ソーセージ 日本

ソーセージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 03:01 UTC 版)

日本

日本農林規格ではソーセージは、「肉を動物の腸などに詰めた食べ物」の総称であり、ウインナーフランクフルトチョリソーなどの種類がある。昔は[いつ?]、羊の腸を使ったソーセージをウインナー、豚の腸を使ったソーセージをフランクフルト、牛の腸を使ったソーセージをボロニアソーセージと定義していたが、製法が発達してケーシングには人工の薄い皮を使っている製品も誕生して以降は動物の腸の種類ではなく、ケーシングの太さによって、呼び名の区別をしている。羊の腸より豚の腸の方が太いので、ウインナーよりフランクフルトの方が見た目が太く、牛の腸を使うイタリアのボロニアはさらに太くなっている。

現行の定義でウインナーは「羊腸のソーセージ」又は「太さが20mm未満のソーセージ」の最小サイズ、フランクフルトは「豚腸のソーセージ」又は「太さが20mm以上36mm未満」、あまり普及していないがボロニアは「牛腸のソーセージ」又は「太さが36mm以上」の最大サイズとなっている。チョリソーは肉の製法が異なるソーセージの種類であり、一般的にソーセージがひき肉を使用するのに対して、刻み肉を使用したソーセージである。

更に階級があり、特級を「豚肉、牛肉のみ使用。結着材料を一切使用していないモノ」、上級を「豚肉、牛肉のみ使用。結着材料は5%以下、でん粉含有率が3%以下」、標準を「羊、うさぎ、鶏など、牛豚以外を混合。結着材料は10%以下、でん粉含有率が5%以下」と定めている[14][15]

日本のソーセージ史

1970年(昭和45年)に日本ハム・ソーセージ工業協同組合より発行された『食肉加工百年史』においても、今日肉製品と呼ばれているハム、ベーコン、ソーセージ類の製造がいつごろから開始されたかは明確には知りがたいとされている。食肉加工に関する文献では、1892年(明治25年)に博文舘より発行された農学士、今関常次郎の著書『農産製造萹』に腸詰の製法の記述がある。本格的な製法は、1910年(明治43年)2月1日から3月2日に渡る30日間、農商務省種畜牧場渋谷分場にて開催された豚肉加工講習会で、農商務省嘱託技師であった飯田吉英により都道府県派遣の技術者に公開された。飯田は米国イリノイ州に留学して豚肉加工技術を学んでおり、この加工技術は主に米国式のものである。

一方民業では、1910年(明治43年)にドイツ人コックであったマーチン・ヘルツが横浜市山下町にて小規模ながら純ドイツ式のハム・ソーセージの店を開き、外国人に販売していた。千葉県匝瑳郡東陽村(現・山武郡横芝光町)から、山下町にあった豚肉卸問屋であった江戸清に見習いに来ていた大木市蔵(以下、市蔵)は、1912年(明治45年)、マーチン・ヘルツに弟子入りドイツ式ハム・ソーセージの加工技術を学ぶ。1914年(大正3年)、第一次世界大戦が開戦となると日独は交戦国となり、ドイツ人であったマーチン・ヘルツは収容所へ入れられそうになったが、市蔵が当時の神奈川県知事に掛け合い、最小規模の食肉加工業を知事より許され、ヘルツと市蔵はハム・ソーセージの製造販売会社、合資会社サシズヤ商会を設立し市蔵が代表者となる。市蔵は大正6年11月1日に開催された「第1回神奈川県畜産共進会」に日本で初めて出品し、1920年(大正9年)に独立。横浜市元町1丁目に合名会社大木ハム製造商会を設立。自身の事業に励むかたわら、大正末期から昭和初期にかけて東京帝国大学や東京農業大学で食肉加工技術の講義を担当するとともに、農商務省の嘱託(無給)で各地で豚肉加工の講習会を行い技術を各地に伝えた。また、自身の工場にも多くの弟子を受け入れ、1人前になるとその技術を必要とする企業の要望に応じ派遣した。1937年(昭和12年)に発行された大木ハム製造商会のパンフレットには、市蔵が日本で初めて製造を始め、またその弟子数十人を全国に派遣しているとともに、大学等の講習会で教えを受けた者は万人を超えるとの記述がある。この流れに属するものは大木流と呼ばれている。

