熱圏と電離圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 06:20 UTC 版)
数千kmも広がる天王星の大気の最も外側の層は、熱圏/外気圏であり、温度800Kから850Kで一定している。これは、例えば土星の熱圏で観測される420Kよりもかなり高い。このような高温を維持するのに必要な熱源については未だ分かっていない。太陽の紫外線や極紫外線の放射、オーロラの活動では必要なエネルギーは得られないと考えられているが、成層圏に炭化水素が欠けていることによる弱い冷却効率がこの現象に寄与している可能性はある。水素分子に加え、熱圏には高い割合の自由水素原子が存在るが、低い高度で拡散するヘリウムは存在しないと考えられている。 熱圏と成層圏上層は多くのイオンや電子を含み、電離圏を形成している。ボイジャー2号による電波掩蔽観測により、電離圏は高度1,000kmから10,000kmの間に存在し、特に1,000kmから3,500kmの間が濃い層になっていることが示された。天王星の電離圏の電子密度は、平均で104cm-3であり、最高で105cm-3に達する。電離圏は、主に太陽の紫外線放射によって維持され、その密度は太陽変動に依存する。天王星のオーロラの活動は、木星や土星ほど活発ではなく、イオン化にはほとんど寄与しない。高い電子密度は、部分的には成層圏に炭化水素が少ないことも原因である。 電離圏や熱圏に関する情報源の1つは、地上からのプロトン化水素分子の中赤外線(3-4μm)の強い放射の観測である。合計の放射力は1-2×1011Wとなり、近赤外線の水素四極子放射よりも1桁強い。プロトン化水素分子は、電離圏の主要な冷却剤の1つとしても機能する。 天王星の大気上層は、dayglowまたはelectroglowと呼ばれる遠紫外線(90-140nm)の放射源となっており、プロトン化水素分子の赤外線放射と同様に、ほとんどが惑星の太陽側の半球から放射されている。全ての木星型惑星の電離圏で生じるこの現象は、発見当時は謎であったが、現在は太陽放射または光電効果により励起された水素原子や水素分子からの紫外線蛍光と解釈されている。
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