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鍼灸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/01/12 09:50 UTC 版)
鍼灸(しんきゅう,Acupuncture and Moxibustion)とは、身体に鍼や灸を用いた刺激を与えることで、多様な疾病への治療的な介入や健康増進を可能とする医療技術であり、日本では「医師」の他「はり師」「きゆう師」がこれを行える。発祥は戦国から後漢(B.C.5世紀~A.D.3世紀)にかけての中国である。その実態は、身体へ加えた様々な物理刺激による治療的経験則の数世紀に亘る集積であり、これを技術論として構築した技法を「鍼灸」と呼ぶ。近世まで、生薬方と共に東アジア各国の主要な医療技術として発展した。特に17-19世紀の日本において鍼灸は独自の発展を遂げ、現在世界的に活用される鍼灸技法の基盤を形成した。20世紀後半よりは欧米においても有用な医療技術として認識されて活用されるようになり、これを受ける形で、世界保健機関(WHO)は、1996年10月28日-11月1日にセルビアで”鍼に関する会議”を開催し、1999年には、鍼治療の基礎教育と安全性に関するガイドラインを提示した。[1]。
日本における鍼灸技法の独自性については後に詳述されているが、①「鍼管」の発明により、より細径の鍼の刺入を可能とし、より軽微な刺激による技法体系に再構築したことと、②江戸期に盲人が技法を担ったことで、大陸で生まれた「見て刺す」鍼灸を「触って刺す」鍼灸に進化させたことの二点に要約できる。手先の鋭敏な日本人が、多様な体表面の反応や変化を捉え、治療に使用できる反応や変化を技術論として再編成したのが日本の鍼灸である。これは、現在WHOを中心になされている鍼灸の治療点(経穴)をめぐる議論に、一つの重要な指針を示すものと言える。大陸系の鍼灸(中医学)では現在でも「経穴-ツボ-」を、古来伝わる「身体表面の特別な座標」と捉える過ちに陥っているが、これこそ「見て刺す」技術体系の限界であり、それ以上の発展性や他の医療技術との効果的なリンクは望めない。鍼灸が汎用的な医療技術として発展するためには、治療に使用できる刺鍼部位はどのような変化を起こしている点であるのかについて、理論的に整理していく事が重要である。このためには、身体表面の変化を捉えて刺鍼部位を選定する、日本の「触って刺す」鍼灸こそ、行き詰った東洋医学研究のブレークスルーとなると言われている。鍼灸に関る文献は、日本には、古代~中世にかけて輸入されたが、江戸時代に至り、高度な校勘(こうかん)技術の発展と相まって、中国を含む東アジア各国に、膨大な数の鍼灸書籍や、新たな技術論を逆輸出している。生薬法である漢方についても事情は同様であると言える。維新後の医制の洋式化では、鍼灸・漢方は医療制度上の不遇を囲ったが、民間をはじめ官界でも支持者は多く、帝大医学部においても、世界に先駆けて科学的な鍼灸・漢方研究の萌芽が見られた。このムーブメントは皇漢医学 ― つまり漢代の中国に生まれ、皇国において発達した医学 ― と呼ばれ、中国の中医学を含む現代鍼灸・生薬方のルーツとなっている。昭和に入り、皇漢医学のムーブメントは、数次の医療法規改正を成し遂げ、昭和19年には帝国議会で「鍼灸医師法」の成立を見るまでに盛り上がったが、敗戦とアメリカの占領政策に伴う医療制度改定により、鍼灸・漢方は再度壊滅状態となり、若干の復旧を経て現在に至る。 現状における一般的な見解は、多様な経験則が技術論として体系化された鍼灸技法の全貌解明には、未だ多くの検討が必要、とするものである。
- ^ WHO(世界保健機関)において鍼灸療法の適応とされた疾患
- 神経系疾患
- ◎神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
- 運動器系疾患
- 関節炎・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・腱鞘炎・◎腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
- 循環器系疾患
- 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
- 呼吸器系疾患
- 気管支炎・喘息・風邪および予防
- 消化器系疾患
- 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
- 代謝内分泌系疾患
- バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
- 生殖、泌尿器系疾患
- 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
- 婦人科系疾患
- 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
- 耳鼻咽喉科系疾患
- 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
- 眼科系疾患
- 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
- 小児科疾患
- 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
- 神経系疾患
- ^ 工藤訓正「刺絡名家」『漢方の臨床』1962年、9巻、11号、p989
- ^ 例えば、過去の通達には、療養費支給基準として「医師による適当な治療手段のないもの」としたものがある。しかし現実問題として、「現代医療で適当な治療法が無く鍼灸のみが適応する疾患」があると考える方が無理がある。そもそも、他の厚労省通達で鍼灸の適応として原則認められることになっている6疾患等(①神経痛 ②リウマチ ③頚腕症候群 ④五十肩 ⑤腰痛症 ⑥頚椎捻挫後遺症 )は、全て医師による適当な治療手段があるものである。 また、実際の療養費活用に当たってよく生じるケースとして、併給禁止の問題があるが(例えば腰痛で整形外科を受診している患者が鍼灸院に通い「腰痛」で療養費申請した場合、「療養」と「療養費」の併給として不可とされる)、どちらにしろ「併給」が問題になる時点で、前述の「医師による適当な治療手段のないもの」に対して鍼灸療養費を支給するという通達は意味を為していない。
- ^ つまり、数十年に亘る厚労省の通達をつなぎ合せて活用されている療養費は、支給基準が場当たり的で様々な場面で問題を生じており
鍼灸と同じ種類の言葉
- 中国:鍼灸医療を世界遺産申請|時事|ChinaPressChina Press
- 中国:京劇と鍼灸を無形文化遺産に申請|時事|ChinaPressChina Press
- 鍼灸と京劇がユネスコ無形文化遺産として登録される|時事|ChinaPressChina Press
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