1915年(大正4年)9月から1920年(大正9年)1月までの間、千葉県千葉郡幕張町実籾(現・習志野市東習志野)に第一次世界大戦中に日本の捕虜となったドイツ兵約1000人が収容されていた「習志野俘虜収容所」があった。1918年(大正7年)高栄養価食品としてソーセージに注目していた農商務省は、ドイツ国内でソーセージ職人だったカール・ヤーンら5人が収容所内でソーセージを製造している事を聞きつけ、千葉市に新設された農商務省畜産試験場の飯田吉英技師を収容所に派遣し、カール・ヤーン達からソーセージ製造の秘伝を公開してもらった。このソーセージ製造技術は農商務省の講習会を通じて、日本全国の食肉加工業者に伝わった。この事から、習志野市は「日本のソーセージ製法 伝承の地」といわれるようになった。また、捕虜となったドイツ人の何人かは日本にとどまり、ヘルマン・ウォルシュケアウグスト・ローマイヤーカール・ブッチングハウスなどは日本にソーセージの文化を広める事に貢献するのであるが、当時は日常に親しまれていた食品ではなく、普及するまでには相当の時間を要した。一方、北海道では1919年に来日したカール・ワイデル・レイモンの功績が大きい。一般社団法人日本記念日協会は2015年(平成27年)から、11月1日を「ソーセージの日」と認定したが、これが1917年(大正6年)11月1日、「第1回神奈川県畜産共進会」に出品され(大木市蔵の作。出品名義は「江戸清」高橋清七)、品評会に出品された最初の国産品であったことに因む。

JAS規格による分類

日本では日本農林規格(JAS)によりさまざまなソーセージの独自規格が定められており、原材料や調理法やケーシング(腸もしくはフィルムの皮)によっていくつかの表示できる名称が定められている[16]

元々は第二次世界大戦後の物資が不足していた時代に、模造食品が横行し食べた人に健康被害などが頻出したことから始まった法制度である[16]

ソーセージ[16]
家畜、家兎の肉を塩漬したりひき肉にしたりしたものを調味料及び香辛料で調味して、練り合わせた後、ケーシング等に充填。それをくん煙にしたり、加熱したり、乾燥させたりしたもの[16]
でんぷんや小麦粉、コーンミール、植物性たんぱく、乳たんぱくなどは結着材料として原材料中15%までなら良いとしている。それ以外に野菜や穀類、チーズ、ベーコン、ハムなども原材料中50%までなら加えても良いとされている。
ケーシング・大きさ別[16][17]
  • ウインナーソーセージ - 太さ20ミリメートル未満で羊腸を使用したもの
  • フランクフルトソーセージ - 太さ20ミリメートル以上36ミリメートル未満で豚腸を使用したもの
  • ボロニアソーセージ - 太さ36ミリメートル以上で牛腸を使用したもの
これらは名称の由来となった地名の製法と必ずしも一致しない。
原料別[16]
  • 特級 - 豚肉および牛肉やそれらの脂肪層、調味料、香辛料だけでつくられたもの。結着材料は使用できない。
  • 上級 - 豚肉および牛肉やそれらの脂肪層、調味料、香辛料に結着材料を加えたもの。結着材料の使用は5パーセント以下であること、でんぷんや小麦粉、コーンミールなどは3パーセント以下であること。
  • 標準 - 馬肉、めん羊肉、山羊肉、家禽、家兎肉など指定された種類の肉が使用できる。
  • 混合ソーセージ - 魚肉及び鯨肉が15パーセント以上50パーセント未満のもの[18]
  • 魚肉ソーセージ - 魚肉及び鯨肉が50パーセント以上のもの
魚肉及び鯨肉の原材料に占める重量の割合が15パーセント以上になると「ソーセージ」の規格を外れる。
加工法別
  • セミドライソーセージ - 製品の水分量が55パーセント以下のもの[19]
  • ドライソーセージ - 製品の水分量が35パーセント以下のもの[19]

