計画事業認可の変更について” (PDF). 川崎市. 2016年4月29日閲覧。
- ^ “京浜急行大師線連続立体交差事業”. 川崎市 (2016年4月13日). 2016年4月27日閲覧。
- ^ 連続立体交差事業 京浜急行大師線 平成29年度再評価実施事業 調書 (PDF) - 川崎市、2019年3月3日閲覧。
- ^ “京急大師線連続立体交差事業の今後の進め方について”. 川崎市議会まちづくり委員会 (2019年2月8日). 2019年6月7日閲覧。
- ^ “東京都区間 | 道路 | 国土交通省 関東地方整備局”. www.ktr.mlit.go.jp. 2020年4月9日閲覧。
固有名詞の分類
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