H 氏賞とは? わかりやすく解説

エッチし‐しょう〔‐シヤウ〕【H氏賞】

読み方:えっちししょう

《「H」は基金提供者平沢貞二郎頭文字から》日本現代詩人会すぐれた詩集発表した新人に贈る賞。昭和26年1951)に創設


H氏賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 23:12 UTC 版)

H氏賞(エイチししょう)は日本現代詩人会が主催する、新人の優れた現代詩詩人詩集を広く社会に推奨することを目的とした文学賞詩壇の芥川賞とも呼ばれる[1]

概要

協栄産業を興した平澤貞二郎基金により1950年昭和25年)に創設された[2][3]。当初の呼称は「H賞」。基金拠出者で、プロレタリア詩人でもあった平澤が匿名を強く希望したため、賞の名はHirasawaの頭文字だけを冠する[3][4]。「佐藤春夫がH氏では?」との憶測も流れたため、平澤と共に発案者であった村野四郎はやむを得ず、日本経済新聞コラム「交遊抄」の1965年1月6日付けで、平澤であると明かした。

石垣りん富岡多恵子吉岡実黒田喜夫入沢康夫白石かずこ青木はるみなどを輩出している。

選考は毎春、前年1月1日から12月31日の間に発行された、会員・非会員無関係に新人の全詩集を対象に行なわれ、会員投票と選考委員の推薦により決定。受賞者には記念品と賞金50万円が贈られる。同様の性質と価値をもった賞に、日本詩人クラブ主催の「日本詩人クラブ新人賞」がある。

授賞記録

(出典:[5][6]

授賞回次 授賞年度 受賞者名 受賞作品名または業蹟
第1回 1951年 殿内芳樹 断層
第2回 1952年 長島三芳 黒い果実
第3回 1953年 上林猷夫 都市幻想
第4回 1954年 桜井勝美 ボタンについて
第5回 1955年 黒田三郎 ひとりの女に
第6回 1956年 鳥見迅彦 けものみち
第7回 1957年 井上俊夫 野にかかる虹
金井直 飢渇
第8回 1958年 富岡多恵子 返礼
第9回 1959年 吉岡実 僧侶
第10回 1960年 黒田喜夫 不安と遊撃
第11回 1961年 石川逸子 狼・私たち
第12回 1962年 風山瑕生 大地の一隅
第13回 1963年 高良留美子 場所
第14回 1964年 石原吉郎 サンチョ・パンサの帰郷
第15回 1965年 沢村光博 火の分析
第16回 1966年 入沢康夫 季節についての試論
第17回 1967年 三木卓 東京午前三時
第18回 1968年 鈴木志郎康 罐製同棲又は陥穽への逃亡
村上昭夫 動物哀歌
第19回 1969年 石垣りん 表札など
犬塚堯 南極
第20回 1970年 知念栄喜 みやらび
第21回 1971年 白石かずこ 聖なる淫者の季節
第22回 1972年 粒来哲蔵 孤島記
第23回 1973年 一丸章 天鼓
第24回 1974年 郷原宏 カナンまで
第25回 1975年 清水哲男 水甕座の水
第26回 1976年 荒川洋治 水駅
第27回 1977年 小長谷清実 小航海26
第28回 1978年 大野新
第29回 1979年 松下育男
第30回 1980年 一色真理 純粋病
第31回 1981年 小松弘愛 狂泉物語
ねじめ正一
第32回 1982年 青木はるみ 鯨のアタマが立っていた
第33回 1983年 井坂洋子 GIGI
高柳誠 卵宇宙水晶宮博物誌
第34回 1984年 水野るり子 ヘンゼルとグレーテルの島
第35回 1985年 崔華國 猫談義
第36回 1986年 鈴木ユリイカ Mobile・愛
第37回 1987年 佐々木安美 さるやんまだ
永塚幸司 梁塵
第38回 1988年 真下章 神サマの夜
第39回 1989年 藤本直規 別れの準備
第40回 1990年 高階杞一 キリンの洗濯
第41回 1991年 杉谷昭人 人間の生活
第42回 1992年 本多寿 果樹園
第43回 1993年 以倉紘平 地球の水辺
第44回 1994年 高塚かず子 生きる水
第45回 1995年 岩佐なを 霊岸
第46回 1996年 片岡直子 産後思春期症候群
第47回 1997年 山田隆昭 うしろめた屋
第48回 1998年 貞久秀紀 空気集め
第49回 1999年 鍋島幹夫 七月の鏡
第50回 2000年 龍秀美 TAIWAN
第51回 2001年 森哲弥 幻想思考理科室
第52回 2002年 松尾真由美 密約-オブリガート
第53回 2003年 河津聖恵 アリア、この夜の裸体のために
第54回 2004年 松岡政則 金田君の宝物
第55回 2005年 山本純子 あまのがわ
第56回 2006年 相沢正一郎 パルナッソスへの旅
第57回 2007年 野木京子 ヒムル、割れた野原
第58回 2008年 杉本真維子 袖口の動物
第59回 2009年 中島悦子 マッチ売りの偽書
第60回 2010年 ティアン・ユアン 石の記憶
第61回 2011年 高木敏次 傍らの男
第62回 2012年 廿楽順治 化車
第63回 2013年 石田瑞穂 まどろみの島
第64回 2014年 峯澤典子 ひかりの途上で
第65回 2015年 岡本啓 グラフィティ[7]
第66回 2016年 森本孝徳 零余子回報[8]
第67回 2017年 北原千代 真珠川 Barroco
第68回 2018年 十田撓子 銘度利加[9]
第69回 2019年 水下暢也 忘失について
第70回 2020年 高塚謙太郎 [10][11]
第71回 2021年 石松佳 針葉樹林[12][13]
第72回 2022年 うるし山千尋 ライトゲージ[14]
第73回 2023年 小野絵里華 エリカについて
第74回 2024年 尾久守侑 Uncovered Therapy[15]

