文学性豊かな『桐一葉』とは? わかりやすく解説

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文学性豊かな『桐一葉』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/30 04:00 UTC 版)

桐一葉」の記事における「文学性豊かな『桐一葉』」の解説

逍遥の手になる台詞は、それまで歌舞伎科白違い難解な語句多用しながらも芸術性豊かな出来で、この劇の品格高めている。最も有名なのが、「長柄堤」の且元、重成の悲痛な台詞前述第6幕第1場における且元の「我が名に因む庭前の」の独白第2幕第3場淀君の長台詞である。それは 咲き乱れた山百合の、あの絵襖を 見るにつけ、 思いぞいずる 過来しかた、所も加賀白山なる、 千が池の 名産と、世に聞こえた黒百合の、 その花くらべ が原となり、北政所憎しみ受け、 はかなく滅び佐々成政。いでそのころは 自らが、 盛りの花や 春深き聚楽殿の 栄華の夢、 我ひとたび 笑むときは、布衣より出で天が下六十余州掌握ありし、あの太閤とて 何の英雄栄えときめく 諸大名も、皆みずからを 憚りの、 関とざさねど 豊臣の、世は泰平思いのほかさんぬる三年秋の風頼み思い治部少輔も、 小西と共に 木枯らしの、荒れすさびゆく 木の下かげ。 という格調高い美文調のもので、五代目中村歌右衛門十八番であった内田魯庵は『桐一葉』の発表革命的なものであったとし、 「坪内君が『桐一葉』を書いた時は、團十郎羅馬法王で、居士大宰相で、黙阿弥劇が憲法となっている大専制であったこの間立って論難攻撃したり新脚本書いたりするのは、ルーテル法王御教書を焼くと同一勇気要する。…何百年封鎖して余人近づくを許さなかったランド・オブ・カブキの関門開いた」(『中央公論逍遥号』明治44年) と評している。それまで座付狂言作者脚本しか上演されなかった(明治32年松居松翁作の『悪源太』が上演されたのを例外として)閉鎖的な歌舞伎界に、近代の風を通す大きな穴を開けたのである以降岡鬼太郎岡本綺堂小山内薫池田大伍真山青果舟橋聖一谷崎潤一郎など外部からの新作歌舞伎多く作られることになる。 なお、『桐一葉』はシェイクスピア作品一つの手本としているため、その影響随所見られる。且元の性格『ハムレット』ハムレットに、蜻蛉オフィーリア類似し銀之丞は『リア王』のリア王、その死はオフィーリア水死の場を彷彿とさせる。また淀君が珍伯を殺害する場には『ハムレット』ポローニアス宰相殺害の場の影響が、その淀君性格『マクベス』マクベス夫人のそれの影響見逃せない。しかし一方で美文調の台詞まわし浄瑠璃近松門左衛門から連綿と続く伝統歌舞伎そのもので、逍遥近松沙翁シェイクスピア)という東西戯曲家意識してこの作品仕上げたことが伺われる。

※この「文学性豊かな『桐一葉』」の解説は、「桐一葉」の解説の一部です。
「文学性豊かな『桐一葉』」を含む「桐一葉」の記事については、「桐一葉」の概要を参照ください。

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