過去の民営化議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:19 UTC 版)
2006年、ハローワーク関連分野では社会保険庁関連業務などと並び、市場化テストが行われた。2007年11月に「2006年市場化テスト評価委員会」から公式な結論が出され、官民対決は国の連戦連勝で最終決着した。 当時、行政改革・民間開放推進会議では八代尚宏民間議員(当時)などを中心に議論開始。ハローワークの株式会社化、独立行政法人化、公設民営化、ハローワーク職員が公務員である必要があるのかなど、経済財政諮問会議等で議論(八代尚宏が安倍内閣では経済財政諮問会議の委員に移ったため、議論場所も移動した)され、最終的には私的諮問機関で厚生労働省と外務省を蚊帳の外にし議論を行ったが、議論の内容は棚上げになりお蔵入りし未公表となった。その理由はマスコミ公表されていない。 2007年7月24日、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)は閣議後の記者会見で関連法の成立後、まず東京都内の渋谷区・墨田区内のハローワークで試験的に民間職業紹介会社の窓口を設置し、官による窓口と併置することを計画、2008年からの開始を目指し、結果次第ではさらに対象となるハローワークを拡大するとしていた。ハローワーク本体の市場化テストは八代尚宏教授など政府に近い学者が、当時の政府の各種委員会で強硬に主張していたことであるが、しかしながらこの実施形態は、当初彼らが想定してきたモデルとはだいぶ異なるものであった。先に他のハローワークで実施された民間企業を含めたテストでは質、コストの面でハローワークが優位に立ったというデータが出ている。また以前足立区で行われたリクルートとハローワークの官民共同窓口試行事業においても、リクルートが意図的に就職困難者をハローワークに誘導するといったアンフェアな手法を用いていたにも関わらず、官の方が就職率が大幅に上であったという結果が出ている。 その中で、2006年市場化テスト評価委員会(座長=佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授。前述の八代尚宏教授も評価委員会のメンバーである)は2007年11月26日、2006年度に市場化テストモデル事業として実施した求人開拓事業の実績評価を行い、民間実施地域では、開拓求人件数、開拓求人数、充足数のすべてにおいて、国の比較対象地域の結果を大きく下回った。民間実施地域では、それぞれ同地域における平成17年度の国実施時の実績を下回り、開拓求人数1人当たり、充足数1人あたりのコストは国の比較対象地域よりもはるかに高くなっている、と結論づけている。 週刊東洋経済(東洋経済新報社)07年7月14日号によれば、先に行われたハローワーク関連事業でのテストや大手民間企業とハローワークの官民共同窓口によるテストではコストなどの質・量共に官が上回ったとの結果が出ており(民間事業者が不正行為を行ったこともあったと記載されている)、官の連戦連勝である。にもかかわらず当時更なるテストを行おうとしていたことについて、「かえってテスト自体が非効率なのではないか」「税金のムダである」といった評価がされている。また、肝心の民間事業者の関心は薄く、「ハローワークが行うセーフティーネットは国として保障すべきで、官以外ありえない。民間職業紹介事業のビジネスモデルの理解が足らないのでは」「落札価格の叩きあいになるようなスキームは本末転倒」などの冷めた意見が主流であるとの指摘がある。ちなみに2004年時の三和総合研究所の推計によれば、職安におけるコストは就職1件当たり約6万円、都市部は約7〜11万円であり、この時期実施された長期失業者就職支援の一部民間委託による成功報酬は60万円だった。 近年の高失業率の状況において、ハローワークの窓口を担当している職員(公務員)に加えて、補助的業務を中心に従前から配置されていた非常勤職員たる職業相談員を緊急避難的に増員したことについて、実質的には上述の「公設民営化」されているに近い状況ではないかと、首相の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議等は主張しているが、この点について財政当局等は失業率低下に伴い、その削減を実施している。
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