参考文献

  1. ^ H氏賞と現代詩人賞”. 日本現代詩人会. 2021年2月14日閲覧。
  2. ^ 社会貢献活動 |協栄産業株式会社”. www.kyoei.co.jp. 2021年2月14日閲覧。
  3. ^ a b H氏賞 | 文学賞事典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス”. 情報・知識&オピニオン imidas. 2021年2月14日閲覧。
  4. ^ 会の歴史”. 日本現代詩人会. 2021年2月14日閲覧。
  5. ^ H氏賞受賞作・候補作一覧1-70回|文学賞の世界”. prizesworld.com. 2021年2月14日閲覧。
  6. ^ 受賞者リスト”. 日本現代詩人会. 2021年2月14日閲覧。
  7. ^ 岡本啓さん「ざわめきのなかわらいころげよ」インタビュー 風景は語りかけてくれる|好書好日”. 好書好日. 2021年2月14日閲覧。
  8. ^ H氏賞に森本孝徳さん 日本現代詩人会:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年2月14日閲覧。
  9. ^ [短信]/十田さんH氏賞/現代詩人賞は清水さん | 沖縄タイムス紙面掲載記事”. 沖縄タイムス+プラス. 2021年2月14日閲覧。
  10. ^ H氏賞に高塚謙太郎さん:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2021年2月14日閲覧。
  11. ^ H氏賞に高塚謙太郎さん 野村喜和夫さん現代詩人賞”. 日本経済新聞 (2020年9月12日). 2021年2月14日閲覧。
  12. ^ H氏賞に石松佳さん:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2021年3月9日閲覧。
  13. ^ H氏賞に石松佳さん 現代詩人賞は鈴木さん”. 日本経済新聞 (2021年3月6日). 2021年3月9日閲覧。
  14. ^ “H氏賞、うるし山千尋さんの「ライトゲージ」…現代詩人賞は倉橋健一さん「無限抱擁」”. 読売新聞社. (2022年3月5日). https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220305-OYT1T50182/ 2022年3月7日閲覧。 
  15. ^ “H氏賞に尾久守侑さん 日本現代詩人会が選定”. 毎日新聞. (2024年3月2日). https://mainichi.jp/articles/20240302/k00/00m/040/139000c 2024年3月3日閲覧。 

H氏賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 14:11 UTC 版)

平澤貞二郎」の記事における「H氏賞」の解説

詳細は「H氏賞」を参照 1950年旧知の仲であった友人村野四郎新橋から銀座へ向かう雑踏の中で偶然再会した平澤は、結成して間もなく資金面での窮状にあった日本現代詩人会(設立当初現代詩人会)の状況聞き私財投じて、同団体に対して当時としては大金であった1万円映画1本の入場料80円の時代)を毎年継続的に寄付することを申し出た。この資金元手1951年、詩を目指す新人のための文学賞「H賞」(当時)が創設された。同賞は平澤匿名希望したため、そのイニシャル冠した前になった。しかし、賞が有名になるにつれて、「佐藤春夫H氏なのではないか」(Haruo Satoから)などの声が出始めたため、村野1965年1月6日付の日本経済新聞の「交遊抄」の中で、平澤こそがH氏であることを明かした同年5月第15回H氏賞授賞記念五月の詩祭」において、平澤公の場でH氏賞の生みの親として正式に挨拶をするとともに信託基金設定することなどを表明した。この基金1985年に、正式に公益信託平澤貞二郎記念基金となった

※この「H氏賞」の解説は、「平澤貞二郎」の解説の一部です。
「H氏賞」を含む「平澤貞二郎」の記事については、「平澤貞二郎」の概要を参照ください。

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