マンドリンオーケストラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 03:52 UTC 版)
作品
オリジナルと編曲
作曲家がマンドリンオーケストラで演奏されることを目的として書かれた作品(ここでは「マンドリンオリジナル作品」とする)は管弦楽団のそれに比べて相対的に少なく、マンドリンオリジナル作品で関係者以外に対して知名度のある作品も皆無といってよい状況にある(映画「クレイマー、クレイマー」や歯磨剤(ライオン・デンターシステマ)のCMで使用されたヴィヴァルディのマンドリン協奏曲ハ長調作品425が有名であるが、これはマンドリン独奏と弦楽合奏の協奏曲であり、マンドリンオーケストラのための曲ではない)。
このため、クラシック音楽やポピュラー音楽(映画音楽など)をマンドリンオーケストラのために編曲した作品が演奏会で取り上げられることが多い。
こうした「編曲もの」の中には本来管弦楽や吹奏楽のために書かれたのにもかかわらず、現在では原曲では演奏されずにマンドリンオーケストラでのみ演奏されている作品がある。中野二郎・松本譲・石村隆行・日比野俊道等の編曲によるボッタキアリ、アマデイ、デ・ミケーリの管弦楽曲、マネンテ、フィリッパ父子の吹奏楽曲などがそれに当たるが、こうした作品は関係者ですらマンドリンオリジナル作品であるという誤解を抱いていることが多い。これは日本だけに限ってみられる現象である。
なお明治大学マンドリン倶楽部では以前からOBの古賀政男が作曲した歌謡曲を演奏してきたほか、クラシックやポピュラーからの編曲作品を積極的に取り上げており、特にラテン音楽の演奏では特異な地位を占めている。
協奏曲と声楽
独奏楽器とマンドリンオーケストラのための協奏曲は、イタリアでは独奏マンドリンの協奏曲であるベッルーティ『ハンガリアの黄昏』があげられる程度である。しかしドイツでは協奏曲は盛んで、マンドリン・ギター・オーボエ・リコーダー・オカリナ・アコーディオン・チェンバロなど様々な協奏曲が作られている。日本では服部正の『ラプソディー』(マンドラ)、帰山栄治の『協奏詩曲』(マンドリン)・『三章』(ヴァイオリンチェロ)、龍野順義の『響』(ピアノ)、高島明彦の『協奏曲』(マンドリン)などがある。
声楽(独唱・合唱)を伴うマンドリンオーケストラ曲として日本の関係者に知られているものはフランスの作曲家マチョッキの『麦祭』程度であったが、ドイツでは現在に至るまで多くの作品が発表されている。日本人作曲家では服部正の『街景色』『次郎物語』、中野二郎の『子供歳時記』、鈴木静一の『カンタータ・レクイエム』、藤掛廣幸の『八つのバラード』などがあげられる。
音楽物語
音楽物語(ミュージカル・ファンタジー)は日本に多く見られるジャンルであり、1970年代まで盛んに作曲された。これはナレーターによる物語の朗読にマンドリンオーケストラが平行して演奏する形式の音楽である(独唱または合唱が入ることも多い)。映画音楽作曲家でもある鈴木静一やオペラ作曲家でもある服部正・大栗裕が好んで作曲し、他に帰山栄治・松本譲なども作曲している。そのほとんどが童話や民話をもとにした親しみやすさを意識したものであるが、鈴木の『朱雀門』『西海の挽歌』や大栗の『隅田川』『大原御幸』のように古典を題材に取ったものもある。
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