ヤマノイモ 採取・栽培

ヤマノイモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 14:17 UTC 版)

採取・栽培

山芋畑

元来は野生の植物であり、晩秋にできる根茎を食用とするため、かつては山へ行って掘ってくるものだった。ヤマノイモと外観がよく似ている種にオニドコロがあり、収穫の際に間違うことがある[5]。オニドコロは葉が互生し、苦くて食べられない[5]

イモ(担根体)は晩秋になって地上部が枯れるころ(11 - 1月[6])が収穫時期である。枯れ残った蔓を目当てにして山芋を探すが、地上部が枯れると場所がわからなくなるので、枯れる前に目印をつけておく[13]。芋を掘るには深い穴を掘らねばならないので、なるべく斜面の所を探す。掘る道具は、柄の長い[6]、シャベルや移植ゴテのほか[13]掘り棒芋掘り鍬と呼ばれる大人の背丈ほどので、先端が平らになったようなものを使う。蔓が地面に入り込んだところを特定し、イモを折らないように周辺の土を深く掘り下げて、石などを取り除きながら注意深く掘り出す[6]。地中深く曲がりくねって伸びるイモは、折らずに掘り出すまで難しさがあり[6]、先端まで掘り出すにはかなりの根気がいる[13]。うまく掘り出せた場合、蔓の元端に当たる芋の端を残して、穴を埋めるときに一緒に埋めておけば翌年も芋が生育し、再び収穫することができる。

むかごの採取時期は秋(9 - 11月ごろ)で、熟すと触れただけでつるから落ちるので、帽子などを受け皿にして採取する[6]

現在ではむかごの状態から畑で栽培されており、流通しているのは栽培ものが多い。収穫しやすいように、細長い塩化ビニールパイプや波板シートを使って栽培している。なお、天然のもの(自然生・自然薯)は、掘り出す行為そのものが山の斜面の崩壊を助長すること等の理由から、山芋掘りが禁止されている場合がある。


注釈

  1. ^ あえて薬味の青のりをふりかけなかった、とも描写されている。
  2. ^ 箱根の「はつはな」など。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Dioscorea japonica Thunb. ヤマノイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 吉村衞 2007, p. 120.
  3. ^ a b c 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 110.
  4. ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 124.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 貝津好孝 1995, p. 73.
  6. ^ a b c d e f g h 篠原準八 2008, p. 108.
  7. ^ 北海道南西部桧山地域に生育するヤマノイモの遺伝的特性
  8. ^ a b c d 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 220.
  9. ^ a b c d e 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 214.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 馬場篤 1996, p. 112.
  11. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 211.
  12. ^ 板木利隆『図解やさしい野菜づくり』家の光協会、1996年10月、257頁。ISBN 978-4259533946 
  13. ^ a b c d e f g h i 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 111.
  14. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  15. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  16. ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 212.
  17. ^ a b c d 篠原準八 2008, p. 109.
  18. ^ 団野源一「ヤマノイモを生で食することができる理由は生でんぷんの消化性によるものではない」『大阪青山大学紀要』第2巻、大阪青山大学『大阪青山大学紀要』編集委員会、2009年3月、29-31頁、CRID 1050564288823221632ISSN 18833543国立国会図書館書誌ID:10905743 
  19. ^ 徳力富吉郎東海道53次』保育社、1992年、37頁https://books.google.com/books?id=FLeXGx7AGLMC&pg=PA37 
  20. ^ a b c 清水茂雄「静岡市とその周辺の文学」『国文学年次別論文集 国文学一般平成10(1998)年』、42–43頁2000年https://books.google.com/books?id=oFAjAQAAMAAJ 
  21. ^ 岡本かの子『東海道五十三次』1939年
  22. ^ 見坊豪紀山かけ」『三省堂国語辞典』、1152頁1982年https://books.google.com/books?id=Hge5AAAAIAAJ 
  23. ^ a b 植原路郎『蕎麦談義』東京堂出版、1973年、61頁https://books.google.com/books?id=b6YCAAAAMAAJ 
  24. ^ マグロ祭りきょうから 都留」『読売新聞』2019年3月16日https://www.yomiuri.co.jp/local/yamanashi/news/20190315-OYTNT50101/ 
  25. ^ 自然薯の栽培を10年前に始め自然薯料理店「みや古」、玉城町に」『伊勢志摩経済新聞』2014年2月23日https://iseshima.keizai.biz/headline/1968/ 
  26. ^ 赤井達郎京の美術と芸能: 浄土から浮世へ』京都新聞出版センター、1985年、89頁https://books.google.com/books?id=f9BMAAAAMAAJ 
  27. ^ 谷口歌子「′85短歌セミナ--2-古典文学にみる食物--奈良・平安期を中心として」『短歌研究』第42巻、第2号、313頁、1990年https://books.google.com/books?id=nCtmAAAAIAAJ 
  28. ^ 『群書類従 厨事類記』国立公文書館デジタルアーカイブ
  29. ^ 林文子「『日葡辞書』が語る食の風景(1)」『東京女子大学紀要論集』第58巻第2号、東京女子大学、2008年3月、134頁、CRID 1050001337659479552ISSN 04934350 
  30. ^ 歴史民俗用語辞典「薯蕷麺イモメン(imomen)」 日外アソシエーツ 2015年09月19日閲覧
  31. ^ 第十八改正日本薬局方”. 厚生労働省. p. 生薬-166. 2021年4月5日閲覧。
  32. ^ 『作りおきおかずで朝ラクチン!基本のお弁当300選』180頁。
  33. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:グロリオサ 厚生労働省
  34. ^ 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、204 - 205頁。ISBN 978-4-07-273608-1 
  35. ^ 吉村衞 2007, p. 121.
  36. ^ a b 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 215.
  37. ^ 鈴木晋一 『たべもの史話』 小学館ライブラリー、1999年、195 - 201頁






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