トヨタ・エスティマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 04:30 UTC 版)
初代(1990年-2000年)TCR10/11W/TCR20/21W型
トヨタ・エスティマ(初代) TCR10/11W/TCR20/21W型 | |
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前期型(1990年5月 - 1994年7月) | |
中期型(1994年8月 - 1997年12月) | |
後期型(1998年1月 - 2000年1月) | |
概要 | |
別名 |
欧州 : トヨタ・プレビア オーストラリア:トヨタ・タラゴ(TARAGO) |
製造国 | 日本(愛知県刈谷市) |
販売期間 | 1990年5月 - 2000年1月 |
設計統括 | 植田豊 |
デザイン | CALTY |
ボディ | |
乗車定員 | 7または8人 |
ボディタイプ | 4ドアミニバン |
パワートレイン | |
エンジン |
2TZ-FE型 2.4 L 直列4気筒DOHC(前期型) 2TZ-FZE型2.4 L 直列4気筒DOHCスーパーチャージャー(中・後期型) |
変速機 | コラム4速AT/フロア5速MT[注釈 1] |
サスペンション | |
前 | ストラット式 |
後 |
ダブルウィッシュボーン式(TCR11/21W) 4リンク式(TCR10/20W) |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,860 mm |
全長 | 4,750 mm |
全幅 | 1,800 mm |
全高 | 1,780 - 1,820 mm |
車両重量 | 1,680 - 1,900 kg |
その他 | |
販売終了前月までの新車登録台数の累計 | 16万5977台[1] |
系譜 | |
先代 | トヨタ・マスターエース(エミーナ) |
後継 |
エスティマT(エミーナ) エスティマL(ルシーダ) |
1989年に幕張メッセで初開催された第28回東京モーターショーにコンセプトモデルとして出展。「動くカットモデル」の展示は大きな話題となった。それから約半年後の1990年5月12日に市販化され、卵をイメージさせる未来的なスタイルで「高性能ニューコンセプトサルーン」として注目を集めた。従来のワンボックスカーでは前輪前・運転席下に位置しているエンジンを、横に75°寝かせることにより平床化に成功、前輪も運転席の前方に置くことにより、当時は世界でも類を見ないアンダーフロア型ミッドシップレイアウトが採用され、「ミッドシップは室内が狭く実用性に欠ける」[注釈 2]という常識を覆した。
元々のコンセプトは、当時トヨタが開発中であった2ストローク「S2」エンジンを搭載した新時代のMPV(マルチ・パーパス・ビークル)というものであり、このエンジンのおかげでエンジンルームをコンパクトにまとめられる目論見であったが、排ガス対策の問題が解決できずエンジンの開発を断念したため、急遽ハイエースの部品を流用した一般的な直列4気筒2.4リットルエンジンを傾斜搭載することとなった。
商用グレードを用意しない独立モデルであり、サスペンションは前軸は全てマクファーソンストラット式、後軸は車両型式によってダブルウィッシュボーンおよび4リンク式と区別しており、国産車としては珍しい仕様であった。発売当時はモノグレード体系・7人乗りの1種類のみで、駆動レイアウトはミッドシップと四輪駆動。搭載されたエンジンは2TZ-FE型・直列4気筒2438 cc(135馬力)の1種類であった。
驚きを持って迎えられたエスティマではあったが、横幅が5ナンバー(小型乗用車)サイズに収まるキャブオーバー型ミニバンが主流であった当時の日本においては大柄で高価すぎた(296.5 - 335万円)ため、また北米市場(アメリカ・カナダ)では2.4 Lエンジンが非力、ヨーロッパ市場では高価だという理由で支持を得られなかった。欧米市場では「プレビア」(Previa)、オセアニア市場では「タラゴ」(Tarago)として販売された[注釈 3]。競合他車がV型6気筒エンジンを搭載する中で、エンジンパワーで劣りエンジンが座席の下にあるため振動・騒音が多く、エスティマは価格に比して静粛性、ひいては高級感に劣ると評された。
1992年1月には日産・バネットセレナへの対抗策として、車幅および全長の短縮によって車体サイズを5ナンバー枠に収め[注釈 4]、前後デザインの変更を施したエスティマエミーナ(トヨタ店取り扱い)とエスティマルシーダ(カローラ店取り扱い)を発売した。自動車雑誌などでは、単にエスティマの幅を縮めたモデルと表現されているが、元々エスティマ開発当初から小型版のナローモデルは想定されていた。前述の日産バネットセレナの好調を見て、廉価グレードを増やし発売されたものである。エスティマがシングルグレードであった反面、エミーナ/ルシーダはビニールシート仕様の廉価版から、エスティマと同様の豪華版まで幅広いグレード体制とした。
1993年2月、廉価グレードとして「X」を追加。トップグレードの「エスティマ」が7人乗り・4輪独立懸架であるのに対し、「X」は8人乗りで、リアサスペンションに4リンク式を採用した。
1994年8月、かねてからのパワー不足の解消のため、「エスティマ」にスーパーチャージャー搭載モデル(2TZ-FZE型、160馬力)が追加された。
1996年8月にグレード体系を刷新し、それまでの2グレード体制から、上から「G」「V」「X」となる。「V」は「X」のスーパーチャージャー付きモデルとして設定され、「G」は「エスティマ」と同様のものである。また、運転席・助手席SRSエアバッグ・ABSを全車に標準装備された。
1998年1月、マイナーチェンジを行い外装デザインを一新。また、新たにエアロパーツを装着したグレード「アエラス」を設定。全グレードでスーパーチャージャー付きとなった。しかし、1994年に登場し大ヒットを記録していたホンダ・オデッセイの台頭により、低下した売り上げの回復には至らなかった[注釈 5]。この頃から街中の燃費は従来通りだが、高速走行などでは燃費の向上が図られており、10年排気ガス規制に伴って排ガス記号もE-からGF-に切り替わっている。
