DCAM3の観測計画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 22:09 UTC 版)
DCAM3で科学観測を行うDCAM3-Dの観測目的は SCIの発射と爆破、小惑星リュウグウへの衝突の確認 SCIの衝突によって生成されるイジェクタの観測 の2点である。まずはやぶさ2の探査目標となるSCIによって形成されるクレータ探査のために、SCIの発射と爆破の状況の観測と小惑星リュウグウへの衝突、中でも衝突地点の位置確認を行う。そしてイジェクタの観測からは、まずイジェクタカーテンの大きさ、放出速度、ダストそのものの観測などからリュウグウのSCI衝突地点の物理構造を推定し、更にイジェクタの速度分布、クレーターの大きさ、そして衝突時の観測となるSCIのリュウグウへの入射角度等を合わせて、小惑星における衝突過程について明らかにすることが期待されている。 DCAM3の観測目的を達成するために 爆破前のSCIを検出、追跡ができること。 SCIとその着弾地点を同時に画像に入れること。 観測結果の解析によって、誤差10パーセント以内で典型的なイジェクタの放出角度を決定できること。 リュウグウへの着弾地点が岩盤であった場合、高速で放出されるイジェクタの撮影も可能であること。 撮影データを速やかにはやぶさ2へ送信すること。 はやぶさ2がDCAM3の撮影データの地上へのダウンリンクが完了するまで、全データの保存が可能であること。 の、上記6点が要求されており、これらの要求に基づいてDCAM3の仕様、はやぶさ2とのインタフェース、そしてデータ処理、保存の方法が決定され、更にはDCAM3の撮影計画が立案された。 実際のDCAM3による観測計画では、まずはやぶさ2の制御によってリュウグウ表面上にSCIの照準を合わせた上で、リュウグウ表面から約500メートル地点でSCIをはやぶさ2から切り離す。切り離し後、はやぶさ2は退避行動に移行するが、退避の途中でSCIやSCIのリュウグウ衝突観測に適した地点で、DCAM3はレンズをリュウグウに向け、はやぶさ2の進行方向と反対側に約秒速1メートルで押し出される形で分離する。その際に姿勢を安定させるため、DCAM3に光軸と回転軸が一致するような回転を加える。分離時、はやぶさ2は秒速約1メートルで退避中であるため、DCAM3はリュウグウから見てほぼ静止状態で分離されることになる。なお、DCAMから爆発前のSCIとリュウグウ上のSCI衝突地点までの距離は約1キロの計画である。 DCAM3は、はやぶさ2から分離時から撮影を開始する。DCAM3-Dは SCI撮影モード イジェクタ撮影モード 小惑星撮影モード ダスト撮影モード の、4つの撮影モードで撮影を行っていく。それぞれSCI、リュウグウ、そして衝突後のイジェクタカーテンの明るさ等についての理論的な見積もりに基づき、試験を行いながら各観測対象に最適化した撮影モードを決定したものである。まずSCI撮影モードではSCIに反射する太陽光を観測し、観測開始後、爆破までのSCIのリュウグウ表面への落下状況を観測する。イジェクタ撮影モードはSCI爆破、リュウグウ衝突後にイジェクタカーテンを観測する。イジェクタカーテンはやがてダストの密度が低下して見えなくなっていくので、その後、小惑星撮影モードでSCI衝突後のリュウグウ表面を観測する。最後のダスト撮影モードでは、DCAM3周辺のリュウグウの重力によって落下していくと考えられるダストの直接観測を試みる。DCAM3内蔵の一次電池使用可能時間は約1~2時間であり、電池切れまでダスト撮影モードを継続する予定であるが、リュウグウの重力によっては電池寿命が終わる前にDCAM3がリュウグウに衝突してしまう可能性があり、その場合、衝突時点で観測は終了する。 DCAM3-Dは2000×2000ピクセルという高解像度であるため、高頻度での撮影が続くとデータ送信が追いつかなくなる可能性がある。そこでフル解像度の撮影後には少し解像度を落とした画像を高頻度で取得し、その後フル解像度で撮影するという撮影サイクルを組み、良いタイミングでフル解像度画像が取得できるように工夫されたプログラムを組むことにした。なお、撮影頻度は最高速で1秒間に1枚を予定している。
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