電気機器の絶縁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 21:27 UTC 版)
最も重要な絶縁体は空気である。電気機器には様々な固体・液体・気体の絶縁体が使われている。小型の変圧器・発電機・電動機では、薄い重合体ワニス層で絶縁したワイヤ(いわゆる「マグネットワイヤ」)を巻線に使う。それによって狭い空間でより多く巻くことができる。太い導体を巻く場合は、ファイバーグラスの絶縁テープで補強することが多い。巻いた後でワニスを浸透させて、放電を防ぎ電磁誘導による導線の振動を低減させることもある。大型の変圧器などでは、絶縁物として紙、木、ワニス、鉱油などを使っていることが多い。これらは100年以上に渡って使われ続けているが、経済性と性能のバランスが今でも最もよい。開閉装置の母線や遮断器ではガラス強化プラスチック絶縁体が使われることもあり、耐火性と漏電を防ぐという点で優れている。 1970年代初期以前に製造された機器では、石綿を圧縮した板を使っていることがある。石綿は電源周波数に最適な絶縁体だが、取り付けや修理の際に危険な繊維が空気中に飛散するため、取り扱いには注意を要する。フェルト状の石綿で被覆した電線が1920年代ごろから高温などの悪条件の環境で使われていた。例えばゼネラル・エレクトリックが "Deltabeston" という製品名で販売していたものがある。 高電圧装置の中には、六フッ化硫黄などの絶縁ガスを高圧に満たした中で動作させるよう設計されたものもある。 電源周波数や低周波で絶縁体としてよく使われる素材でも、誘電体であるために高周波では熱を持ち絶縁性能が落ちるものがある。 電線の絶縁用被覆としては、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、カプトン、ゴム状重合体、油浸紙、テフロン、シリコーン、ETFEなどがある。より大きな電力ケーブルでは用途によっては無機絶縁銅被ケーブル(無機物のパウダーを圧縮した絶縁物を使ったケーブル)を使うこともある。 ポリ塩化ビニルのような柔軟な素材を絶縁に使う場合、600Vやそれ以下で通電中の回路に人間が直接触れるのを防ぐという目的もある。ポリ塩化ビニルは欧州連合の環境規制により経済的でなくなりつつあり、代替素材の採用が増えている。
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