赤いウインナー

日本独自の商品として、赤色102号コチニール色素などで表面を赤く着色したウインナー・ソーセージがある。これは良質の素材を用いることができなかった昭和中期に考案されたもので、プレスハムなどと同様に発色の悪さを隠すための苦肉の策であったと伝えられている。

しかしながら現在では、たこさんウィンナーに代表されるお弁当の定番として多くの日本人の支持を得ているほか、アニメなどを通じて「日本固有の食材」として海外にもその存在が認知されている。

基本的には、あまり高級なウインナー・ソーセージには使用されず、お弁当に使われるような比較的に安価な商品において着色されることが多い。


  1. ^ 大辞林 第三版
  2. ^ wiktionary:en:sausage
  3. ^ 宮崎正勝『知っておきたい「食」の日本史』角川ソフィア文庫・P217
  4. ^ Andrew Dalby and Sally Granger, A classical Cookbook(Los Angeles,CA,1996)
  5. ^ a b 『ホットドッグの歴史』株式会社原書房、2017年7月21日、21,22頁。 
  6. ^ Craig Whitlock, ‘Germans Take Pride in the Wurst; 1432 Decree Shows Thuringian Sausage May Have Been Nation's First Regulated Food’, Washington Post(2 December 2007)
  7. ^ Harold McGee 2008, pp. 165–167.
  8. ^ ドイツ美食マップ ソーセージ編 (メットヴルスト) ドイツニュースダイジェスト]
  9. ^ 21世紀研究会『食の世界地図』116頁 文藝春秋
  10. ^ Peery, Susan Mahnke; Reavis, Charles G. (2002). “Vegetarian Sausages”. Home Sausage Making (3rd ed.). North Adams, Mass.: Storey Books. pp. 201–212. ISBN 978-1-58017-471-8. オリジナルの11 May 2016時点におけるアーカイブ。. https://books.google.com/books?id=9RwtfASSFaYC&q=%22vegetarian%20sausage%22&pg=PA201 
  11. ^ Lapidos, Juliet (2011年6月8日). “Vegetarian Sausage: Which imitation pig-scrap-product is best?”. Slate. オリジナルの2013年5月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130527214046/http://www.slate.com/articles/life/food/2011/06/vegetarian_sausage.single.html 
  12. ^ Godwin, Nigel (2009年2月27日). “St David's Day recipes: Glamorgan sausages”. The Daily Telegraph (London). オリジナルの2012年5月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120524094805/http://www.telegraph.co.uk/foodanddrink/recipes/4864411/St-Davids-Day-recipes-Glamorgan-sausages.html 
  13. ^ Bibliografische Daten: GB131402 (A) ― 28 August 1919”. Espacenet. 2016年2月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月24日閲覧。
  14. ^ ウインナー、フランクフルト、ボロニアの違いは何...”. お問い合わせ | 丸大食品. 2021年10月2日閲覧。
  15. ^ 【ソーセージとウインナーの名前の違い】フランクフルトやボロニアソーセージ!呼び名の違いを簡単に解説「羊や豚、牛の腸の太さによって区別!JASマークの特級、上級、標準、特定JASは品質の違いがある」”. BIJOH (2020年7月22日). 2021年10月2日閲覧。
  16. ^ a b c d e f 「ソーセージ」だけでは味がわからない?種類豊富な「ソーセージ」の種”. 。オリーブオイルをひとまわし (2021年5月21日). 2023年1月31日閲覧。
  17. ^ ウインナー、フランクフルト、ボロニアの違いは何ですか?”. 丸大食品. 2023年1月31日閲覧。
  18. ^ 日本農林規格の改正について「混合ソーセージ」” (PDF). 農林水産省 (2014年). 2023年1月31日閲覧。
  19. ^ a b ドライソーセージ”. 第一三共. 2023年1月31日閲覧。
  20. ^ 国際がん研究機関 (26 October 2015). IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat (PDF) (Report). WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings”. ハーバード公衆衛生大学院 (2015年11月13日). 2017年5月6日閲覧。
  21. ^ 「3.6 肉種判別」『食品表示を裏づける分析技術: 科学の目で偽装を見破る』東京電機大学出版局、2010年。ISBN 978-4501625801 
  22. ^ www.urbandictionary.com "Gentleman's sausage"






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