空港の救急自動車(感染症患者専用緊急搬送車)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 00:54 UTC 版)
「日本の救急車」の記事における「空港の救急自動車(感染症患者専用緊急搬送車)」の解説
空港の救急車は、海外から我が国に入ってくる感染症(伝染病)患者からの病原体拡散や2次感染の拡大を防止するため、患者を収容・搬送することを第一の目的としている。 危険性の高い感染症患者や疑い例は、空港検疫所などから事前に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)が定める厚労大臣指定の「特定感染症指定医療機関」、都道府県知事指定の「第1種 または 第2種感染症指定医療機関」、のいずれかの指定医療機関に受け入れ要請を行った後、緊急搬送される。 成田空港の場合、厚生労働省成田空港検疫所が担当する、感染症患者専用の救急車は、空港地下駐車場に停めてある。 検疫所内では空港併設の消防の救急車と混同を防ぐため、空港の救急車を「感染症患者専用 緊急搬送車」と呼び分けている。 空港の救急車は、2次感染防止策として3つの特徴を有する。運転手など係官は全員防護服を着用する が、前方の運転席側と後方の患者収容部は、金属製隔壁によって完全に遮断されている。 患者収容部の中では、天井のカーテンレールから床まで伸びたビニールカーテンにより、ストレッチャー周囲を区切られる。 ビニールカーテンで区切られたストレッチャー側の天井には排気口が設置され、車内でも患者側の陰圧を常時保持している。 天井の排気口から吸引された車内の汚染空気は、ウイルスを通さない特殊なフィルターで病原体を除去してから、車外に排気する。 車内隔壁の後方側(患者収容部側)の面は、ビニールカバーの付いたスチール棚が設置してあり、棚の中には ストレッチャーの上に敷く防護シーツや消毒剤、ポリ袋、予備の手袋・・・など最小限の消耗品などが入っている。 空港の救急車内では、搬送中の2次感染事故や病原体の汚染拡大を防ぐため、応急手当も含め車内での医療行為は一切行わない事、となっている。 空港の救急車や、保健所の患者搬送車によっては、「アイソレーター」という、ストレッチャーの上に寝た患者をカプセル型のカバーで覆う隔離器具 や、空気中のウイルスなどの病原体に対して殺菌効果があるとされる、オゾンの発生装置、紫外線殺菌灯などを搭載している車もある。 患者収容部は搬送により病原体で汚染されることを最初から前提としている。このため、使用後の病原体の除染を容易かつ迅速に実施するため、車内は患者モニタや酸素ボンベ、防振機能付きの架台は最初から装備されていない。 空港の救急車や保健所の患者搬送車を所有していない中・小規模の地方自治体で感染症患者が発生した場合は「アイソレーター」 を使用し搬送するか、保健所などの患者搬送車を所有する自治体や病院からの応援を待って対応することになる。 空港の救急車に搭載されている主な医療用資器材 車内での医療行為は、職員等への2次感染の危険性を増大させるため一切行わない事となっているため、搭載している医療資器材は、ストレッチャーをはじめ、感染防御用具やアイソレーターなどの隔離器具、車内の空中を浮遊・飛散する病原体に効果があると言われるオゾン発生器や紫外線殺菌灯、希釈した塩素系消毒剤などが中心となっている。
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