福島第一原発事故との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/26 17:26 UTC 版)
「チェルノブイリ事故との比較」の記事における「福島第一原発事故との比較」の解説
詳細は「en:Comparison of Fukushima and Chernobyl nuclear accidents」を参照 事故直後、原子炉が停止した時点において、炉心に蓄積されていた放射性核種の存在量(炉心インベントリー)を比較すると、ヨウ素131は、チェルノブイリ原発4号機の3200×1015Bqに比べて、福島第一原発1 - 3号機の合計の方が、6100×1015Bqと、約1.9倍上回っており、セシウム137も、福島第一原発1 - 3号機の合計の方が約2.5倍ほど多い。 代表的な核種における炉心インベントリーおよび放出割合の比較チェルノブイリ原発4号機福島第一原発(1 - 3号機の合計)放射性核種 ヨウ素131 セシウム137 ヨウ素131 セシウム137 炉心インベントリー(1015Bq) 3200 280 6100 710 放出量(1015Bq) - 1760 - 85 160 15 放出割合(%) 50-60 20-40 2.6 2.1 チェルノブイリ原発事故では、炉心インベントリーのうち、ヨウ素131は約50-60%、セシウム137は20-40%、希ガスは100%が大気中へ放出されたと推定されている。一方、福島第一原子力発電所事故によって大気中へ放出された放射性核種の炉心インベントリーに対する放出割合は、原子力安全基盤機構の支援を受けた原子力安全・保安院によるMELCORを用いた解析から、ヨウ素が1号機で約0.7%、2号機で約0.4 - 7%、3号機で約0.3 - 0.8%、セシウムが1号機で約0.3%、2号機で約0.3 - 6%、3号機で約0.2 - 0.6%と推定されている。希ガス類は、東京電力によるMAAP(Modular Accident Analysis Program)を用いた原子炉圧力容器の破損に至る解析ケースから、1号機、2号機、3号機ともに、ベント操作によりほぼ全量が放出されたと推定されている。 核種の種類ごとの炉心インベントリーからの放出割合の比較炉心インベントリーに対する放出割合(%)福島第一原発チェルノブイリ原発4号機1号機(感度解析ケース2)2号機(事業者解析ケース2)3号機(事業者解析ケース2)希ガス類 95 96 99 100 CsI(ヨウ素類) 0.66 6.7 0.3 50-60 Cs(セシウム類) 0.29 5.8 0.27 20-40 Te(テルル類) 1.1 3.0 0.24 25-60 Ba 4.0x10-3 2.6x10-2 4.3x10-2 4-6 Ru 9.0x10-8 5.4x10-8 8.6x10-8 3.5 (1.5) Ce 1.4x10-5 4.0x10-4 5.0x10-6 3.5 (1.5) La 1.2x10-5 8.4x10-5 1.3x10-5 炉心インベントリーは、ヨウ素131、セシウム137ともに、福島第一原発1 - 3号機の合計がチェルノブイリ原発4号機よりも上回っているが、放出割合はチェルノブイリ原発4号機の方が遥かに多い。そのため、実際の大気中への放出量としては、ヨウ素131、セシウム137ともに、チェルノブイリ原発事故の方が福島第一原発1 - 3号機の合計よりも多いものと見積られている。 一方、キセノン133の大気中への放出量は、チェルノブイリ原発4号機が6500×1015Bq、福島第一原発1 - 3号機の合計は11000×1015Bqと推定され、福島第一原発1 - 3号機の合計が上回っている。チェルノブイリ原発事故では、短寿命核種の放射性ヨウ素による甲状腺癌の関連が指摘されているが、同様に、短寿命核種である放射性の希ガスによる影響については、ほとんどわかっていない。セシウム137などの長寿命核種の場合は、土壌汚染によって、一部の地域で農作物などに長期にわたる被害が及んでいる。 大気中への放射性物質の放出量の比較放射性核種(元素記号)半減期主な崩壊モード放射性物質の放出量 / [1015Bq]チェルノブイリ福島第一原発6月6日公表値10月20日改訂希ガス クリプトン85(85Kr) 10.72年 β 33 キセノン133(133Xe) 5.25日 β 6500 11000 11000 揮発性元素 テルル127m(127mTe) 109.0日 β 1.1 1.1 テルル129m(129mTe) 33.6日 β 240 3.3 3.3 テルル131m(131mTe) 30.0時間 β 0.097 5 テルル132(132Te) 3.204日 β - 1150 0.76 88 ヨウ素131(131I) 8.04日 β - 1760 160 160 ヨウ素132(132I) 2.3時間 β、γ 1040 0.47 0.013 ヨウ素133(133I) 20.8時間 β、γ 910 0.68 42 ヨウ素135(135I) 6.6時間 β、γ 250 0.63 2.3 セシウム134(134Cs) 2.06年 β、γ - 47 18 18 セシウム136(136Cs) 13.1日 β 36 - - セシウム137(137Cs) 30年 β - 85 15 15 中度の揮発性元素 ストロンチウム89(89Sr) 50.5日 β、γ - 115 2.0 2.0 ストロンチウム90(90Sr) 29.12年 β - 10 0.14 0.14 ルテニウム103(103Ru) 39.3日 β、γ >168 0.0000075 0.0000075 ルテニウム106(106Ru) 368日 β >73 0.0000021 0.0000021 アンチモン127(127Sb) 3.9日 β 6.4 6.4 アンチモン129(129Sb) 4.3時間 β 0.16 0.14 バリウム140(140Ba) 12.7日 β 240 3.2 3.2 難揮発性元素 イットリウム91(91Y) 58.5日 β、γ 0.0034 0.0034 ジルコニウム95(95Zr) 64日 β 84 0.017 0.017 モリブデン99(99Mo) 2.75日 β >72 0.000000088 0.0000067 セリウム141(141Ce) 32.5日 β 84 0.018 0.018 セリウム144(144Ce) 284日 β - 50 0.011 0.011 プラセオジム143(143Pr) 13.6日 β 0.0041 0.0041 ネオジム147(147Nd) 11.0日 β 0.0016 0.0016 ネプツニウム239(239Np) 2.35日 β 400 0.076 0.076 プルトニウム238(238Pu) 87.74年 α 0.015 0.000019 0.000019 プルトニウム239(239Pu) 24065年 α 0.013 0.0000032 0.0000032 プルトニウム240(240Pu) 6537年 α 0.018 0.0000032 0.0000032 プルトニウム241(241Pu) 14.4年 β - 2.6 0.0012 0.0012 プルトニウム242(242Pu) 376000年 α - 0.00004 キュリウム242(242Cm) 162.8日 α - 0.4 0.0001 0.0001 合計 13194 11212 11347
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