キューポラ 特徴

キューポラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 09:03 UTC 版)

特徴

キューポラのメリットとして、大量の溶湯を連続溶解できる、コークスで溶解するので溶解コストが電炉に比べて低い、亜鉛など不純物を精錬する作用があるので、電炉で使用できない材料を使用することができる、炭素分がコークスから補給(吸炭)されるので、電炉のように溶解による損失を追加する必要が無い、という点があげられる。

デメリットとして、目的の成分を得るための操炉方法が非常に難しく熟練を要する、熱交換器や集塵機など設備が大型で投資費用が大きい(甑炉は単純な構造のため安価である)、粉塵やCO2ガスの発生量が多く環境に大きな影響を与えてしまう、コークス由来の硫化物が発生する、上記のメリットである吸炭が過剰となって品質低下が起こりうる、ということがある。

また、コークスの60%以上は中国からの輸入に頼っているので、中国国内の需給動向によって価格の変動が激しくなっており、将来的にコークスの確保が懸念されるという点があげられる。

現在では、地球温暖化や温室効果ガスの排出などの環境問題、特にCO2発生量の多さを問題視されるため、中周波誘導炉(電気炉)に取って代わられつつあり、昭和50年代ごろまでは300社以上に設置されていたとされるキューポラも、現在では不況などの影響もあるが数十社のみである。しかしながら、溶湯を大量に必要とする自動車部品、建設機械、船舶部品の鋳物工場では現在でも主流であり、CO2発生量対策として排出された熱量を回収し有効利用する施策を進めている鋳物会社も多い。

各地のキューポラ

埼玉県川口市のキューポラ

キューポラのある街』(1962年)

キューポラの、屋根から突き出たその姿は鋳物工場のシンボル的な存在で、鋳物産業が盛んだった1980年代ごろまでの埼玉県川口市にはキューポラが多く見られ、小説キューポラのある街』の舞台となっている。同作品は1962年に吉永小百合主演で映画化された[2]

実際に屋外に見えているのはキューポラに付属する排煙筒である。キューポラ本体が屋根から突き出していると炎や燃焼した細かいコークスが飛び散り、周辺の延焼の原因になる。キューポラ以前の甑全盛の時代では、工場群の屋根からコークスの炎が立ち上る風景が川口のあちこちで見受けられた。これにちなんでか、川口オートレース場では例年「GI日刊スポーツキューポラ杯争奪戦」が行われている。ただし、1970年代から1990年代ごろの川口においては、かつて鋳物工場であった場所は次々とマンションへと変貌していき、21世紀の川口において鋳物工場はごくわずかしか残存していない。

しかし、川口市は川口駅東口に川口市立中央図書館メディアセブンなどの公共施設、ならびにマルエツ無印良品などの民間商店が入居しているキュポ・ラという建物を建築する事により、過去のキューポラをしのんでいる。また、キューポラをモチーフとしたマスコットキャラクター、きゅぽらんが存在する。

川口オートレース場のイメージ曲『ぶっちぎりの青春』・『ぶっちぎりの青春☆now』(歌:ささきいさお)でも歌われている。

富山県高岡市のキューポラ

詳細は金屋町の項「旧南部鋳造所のキューポラと煙突」を参照

高岡銅器で有名な富山県高岡市の鋳物製造発祥の地金屋町の一角には、旧南部鋳造所のキューポラと角形煙突が残されている(現在はパチンコ店駐車場内)。明治期に入り金屋町ではいくつかの近代的な西洋式溶鉱炉キューポラが建造された。その後ほとんどのキューポラは役目を終え取り壊されていったが、旧南部鋳造所のキューポラは1924年大正13年)に建造され、2000年平成12年)2月まで使用された唯一現存するもので、2001年(平成13年)10月12日には国の登録有形文化財に登録されている。


  1. ^ a b 菅野利猛. “世界文化遺産、韮山反射炉の10大ミステリーを解く”. 2020年5月15日閲覧。
  2. ^ 都道府県の教科書 編集部 編『埼玉の教科書』JTBパブリッシング、2021年11月30日、62頁。ISBN 9784533147111 


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