漢方、鍼灸、気功の違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/02 02:32 UTC 版)
今日、中医学と呼ばれているものには、漢方や鍼灸、それに気功などが含まれている。中医学とは、「中国の医学」という意味で、これらの源はすべて『黄帝内経』にある。後世の人たちが『黄帝内経』の中からそれぞれの領域を専門化したものが漢方や鍼灸、気功というわけである。当時、気功という言葉はなく、「導引按摩」と呼ばれていた。 『黄帝内経』は中医学の原点であり、総合医学といえるが、そこから様々な分野に分かれたことからもわかる通り、漢方、鍼灸、気功にはそれぞれの特徴と特性がある。 漢方は生薬などを患者に服用させることで、特定の臓器に行き渡らせ、他の臓器とのバランスを整え、経絡の流れを改善し、体内の気の流れを良くする。 漢方で使う薬の数はたいへん多く、日本の厚生労働省が制定している一般用漢方製剤承認基準では2012年(平成24年)8月時点で294種類あるが、中国では13,260種類、772科目に及ぶ。 漢方だけで治らない場合、直接的な方法として鍼灸がある。河北省藁城県台西村で発見された殷代(紀元前1600年から前1046年)の遺跡から石や骨で作った鍼が出土しており、鍼治療は石器時代からあったことが推測される。それがいつしか金属製の鍼でツボを刺激し、身体のバランスを整えるという技術として発展してきた。 鍼灸は生命力である気の通り道「経絡」上にある経穴(ツボ)を刺激し、気の流れを整え、臓器の調整を行い、病気の改善を行う方法である。 熱を加えたり、圧したり、刺したりといったように直接身体に触れる方法で、当時としては、いまでいう外科手術に近い療法だったのだと思われる。むろん鍼以外にも外科的な手法はあった。解剖手術も古代に行われていた。 「心」という字は、心臓を模ったものだが、解剖を経ずしてもとの象形文字の形が生まれることはなかったと考えられる。そうした人体を切開した経験の蓄積があったためか、紀元200年頃『三国志』にも登場する名医の華陀という人物が麻酔を使った手術を行っていたという記録もある。 ところが、身体を切開するような外科手術はその後、中国ではあまり発展しなかった。おそらく身体の働きのバランスを整える上で、ベストの技術ではなかったからだと思われる。なぜなら切開しなくても、より直接的に身体を治療していく手法があった。それが導引、つまり気功である。 中国では病院に気功科が設けられ、公的な医療として認められている。しかし日本では、気功によって病気が改善した症例がたくさんあるにもかかわらず、超能力のようなものとして扱われることはあっても、医療行為としての評価を受けることは少ないのが現状である。 中国では「不通則痛」といい、気のめぐりが悪くなるから病になると考えられている。 気功は通じにくくなった経絡の中の気を開通させる手段である。漢方が薬を用い、間接的に気を通じさせるなら、気功はより直接的に経絡の詰まりを取り去り、しかも自分で体内のバランスをはかれるよう調整する。
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