政策の有用性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 23:58 UTC 版)
マクロ経済的な需要を安定的に推移させ、金利による物価調整を機能させるためには1-3%程度の緩やかなインフレーション目標を具体的に宣言することが必要であると推進派の学者は主張しており、多くの国の中央銀行は物価目標を設定している。その結果アメリカ、日本、中国、インド、ロシア、ドイツ、フランス、中東諸国(イスラエルを除く)、アフリカ諸国(南アフリカを除く)、東南アジア諸国(フィリピン・タイ・インドネシア・韓国を除く)、南米諸国(チリ・ブラジル)を除く有力経済圏においては、物価上昇率の制御及びデフレーションの防止に成功していると主張している。 インフレターゲットの採用により、資産価格の大幅な下落や民間投資の低迷、過大評価された為替レートといった問題は解消に向かうとされている。経済学者の岩田規久男は「市場参加者間で『中央銀行は、金融政策を中期的に目標インフレ率を達成するようにコミットする』という動学的整合成性に対する信頼が形成されれば、中央銀行がインフレ予想を発表するだけで、市場金利・株価・為替レートは適正な方向に反応する」と指摘している。 ベン・バーナンキは「インフレターゲットは物価・雇用の安定の両方に貢献する」と指摘している。 経済学者の若田部昌澄は「インフレ目標とは、政府・中央銀行それぞれが何をなすべきかについて確認し、中央銀行が実行すべき数値目標を定める契約である」「イギリス、スウェーデンなどの国々のマクロ経済政策運営の成功の背景には、インフレ目標の採用という重要な事実がある」と述べている。 エコノミストの村上尚己は「世界で物価目標制が導入されている理由は中央銀行の独立性を高める有効な仕組みだからである。この仕組みがあれば、中央銀行はインフレ率が高まりすぎる時に、金融引き締めを行うことができる」と述べている。 「インフレ目標が財政規律の喪失や財政ファイナンス(赤字の穴埋め)につながる」との見解に対しては岩田規久男は「財政ファイナンスが起こらないようにするために考案されたのが、インフレターゲットである」と指摘している。 岩田は「インフレ目標を導入している国発のバブル崩壊による金融危機は起きていない。バブル崩壊による金融危機が起きたのは、導入していない(2011年当時)日米だ」「はっきりとした目標を持たなかった日本と米国でバブル経済の生成と崩壊が起きた」と述べている。また岩田は「名目成長率を上げるためには、インフレ目標政策が効果的である」「物価目標の下限を1%、上限を3%としている国は経済成長が高い」と指摘している。 経済学者の伊藤元重は「人々からデフレマインドを払拭することは難しく、これが日本でデフレが定着している最大の理由である。インフレ・ターゲティングを導入することでデフレマインドが払拭できるのであれば、インフレ・ターゲティングという政策はその本来の機能を果たしたことになる」と指摘している。 経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは各国中央銀行の「硬直した」インフレ目標が世界的な金融危機の一因になったとの見方を示し、中銀は低インフレに集中し過ぎ金融安定と経済成長の確保を怠ったと指摘している。
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