過剰修正、文脈上の許容性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 17:09 UTC 版)
「Between you and I」の記事における「過剰修正、文脈上の許容性」の解説
「トラウマ」や「不安感」よりも複雑な説明が言語学者や社会言語学者によって与えられている。ヘンリー・ヒッチングはこの言い回しを、非常に特異的で階級に根差した種類の過剰修正を見なしており、「hyperurbanism」と呼んでいる。Hyperurbanismは「低俗な間違いと考えられているものを避けること、より階級が高そうな単語または発音を使用することが含まれるが、実際には結果は決してそのようなものではない」。同様の理由付けはブライアン・ガーナーによってなされており、ガーナーは「この文法的誤りは、ほぼ例外なく、洗練された感じを出そうとして少し頑張りすぎて、ひどくつまずいてしまう教養のある話し手によって犯される」と述べ、この言い回しが「ゾッとするほど一般的」であると述べた。教育を受けた人々がこの誤りを犯しやすいという意見はGrammer Girlによっても共有されている。Grammer Girlは、ジェシカ・シンプソンはしたがって(2006年の楽曲「Between You and I」について)許されうるだろう、と述べている。しかしながら、法学者のパトリシア・ウィリアムズによれば、「本物の上流階級」の人々は直ぐにこの言い回しが基準を満たさないと評価する。ウィリアムズは、こういった用法を使う者はより低い階級に属すると容易に特徴付けられる、と論評している。社会言語学者のGerard van Herkは "between you and I" や代名詞の誤りを伴う同様の言い回し(規範的文法学者によれば全て正しくないとされるもの)について社会的流動性(英語版)の文脈で議論した。 「Between you and I」の文法性を許容する最も著名な言語学者の1人がスティーヴン・ピンカーである。ピンカーはこの言い回しを「過剰修正された文法違反」と呼んでいる。ピンカーの主張は、要するに、等位構造中の個別の要素(英語版)は等位構造それ自身と同じ数を持つ必要はない、というものである: "she and Jennifer are" は2つの単数形等位要素を持つが、等位構造それ自身は複数形である。同じことが格にも適用される、とピンカーは『言語を生み出す本能(英語版)』(1994年)において主張する。ピンカーは、ウィリアム・サファイアによって批判されたビル・クリントンによる有名な言い回しを引用した: 「したがって "Al Gore and I" が目的格を必要とする目的語であるというだけで、"I" が目的格を必要とする目的語であることを意味しない。文法の理屈によれば、この代名詞は取りたい格を自由に取ってよい。」。言語学者のベン・ヤゴダ(英語版)はこの主張に感銘を受け、この言い回しの文法性に関する彼の考えをピンカー以前とピンカー以後に分けた。Peter Brodieは、文法と用法を扱ったThe English Journal(英語版)誌の特別号において、同様に納得した: 「彼はこれらの規則が上流気取り(snobbery)によって一般的に決められたものであり、単なる特定集団の言葉として考えられていることも我々に思い出させせる」。David D. Mulrovは、著書『The War Against Grammar』(2003年)の中で、ピンカーの主張は完全に説得力がある訳ではないとして、「これらは理性的な人々が意見を異にすることができる問題である」と述べた。 言語学者のジョシュア・フィッシュマンによれば、この言い回しは、いくつかの社会において、「印刷物においてさえも完全に問題ないと見做されている」のに対して、他所では「一部の文脈においてのみ」許容できるとされ、また別の場所では全く受け入られていない。Richard Redfernは、正しくない代名詞の用法と考えられているものの多くの例を挙げた。それらの多くは「前置詞 + you and I」構文に従っていない: "for he and I"、"between he and Mr. Bittman"。Redfernは、この「誤り」が広まっており(エリザベス2世さえもこの誤りを犯している)、許容できる用法となるべきである、と主張している: 「この規則は英語の母語話者に彼ら自身を表現する直感的なやり方を抑圧することを求めている」。 非等位構造において対格(斜格)が使われるであろう場所で使われる「等位主格」の扱いにおいて、『The Cambridge Grammar of the English Language(英語版)』は、使われる代名詞と等位構文中のそれらの位置に依存して、異なる水準の許容度を差別化する。結果として、「without you or I knowing anything about it」のような構文は「話し言葉ではごく一般的で、かなり幅広い範囲の話者によって使われているため、標準英語の一種として認識されなければならない」が、「they've awarded he and his brother certificates of merit」や「... return the key to you or she」のような例は文法的に正しくない過剰修正として分類される。
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