オリゲネス 思想

オリゲネス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/04 09:04 UTC 版)

思想

オリゲネスの世界観や歴史観は、その師であるクレメンスとよく似ており、新プラトン主義(ネオプラトニズム)の影響を強く受けたものであった。プラトンの『ティマイオス』と旧約聖書の『創世記』の世界創造の記述を融合しようとし、「創造とは神が無に自分の存在を分かち与えたことである」と唱えた。『諸原理について』が現存する代表的著作だが、そこでは神、世界、人間、人間の神への回帰などが論じられている。オリゲネスの思想の特徴として、聖書の記述を字義通りでなく、なんらかの比喩として解釈する比喩的聖書解釈の手法があげられる。

オリゲネスは膨大な著作を残したが、死後300年たった553年異端の宣告を受けたため、著作の多くが失われた。オリゲネスが異端の疑惑をうけたのは以下のような理由からであった。

  1. 人間の救いについての「すべてのものが完全に救われる」という思想が人間の自由意志の問題と矛盾すると考えられたため。
  2. 魂が先在するという思想が「人間ははじめから魂と肉体を持つ」という考え方と矛盾すると考えられたため。
  3. 三位一体理解において父なる神が子なる神より役割的に上にあるという従属説英語版的理解が問題とされたため。

死後300年を経た6世紀にもなって異端宣告が出されたのは、オリゲネス本人に対するというよりは、彼の追随者を称する者への影響力を考慮したからと考えられる。

主要な著書

主要著作は創文社「キリスト教古典叢書」および教文館「キリスト教教父著作集」に収録されている。

  • 『諸原理について』…オリゲネスの代表的著作、比喩的聖書解釈の手法で知られる。
    • 一巻 神(第一原理)、精神的諸存在(天使・英知)について
    • 二巻 物質世界、罪、救いについて
    • 三巻 徳、自由(人間の神への回帰)について
    • 四巻 全体の方法論的反省、源泉について
  • ヘクサプラ
    • 旧約聖書の六つのテキスト【ヘブライ語、ヘブライ語(ギリシア語音訳)、ギリシア語(七十人訳、シュンマコス、アキュラ、テオドティオン】を対照した書。ヘブライ語を知らない人でも、ヘブライ語聖書の発音がどのようなものかを知ることができる。
  • 『ケルソス駁論』
  • 『マタイ福音書注解』
  • 『ヨハネ福音書注解』
  • 『雅歌註解』
  • 『雅歌講話』
  • 『ロマ書註解』
  • 『創世記講話』
  • 『出エジプト記講話」
  • 『レビ記講話」
  • 『民数記講話」
  • 『ヨシュア記講話』
  • 『士師記講話』
  • 『サムエル記講話』
  • 『詩編講話』
  • 『イザヤ書講話』
  • 『エレミア書講話』
  • 『エゼキエル書講話』
  • 『ルカ福音書講話』
  • 『過越について』
  • 『ヘラクレイデスとの対話』
  • 『祈りについて』
  • 『殉教の勧め』

日本語訳

  • オリゲネス 著、小高毅 訳『諸原理について』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1978年。ISBN 4423392097 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳『雅歌注解・講話』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1982年。ISBN 4423392100 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳『ヨハネによる福音注解』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1984年。ISBN 4423392119 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳『祈りについて;殉教の勧め』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1985年。ISBN 4423392127 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳『ヘラクレイデスとの対話』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1986年。ISBN 4423392135 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳『ローマの信徒への手紙注解』創文社〈キリスト教古典叢書〉、1990年。ISBN 4423392143 
  • オリゲネス 著、小高毅 訳、小高毅(編訳) 編『中世思想原典集成1 初期ギリシア教父』平凡社、1995年、495–630頁。ISBN 4582734111 (「創世記講話・出エジプト記講話・民数記講話」所収)
  • オリゲネス 著、出村みや子 訳『ケルソス駁論 I』教文館〈キリスト教教父著作集〉、1987年。ISBN 4764229080 
  • オリゲネス 著、出村みや子 訳『ケルソス駁論 II』教文館〈キリスト教教父著作集〉、1997年。ISBN 4764229099 
  • オリゲネス 著、出村みや子 訳『ケルソス駁論 III』教文館〈キリスト教教父著作集〉、2022年。ISBN 4764229102 

  1. ^ オリゲネス”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、コトバンク. 2017年8月13日閲覧。
  2. ^ D・A・v・ハルナック『教義史綱要』久島千枝、1997年、P.98頁。 
  3. ^ a b González, Justo L. (2002.6-2003.5). Kirisutokyoshi. Manabu Ishida, 学 石田. Tokyo: Shinkyo shuppansha. ISBN 4-400-22114-8. OCLC 123037046. https://www.worldcat.org/oclc/123037046 
  4. ^ a b c d 『原典 古代キリスト教思想史 1』 pp.301-302。


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