プライヤ プライヤの概要

プライヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/17 03:01 UTC 版)

日本で標準的なプライヤ(英米ではSlip joint combination pliers)

英米ではペンチを含む挟み工具全般をプライヤ (pliers:常に複数表示) と呼ぶ。ピボット(ジョイント部分)がスライド構造の日本で標準的なプライヤはその中の一種で、Slip joint combination pliersに相当。コンビネーション(Combination)の名前は、日本語で「複合機能」の意味があり、物を先端で挟み・あごの中央部でつかみ・結合軸付近で軟鋼線を剪断切断するという3つの機能がある事からきている。そのほかには、たとえば、ニードルノーズプライヤ needle nose pliers(あるいは"long-nose cutting pliers") (ラジオペンチ)、ロッキングプライヤ(バイスグリップ)などと、それぞれpliersの中の一種として扱われる。

プライヤの歴史

人類が火で料理する方法を発見した時から、料理したものを掴む何らかの道具はあった。

熱い物を安全に取り扱うために使われる道具は、通常やっとこと呼ばれている。

そして、人類が金属工具を製造する事を学んだ時、プライヤも金属で製造され始めた。金属製プライヤが最初に使用されたのは、ヨーロッパ紀元前2000年頃との記録がある。プライヤが創り出されるまで、やっとこは金床で真赤に加熱されたを打つ時に、それをつかむことに使用された。この例はやっとこを使っているギリシャの神ヘーパイストス(Hephaistos)の イラスト によって示されている。そしてその形は、現在まで当初とほとんど変化のない形状で残っている。

プライヤを考える大きな原則のひとつは、その形状が機能に従うということである。人類は、物をつかむ問題に遭遇したその時々に、問題を解決するためにプライヤを設計した。これにより、たくさんの異なるデザインのプライヤが出来た。馬に蹄鉄をはかせたり、鋭い有刺鉄線の垣根を張ったりすることのような特定の仕事で働くための人達が使うプライヤがある。そして、ワイヤーを切ることやスナップリング・ファスナーのようなひとつの機能のためにだけ設計されているプライヤがある。また、それとは逆に例えば、ねじの切断、ワイヤー切断、ワイヤーの絶縁体の皮むき、コネクタの圧縮も一丁で出来る多機能なプライヤもある。

これにより、今日生産されるプライヤのモデルは驚異的な数の異なるモデルとなった。現在、一般的に使用されるタイプとして約100種類はある。しかし、プライヤのモデルの圧倒的な数は、プライヤをどんな工具箱の中でも最も役に立つ工具のひとつとした。やるべき特定の仕事がある場合、そして、それがプライヤを必要とするなら、その仕事のために設計されている物を発見することは容易である[2]

機能

全ての手動工具に言えることであるが、プライヤは人間の手の効果を高めるために作られている。プライヤは、てこの原理(2つの腕からなるレバー比の法則)に従って設計されており、アゴまたは先端で、より大きな力に握り部の小さい力を変えることが出来る。プライヤで大きな力をだす場合、左右の本体を接合しているリベットの中心から掴み部や切断刃までの距離を出来る限り小さく、そしてハンドルの握り部までの距離を大きくする。ただし、エレクトロニクスや精密機器の場合は、多くの場合それほど大きな力を必要としないので狭い場所での作業もより簡単に出来る様にコンパクトなタイプになっている。

用途によるタイプ分類

プライヤの最も一般的なタイプの個別の呼び名は、コンビネーションプライヤ・ラジオペンチニッパ・メカニックプライヤ・ウォーターポンププライヤである。

  • 切断と掴むタイプ: コンビネーションプライヤ、ラジオペンチ等
  • 切断と挟むタイプ: ペンチ
  • 掴むタイプ: フラットペンチ、ロングノーズプライヤ、ウォーターポンププライヤ等

結合部の方式

コンビネーションプライヤ(スリップジョイントプライヤ)の結合部方式は、レイオンジョイント(lay-on joint)方式と言う。プライヤの左右本体は、リベット留めかボルトナットにより組み合わされているレイオンジョイント方式のプライヤが一般的である。通常あご間の距離が、ハンドルを90度開くと軸の細くなっている方向と本体溝のスリップする方向が一致して、穴の狭いところを通って隣の穴にスリップして、口の開きを調節できるように結合軸と本体溝部形状が設計されている。これにより、プライヤの歯は異なる大きさの物を掴むことが出来る。設計により、あごは二つ以上のサイズに調節する事が出来るが、コンビネーションプライヤは二段階調節である。

