脳脊髄液減少症と鞭打ち症(頸椎捻挫)との関連性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 06:51 UTC 版)
「脳脊髄液」の記事における「脳脊髄液減少症と鞭打ち症(頸椎捻挫)との関連性」の解説
詳細は「脳脊髄液減少症」を参照 最近の研究で交通事故や転倒など鞭打ち状態になった時に引き起こされる、いわゆる鞭打ち症の原因の一つが、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)、つまり硬膜から髄液が漏れ出すことであると指摘され始めた。有効な治療法の一つとして自己の血液を硬膜の損傷箇所から注入して、その凝固で穴を塞ぐブラッドパッチ法が挙げられるが、現時点では、交通事故などによる鞭打ち状態と脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)発症の関連が詳しく解明されていないので健康保険は適用されない。また、事故の加害者側の加入している保険からもブラッドパッチに関わる治療の補償費用支払いを拒否されてきた。 ただし、2005年以降、鞭打ち症と脳脊髄液減少症の因果関係を認める動きが出てきている。ほとんどの裁判において相当因果関係は否定されているものの、相当因果関係を認められた例として、2001年8月に神戸市で発生した乗用車と自転車の衝突事故にかかわる裁判がある。この事故では、自転車に乗っていた女性が頭部外傷・打撲を負った。その後の診察で女性は脳脊髄液減少症と診断された。神戸地方検察庁は当初、乗用車の運転手を不起訴処分としたが、女性から再捜査の要請を受け2006年5月には脳脊髄液減少症が交通事故によって引き起こされたと認定、運転手を略式起訴した。そして、2008年8月時点で、東京高裁にて初めて交通事故と脳脊髄液減少症の因果関係についての判決が降り、損保側もこれを認めた。 また、2003年に追突事故に遭った堺市在住の男性の場合、2007年に髄液漏れと診断され、同年5月からブラッドパッチ療法を受けたところ、12月には症状が改善した。男性は事故の相手方に対し、2006年に大阪地裁に提訴。一審では「診断内容に疑問がある」とされ、因果関係が認められず、請求が退けられたが、2011年7月に大阪高裁は、2011年6月に厚生労働省の研究班が「外傷による髄液漏れの発症は稀ではない」と言明したことに触れた上で、保険会社や加害者側が責任否定の根拠としていた国際頭痛学会の基準が「厳し過ぎる」と批判し、髄液漏れであると認めて、被害者側逆転勝訴の判決を言い渡した。 また、新たな診断基準ができたことを受ける形で、2012年7月に横浜地裁が、事故加害者に対して損害賠償を支払うよう命じる判決を出している。 また、2002年に和歌山市内の建設現場で作業中に、落下してきたケーブルが首に当たったことで首の痛みに悩まされるようになり、脳脊髄液減少症に伴う四肢麻痺と診断された男性が、国を相手取って労災事故による発症であることを認定するよう、和歌山地裁に求めた訴訟で、同地裁は2013年4月16日に労災によるものと認定し、障害年金を支給するよう国に対し命じた。
※この「脳脊髄液減少症と鞭打ち症(頸椎捻挫)との関連性」の解説は、「脳脊髄液」の解説の一部です。
「脳脊髄液減少症と鞭打ち症(頸椎捻挫)との関連性」を含む「脳脊髄液」の記事については、「脳脊髄液」の概要を参照ください。
- 脳脊髄液減少症と鞭打ち症との関連性のページへのリンク