実際の販売状況は、エンジンルームの狭さゆえにエンジンの大型化に対応できず、オデッセイや日産・エルグランドをはじめとするライバルがV型6気筒の3.0 Lや3.5 Lへと移行する中で苦戦を強いられた。そもそも「コンパクトな2ストロークエンジンを搭載した新時代のMPV」というコンセプトの肝であるエンジンが完成しなかったために、エスティマは非常に不幸なモデルライフを送ることとなった。販売台数を稼いだエミーナ/ルシーダでは前席足元空間が狭く、その乗り味も本来の親エスティマが持っていた大らかな乗り味ではなく、開発陣が目指していたものとは違う方向となり、戦略の転換を余儀なくされた。
2代目、3代目にモデルチェンジされて以降も、その際立ったスタイルからカスタムカーのベースとなることが多い。特にセルシオ (2代目後期)のフロントを移植可能にした社外品が販売され、この顔面スワップを行った車両は通称「セルティマ」と呼ばれ、他にも多数のメーカーが同車用のエアロパーツやアフターパーツを販売するなどしたことも、カスタムベースとしての人気を博した要因と言える。さらにバランスのよいハンドリング、MRであるがゆえの安定性から一部の愛好家にはこの車を何台も乗り継ぐという例も多かった。
1999年12月[2]、生産終了。在庫対応分のみの対応となる。
2000年1月、2代目と入れ替わる形で販売終了。北米での販売はこの代限りとなり、以降はカムリをベースとした大型ミニバンのシエナに移行した。
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初代エスティマ(前期型・リア)
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初代エスティマ輸出仕様(前期型・リア)
注釈
- ^ a b c MTは海外仕様版のみで、日本国内は全てATのみの設定
- ^ ただし、室内空間と引き換えに、点検整備の際は前席シートを外す必要があるという欠点が残ったため、交換する部品によってはエンジンやミッションを降ろす手間がかかる仕様であった。
- ^ 以前はタウンエースの同市場輸出名として使われていた。
- ^ ガソリン車に限っては排気量が2.4Lであるため、3ナンバー車扱いとなる。
- ^ オデッセイは高さ以外はエスティマとほぼ同じ大きさである。
- ^ ただし、バッテリーが前席下部にあるため運転席、助手席と二列目シートのウォークスルーが不可能となっている。
- ^ 同年12月21日に発表されたホンダ・エリシオン プレステージは同じ3,456cc V型6気筒ではあるが300PSを達成した。
- ^ 20系アルファード/ヴェルファイアハイブリッドも同じシステムを搭載する。
- ^ ただし、尻尾や目など一部アイテムは走行時に外すことになる。
- ^ 3.5 L車の冷間時及びハイブリッド(冷間時・温間時共)は既に取得済。
- ^ a b 東京都では販売チャネル制度の廃止に伴い、2019年4月より全てのトヨタブランド販売店での取扱となっている。
- ^ 東京都のトヨタ西東京カローラでは2019年4月より取り扱いを開始
出典
- ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第64号11ページより。
- ^ “エスティマ(トヨタ)1990年5月~1999年12月生産モデルのカタログ”. リクルート株式会社 (2020年12月1日). 2020年12月1日閲覧。
- ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第43号15ページより。
- ^ “エスティマ(トヨタ)2000年1月~2005年12月生産モデルのカタログ”. リクルート株式会社 (2020年12月1日). 2020年12月1日閲覧。
- ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第68号15ページより。
- ^ 『TOYOTA、エスティマ、エスティマハイブリッドを一部改良 -同時に、特別仕様車“VERY Edition”を新設定-』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2014年9月2日 。2014年9月2日閲覧。
- ^ トヨタ「エスティマ」異例の改良を決めた理由 登場10年の現行3代目は、新境地へ向かう 東洋経済ONLINE 2016年2月17日
- ^ 『TOYOTA、エスティマ、エスティマハイブリッドをマイナーチェンジ』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2016年6月6日 。2016年6月6日閲覧。
- ^ “りゅうちぇる、心霊写真の正体は“もののけ”「勘違いして寄ってきた」”. ORICON STYLE. (2016年12月7日) 2016年12月7日閲覧。
- ^ 「トヨタエスティマ/エスティマハイブリッド カタログ」、2018年4月発行。CT011301-1804
- ^ “トヨタ「エスティマ」10月生産終了で約30年の歴史に幕! ミニバン人気のなか定番車種が廃止される理由”. くるまのニュース (2019年8月30日). 2019年11月8日閲覧。
- 1 トヨタ・エスティマとは
- 2 トヨタ・エスティマの概要
- 3 初代(1990年-2000年)TCR10/11W/TCR20/21W型
- 4 2代目(2000年-2006年)ACR30W/ACR40W/MCR30W/MCR40W/AHR10W型
- 5 3代目(2006年-2020年)ACR5#W/GSR5#W/AHR20W型
- 6 車名の由来
- 7 取り扱い販売店
固有名詞の分類
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