結合部がラップジョイント(重ね合わせ)方式の例は、ニッパが代表的である。本体と一緒に研磨されたこの種のジョイントを見ると、ハンドルの結合部リベットが固定され、プライヤのハンドルは結合部を回転中心に回る。この種の結合部を製造する方法は、ジョイントリベットの両端をかしめるタイプと、もう一つの方法は、実際にひとつの鍛造ハンドルと一体となっている結合軸に、他のハンドルを挿入後、一体軸先端をかしめて保持させる方法がある。これらの種類の結合部は非常に隙間なくしっかりと組み合わせられる。

ボックスジョイント方式の例は、ウォーターポンププライヤでみられる。この種の結合方式は、プライヤ本体の半分がプライヤの残り半分の本体の切れ込み溝に通される。その後、あごを多くの異なるサイズに合わせる事が出来る特別なボルトを取り付ける。ウォーターポンププライヤ(ボックスジョイントプライヤ)は、硬化された特殊合金鋼でできているので高価であるが、大部分の軟鋼製プライヤより過酷な作業に使う事が出来る。ボックスジョイント結合方式は、最初の二つの結合方式より適用されるプライヤが少ない[3]

材質

プライヤは、合金か非合金工具鋼鍛造品である。標準タイプは、0.45パーセントの炭素含有量の工具鋼が使用される。最高品質で強力品は、より高い炭素含有量かクロムバナジウムなどを含む材料から作られる。


  1. ^ JIS B 4614日本産業標準調査会経済産業省
  2. ^ THOMAS DUTTON 『THE HAND TOOLS MANUAL』p43.p44、2007年発行、TSTC Publishing ISBN 978-1-934302-36-1
  3. ^ THOMAS DUTTON 『THE HAND TOOLS MANUAL』p52.p54、2007年発行、TSTC Publishing ISBN 978-1-934302-36-1
  4. ^ 技能士の友編集部『作業工具のツカイカタ』126頁、2002年8月25日13版発行。株式会社大河出版。
  5. ^ JIS B 4626日本産業標準調査会経済産業省
  6. ^ KNIPEX History
  7. ^ en:Channellock
  8. ^ US Pat.1950362
  9. ^ US Pat.2592927
  10. ^ TOOLS AND THEIR USES,DOVER PUBLICATIONS, INC.in USA, p50,ISBN 978-0-486-22022-2
  11. ^ Pittsburgh Post-Gazette - Google ニュース アーカイブ検索”. news.google.com. 2021年12月20日閲覧。
  12. ^ Self-adjusting utility plier Patent number: 4651598
  13. ^ ROBO GRIP Trademark of IDEAL Industries, Inc. Serial Number: 74027582 :: Trademarkia Trademarks” (英語). trademark.trademarkia.com. 2021年12月20日閲覧。
  14. ^ (NO WORD) Trademark of Western Forge, Inc. Serial Number: 75273390 :: Trademarkia Trademarks” (英語). trademark.trademarkia.com. 2021年12月20日閲覧。
  15. ^ google patent US 2007/0169592 A1
  16. ^ WIPO国際公開番号 WO/2004/103646国際出願番号 PCT/EP2004/005537
  17. ^ Wessels Living History Farm Vise Grip
  18. ^ US 1489458 
  19. ^ US Patent number1489458
  20. ^ , http://www.asktooltalk.com/articles/toolhistory/vise-grip.php+2010年2月25日閲覧。 
  21. ^ TRADEMARK VISE-GRIP
  22. ^ THOMAS DUTTON 『THE HAND TOOLS MANUAL』p73、2007年発行、TSTC Publishing ISBN 978-1-934302-36-1
  23. ^ US 2838973 
  24. ^ 『工具の本2010』113頁、2010年3月5日13発行。株式会社 学研パブリッシング出版。
  25. ^ 『工具の達人』77頁、2007年1月27日 株式会社 講談社 三推社 発行。


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