止血の方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 07:44 UTC 版)
なお以下に示す方法の多くでは、手当てをする側が負傷者の血液に触れる場合もあるが、血液などの接触を感染経路とする疾病の危険性もあるため、処置を行う際は衛生手袋を着用するなどの感染予防の措置がとられるが、応急的には衛生的なビニール袋(レジ袋など)でも代用されうる。 高位保持 指先を切ったなど、軽度の傷なら心臓より高い位置に傷口を持っていくだけでも出血量は減少し、やがて血小板の作用で止まってしまう。他の止血法が必要な場合でも、状況が許すなら併用される止血方法。 直接圧迫 出血している箇所にガーゼなどをあてがい、その上から掌で強く圧迫して止血する方法。必要に応じて圧迫を加えたまま包帯などで巻く。 切り傷や裂傷・擦り傷に向き、滴る程度の出血であれば30分程度の圧迫で止血されるが、それまでは圧迫を緩めてはいけない。人力では疲れるため、献血ルームでは靴下留めバンドが活用されており、ネクタイなどで代用する方法もある。 献血や注射などの刺針痕でも利用される。 ある程度止血された後、場合によっては強く圧迫した上で圧迫パッド(厚く重ねた布)の上からきつめに包帯を巻く(血行が止まるほど締め付けてはいけない)ことも行われる。何かが刺さっている場合には、無理に抜かずに刺さった箇所の周囲を円状(ドーナッツの環のように)に圧迫する。 通常の負傷全般に適用でき、いわゆるリストカットなどのような場合でも必要十分な効果が得られる。一般ではこれ以外の止血方法はまず必要ではない(後述)。 首の出血は、首の負傷部位の逆の手を上げて腕とともに清潔なガーゼと包帯もしくは食品用ラップフィルムなどで巻くなどで止血を固定できる。 銃創の場合、ガーゼを傷口に押し込むくらいでないと効果がない。生理用品のタンポンは銃創にフィットするサイズなので、銃創の止血に用いられる。 間接圧迫 止血点を圧迫して止血する方法。 血液が鼓動と連動して噴出するような深い切り傷・裂傷に適用される。 止血点は動脈の出血した箇所と心臓の間にある、血液の流れを止めることが出来る点で、主に「体の内側」で、足(太股)なら内股・膝下は膝の反対側からかかとまで、腕なら腋の下から肘まで・二の腕なら掌の側にあり、頭皮の場合ではこめかみ付近など、負傷箇所に応じて所定の止血点を圧迫する。皮膚に近い浅い所にある物は押すことで、骨に近い深い所にある物は筋肉ごとひねることで圧迫できる。 鮮やかな赤い色の血が勢い良く流れる動脈出血の場合は、この方法でないと止血が難しいが、止血点の位置など専門知識が必要で、一般ではより確実な(多少なりとも効果のあがり易い)直接圧迫止血のみに留め、救急救命士など専門家に任せたほうが無難。 一般的でない方法(焼灼止血法、レーザー、電気メス、止血薬) 大昔から傷口を焼コテで焼いたりして焼灼止血法が行われ、特に手足の切断などの大怪我の場合には古代より中世辺りまで用いられてきた止血法である(フランス人医師アンブロワーズ・パレが結紮法を広めて改められた)。場合によっては煮えた油すら利用された。ただし熱量の調節が難しい上に、実質的に熱傷(やけど)で負傷箇所を広げているだけであるため、現在では一般人や救急隊員が行う応急処置としては認められておらず、医師が薬剤や電気メスなどの機器を使用して行う止血法である。家畜やペットなどに対しては獣医師でなくても一般の牧場などで行われているが、衛生的でない環境では熱傷が感染症を引き起こし易くなるため、その後の十分な治療が必要である。
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