熱力学第二法則とは?

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熱力学第二法則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/12/24 04:36 UTC 版)

熱力学第二法則(ねつりきがくだいにほうそく、エントロピー増大の原理とも言う)は、エネルギーの移動の方向とエネルギーの質に関する法則である。またエントロピーという概念に密接に関係するものである。この法則は科学者ごとにさまざまな言葉で表現されているが、どの表現もほぼ同じことを示している。

エネルギーの移動の方向と、エネルギーの質についていえば、例えば、液体を、電気的に加熱する時など、エネルギーは一方向にしか移動しないことは自明である。電気エネルギーは冷水を暖めることはできるが、熱水自体からは電気エネルギーは生じない。つまり、電気エネルギーは質の高いエネルギーであるが、温水のエネルギーの質は低い。

目次

法則の表現

この法則には様々な表現がある。

クラウジウスの法則
低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に、他に何の変化もおこさないようにすることはできない。
トムソンの法則あるいはケルビンの法則
一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に,他に何の変化もおこさないようにするサイクルは存在しない。
オストヴァルトの原理
ただ一つの熱源から正の熱を受け取って働き続ける熱機関(第二種永久機関)は実現不可能である。
クラウジウスの不等式
n個の熱源を考え、温度Tiの熱源i(1≤in)からQiの熱を受け取り、その総和分の仕事\sum_{i=1}^n Q_iをするサイクルを作ると、\sum_{i=1}^n \frac{Q_i}{T_i}\le0である(i→∞の極限を考えると、熱源の温度をTe、受け取る熱をQとすれば\oint\frac{d'Q}{T_e}\le0)。
エントロピー増大則
断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。

これらの表現は全て同値である。まず、オストヴァルトの原理はトムソンの法則と全く同じ主張をしている。クラウジウスの法則とトムソンの法則は、それぞれの反例となるサイクルを認めると、カルノーサイクルとの合成サイクルを作ることにより互いの反例が生じてしまう。つまり対偶を示すことにより同値であることが示せる。クラウジウスの不等式はカルノーサイクルを連結し合成サイクルを作ることによって、トムソンの法則と、それより導かれるカルノーの定理を用いて示せ、またクラウジウスの不等式においてn=1としたものはトムソンの法則そのものである。熱力学では伝統的にはクラウジウスの不等式を用いてエントロピーを定義し、それが増大することが証明されるが、エントロピーを他の方法を用いて定義し、かつエントロピー増大則を原理として認めれば、他の諸原理を示すことができる。

歴史

法則の確立

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マックスウェルの悪魔と情報理論

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マクスウェルの悪魔を参照。

ボルツマン

  • 統計力学解釈

ボルツマンは、1872年H定理による熱力学第二法則の証明を発表した。しかし下記の時間の矢のパラドックスを指摘され、その証明の欠陥が指摘されることになり、結局は熱力学第二法則は「等確率の原理」と読み替えられたに過ぎなかった。

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現代における熱力学第二法則の展開

現時点で「熱力学第二法則」は、データによる検証という意味では正しいが、証明(物理の証明とは、ある法則を別の独立した物理法則から導くこと。ここではミクロな物理法則から、マクロな法則である熱力学第二法則を導くこと。)は未完成であり、統計物理学の懸案事項の一つとなっている。本法則を確立するために、「時間の矢のパラドックス」を解決し、「マックスウェルの悪魔」を否定し、かつ「統計的にエントロピーが増大すること」を証明することが必要となる。ここでは、この展開について説明する。

  • 時間の矢のパラドックス
1993年に提案された「ゆらぎ定理」を用いる、時間の矢のパラドックスの解釈が提案されている。これは、時間の矢のパラドックスの解決の一つとして挙げられている。
マクスウェルの悪魔は情報処理を行っており、「ランダウアーの原理」により、n [bit] の情報を消去するのに kln nエントロピーが増大し、熱力学第二法則に反しないと説明されている(kボルツマン定数)。なお、ランダウアーの原理の統計力学的な証明は、特殊な形状のメモリについてはJarzynski等式を用いてなされているが、一般的な場合についてはなされていない。
  • エントロピー増大の証明
現在下記の証明候補が挙げられている。
Jarzynskiの不等式による証明(要確認)
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熱力学の第二法則と創造科学

創造科学とは、キリスト教神学の一つで、神が世界を作ったことを「科学的」に証明する学問である。創造科学者は、生物進化が熱力学の第二法則に反し、したがって進化論は間違いであると主張する。第二法則は「世界は乱雑な方向へと動く」という趣旨であるので、生物が進化によって高度で調和の取れた「非乱雑な」ものへと変化していくというのは第二法則に反しているという。

しかし熱力学の第二法則は閉じた系について述べたものであり、単独の生物は閉じた系ではない。 そのためこの主張は、ありがちな熱力学第二法則への誤解と大差の無い、誤った認識に基づくものである。 またもしその取り巻く環境を含めて「閉じた系」を考えたとしても、生物は低いエントロピーの食物を摂取して高いエントロピーを排出するという機関であるため、全体としてはエントロピーを増大させることしかできず、批判は根本的に的を外しているといえる。

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