火熨斗(ひのし)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 13:57 UTC 版)
熱した金属の熱と重みにより、布を伸ばすという工夫は中国においても古くからあり、そのような行為を「熨」(「尉:布をしりの下において熱を加え伸ばす」+「火:後世、『尉』が主に敵を鎮圧する武官を指すようになったため、特に火を使うことを強調し別字とした」)と言い、それに用いる道具を「火熨」又は「熨斗(『斗』はひしゃくでその形状をあらわす)」と言った。 日本では、平安時代に編纂された辞書『倭名類聚抄』に火熨斗(ひのし)が記載され、貴族の邸宅などで使われていた。片手鍋のような銅製容器に熾き火にした木炭を入れ、熱と容器の重みで布のしわを伸ばしたほか、冬は寝具を温める用途もあった。庶民は、麻などで織った服を洗った後は、台に載せて砧で打ってしわを取っていた。後には、こてを炭火で加熱して火熨斗の代わりとされるようになった。後述する炭火アイロンが登場した後も、火熨斗は和服を伸ばす際には多く用いられ、電気式アイロンが普及する昭和30年頃まで使われていた。 「火熨斗」から、「伸ばす」ことを意味する「のし」に「熨斗」の字が当てられ、やがて、「熨斗鮑」(製造には火熨斗は用いられない)を経由し、慶事の贈答に用いる「熨斗(のし)」の用字となる。 なお、アイロンとしての「熨斗」は漢語では「うっと」と読み、現代中国語においても「熨斗(普通話:yùndǒu)」はアイロンを意味する。また、トルコ語の「ütü」やロシア語の「утюг(utyug)」など、中央アジアや中東の一部、東ヨーロッパのスラヴ系の言語においては中国語の「熨斗」を語源とする語でアイロンを呼ぶ。 古墳時代の火熨斗高井田山古墳(大阪府柏原市)出土。柏原市立歴史資料館展示。 古墳時代の火熨斗新沢千塚126号墳(奈良県橿原市)出土。東京国立博物館展示。
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