国際社会・国債への影響
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「日本の消費税議論」の記事における「国際社会・国債への影響」の解説
2013年8月30日午前、麻生太郎財務相は閣議後会見で「消費増税をしなかった場合、日本は財政再建をする気はないと取られて、株を一斉に売り浴びせられ、国債が下がることも考えられる」と述べている。黒田東彦日本銀行総裁は「法律で一度決めたことをやめて違うことをやるとなれば、どういう影響が市場に及ぶか予測しがたいし、変更した内容を100%実行すると市場が信認するかはわからない」と述べている。 岩井克人は「重要な点は、消費増税によって財政規律に対する信頼を回復させ、長期金利を抑制することである。実際、消費増税の実施が決定的となった2013年9月には、長期金利は低下している」と指摘している。2013年10月1日、安倍首相は、首相官邸で記者会見し、2014年4月から消費税率を8%に引き上げる決定を発表している。 清家篤は「日本の財政はすでに危険領域に入っている。消費税を引き上げると景気にマイナスの影響はあるかもしれないが、仮に国債金利が上がるとそれでは済まされない。長期金利が暴騰すると単に景気が悪くなるというだけでなく、市場がクラッシュし財政が発散してしまう」と述べている。 伊藤元重は「もし日本の公的債務が将来膨れ上がっていくと考えれば、市場で日本の国債は売り浴びせられる。そうなっていないのは、政府の財政規律が働いており、日本の財政運営が破綻することはないと市場が信じているからである。財政再建で最も重要なのは、市場の信頼を損なわないことである。財政健全化に向けて努力する姿勢を持ち続けることで、市場に安心感を与えるのである。たとえば、消費税を10%に引き上げる法案だが、景気悪化を理由に消費税引き上げを先送りするようなことにでもなれば、日本の財政再建の姿勢はその信頼性を大きく損ねることになりかねない」と述べている。伊藤は「消費税の引き上げのタイミングを遅らせると、国債市場に大きな影響が及ぶ可能性が出てくる。地方の金融機関は、預貸率が低く多くの国債を購入している。経済が混乱するようだとその影響は地方に特に強く及ぶ。また、地方経済は国の財政への依存度が大きいことからも、財政の混乱の影響は地方により大きく及ぶことになる」と指摘している。 「(消費税)増税しないと投資家が日本国債を失望売りするため金利が高騰し、日本国債の暴落を招く」という議論について、高橋洋一は「小泉政権は増税しないと言って何か問題が起きたのか。増税しないと言ったが経済成長したので、どの政権よりも財政再建ができた。財政の信任は経済成長がキモで、増税ではない」と指摘している。 エコノミストの山崎元は「消費税率の引き上げを見送った場合に、格付け会社が日本国債の格付けを引き下げて国債が暴落するとの声を聞く。金融監督レベルで国債のリスクが変わらなければ、高利回りの日本国債は、金融機関・機関投資家にとっては相変わらず魅力的な運用対象であり、インフレ率から大幅に上方乖離した利回り水準は継続しないだろう。また、国内資本の格付け会社は日本国債の格付けを高く据え置くだろう。加えて、消費税率の引き上げを見送った場合、景気の拡大で税収が回復する公算が大きい。総合的に見て、国債暴落を防ぐために消費税率引き上げはやむを得ないという意見の説得力は乏しい」と指摘している。 中原伸之は「『消費増税しないと国債が暴落する』『国際公約だ』など議論が定型化・類型化されている。消費税を政治ゲームにしてはいけないし、国際公約などに拘束されることはなく、最後は国益が優先される」と指摘している。 小幡績は「『日本国債のリスクが高まるのであれば、消費税引き上げ延期は避けるべきである』というのがもっとも誠実な議論である。『海外投資家が売り浴びせるから、消費税を上げるべき』という議論は、脅しのように聞こえるから悪いのではなく、将来の投資家行動を予言できると考えている点で誤りであり、同時に政策哲学・政策立案側の戦略として『負け』の戦略である」「『投資家の失望につながる』という理由で消費増税を行なうことは、投資家の行動を恐れて政府が自分の行動を変えることであり迎合である。市場では迎合したほうが必ず負ける。そして、いったん投資家に主導権を握られれば、政府は永遠に投資家の言いなりになってしまう」と述べている。
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