イトカワ (小惑星)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/09 13:55 UTC 版)
地名
イトカワに確認された主要な地形や岩塊、クレーターなどには日本の宇宙開発や「はやぶさ1」ミッションにゆかりのある名前が多く提案されている[40]。2007年5月までにサガミハラ、ミューゼスシー、ウチノウラの3ヵ所が国際天文学連合(IAU)に承認され[91]、続いて2009年2月19日に14ヵ所の地名がIAUによって承認された[92]。現在までに公式に承認されたものはUSGS: Itokawa nomenclature[93]に一覧されている。
なおイトカワ上の経度は、ブラックボルダーと呼ばれる黒い岩塊を経度0としたため、ブラックボルダーは通称グリニッジとも呼ばれることになった[94]。
クレーター
地名 | 由来 |
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カタリナ (Catalina) | アリゾナ大学カタリナ天文台。カタリナ・スカイサーベイにより多くの小天体を発見している[92]。 |
フチノベ (Fuchinobe) | 神奈川県相模原市中央区の地名。JAXA相模原キャンパスの最寄り駅が淵野辺駅である[92]。 |
ガンド (Gando) | カナリア諸島の地名。スペインの射場がある[92]。 |
ハマグイラ (Hammaguira) | アルジェリアのサハラ砂漠にあったフランスのアマギール射場[92]。 |
カミスナガワ (Kamisunagawa) | 北海道空知支庁上砂川町。1991年から2003年まで微小重力実験施設があった[92]。 |
カモイ (Kamoi) | 神奈川県横浜市緑区鴨居。「はやぶさ」製造の拠点であったNEC東芝スペースシステム株式会社の旧事業所の最寄り駅が鴨居駅[92]。 |
コマバ (Komaba) | 東京都目黒区駒場。旧宇宙科学研究所の所在地[92]。 |
ローレル (Laurel) | アメリカ合衆国メリーランド州の都市ローレル市。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の所在地[92]。 |
ミヤバル (Miyabaru) | 鹿児島県肝属郡肝付町の地名。内之浦宇宙空間観測所のレーダーサイト所在地[92]。 |
サンマルコ (San Marco) | ケニア沖に存在したサンマルコ・プラットフォーム。1988年まで稼動したイタリアの射場[92]。 |
地域
地名 | 由来 |
---|---|
アルコーナ地域 (Arcoona Regio) | オーストラリアの地名。「はやぶさ」のカプセル回収地であるウーメラの近くである[92]。かつて「ウーメラ砂漠」として提案されたが、火星のクレーター「ウーメラ」に使われていたため却下された。そのため初期の文献では "Little Woomera" 等と表記されていることがある。 |
リニア地域 (LINEAR Regio) | リンカーン地球近傍小惑星探査。地球近傍小惑星サーベイプロジェクトであり、イトカワを含め数多くの小天体を発見している[92]。 |
ムーセス-C地域 (MUSES-C Regio) | 「はやぶさ」の開発時の名称[92]。「ミューゼスの海 (Muses Sea)」として提案されていた。そのため初期の文献では "Muses Sea" と表記されていることがある。イトカワ最大のレゴリス地域で、はやぶさが着陸したことにちなんだ「はやぶさポイント」がある[95]。 |
オオスミ地域 (Ohsumi Regio) | 大隅半島。内之浦宇宙空間観測所の所在地[92]。 |
サガミハラ地域 (Sagamihara Regio) | 神奈川県相模原市。JAXA相模原キャンパスがある。イトカワ北極周辺のレゴリス地域[96]。 |
ウチノウラ地域 (Uchinoura Regio) | 鹿児島県内之浦町。現在は合併して肝付町の一部となっており、内之浦宇宙空間観測所にその名前を残している。「はやぶさ」を打ち上げるときに利用した射場でもある[92]。 |
ヨシノブ地域 (Yoshinobu Regio) | 鹿児島県熊毛郡南種子町の地名。種子島宇宙センターの射場がある[92]。 |
注釈
- ^ ヨシノダイは相模原市の宇宙科学研究所相模原キャンパスがある地名から取った名称であるが、現在のところ正式に承認された地名ではなく、通称である。
- ^ 普通コンドライトは鉄の含有量が多い順に、H、L、LLの3タイプに分類される(松田、圦本共編、2008)。
- ^ コンドライトの中で最も変成度が低いものを3とし、4から6と数字が大きくなるに従って熱による変成が進んだタイプとなり、一方、3から1へと数字が小さくなるに従って水による変成が大きなものとなる(松田、圦本共編、2008)。なお、6よりも熱変成が進んだコンドライトを7をする場合もある(土山、2007)。
- ^ 後述のようにブラックボルダーはイトカワの経度0度とされ、イトカワの座標の基準となり、グリニッジとも呼ばれることになったが、ブラックボルダーもグリニッジも正式名称ではなく、通称である。
- ^ 藤原、はやぶさチーム(2006)によれば、イトカワ表面の反射率の差は10パーセントを越える。
出典
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- イトカワ (小惑星)のページへのリンク