司法権との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 09:16 UTC 版)
元来、司法権は政治的作用ではなく法律の維持・擁護を目的とする法的作用であり、政治闘争の圏外にあって特別の地位が認められてきた。裁判の公正は個人的尊厳と自由の確保にとって不可欠であり、他権力からの干渉や圧力を排除するための司法権の独立が特に重視され、今日では諸国の憲法において一般的に採用されている原理である。その一方で、今日では司法権による行政事件の裁判権や法律の違憲審査権などが重要な役割を果たしており、現代的変容を遂げている。 立法府・行政府から司法府への抑制手段の例としては、裁判官の指名・任命権や司法制度に関する立法権、弾劾裁判などがある。 裁判官の指名・任命権 スイスのように議会による選任による場合には立法府から司法府への抑制となり、アメリカのように大統領による任命と上院による同意が定められている場合には、行政府による抑制と立法府による抑制とが重複することとなる。 司法制度に関する立法権 議会による裁判所の組織・権限、訴訟手続に関する立法は、立法府から司法府への抑制となる。しかし、英米法では裁判所自身に規則制定権を認める制度が発達してきた。日本国憲法第77条1項でも、司法権の独立の観点から最高裁判所に訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について規則を定める権限を認めている。最高裁判所規則と法律の形式的効力については規則が優位するとみる説もあるが、多数説は法律が優位するとみている。 弾劾裁判 日本国憲法下においては、国会に裁判官の弾劾の権限を認める一方(日本国憲法第64条・日本国憲法第78条前段)、司法権の独立の観点から行政機関による裁判官の懲戒処分を禁じる(日本国憲法第78条後段)。 司法府から行政府への抑制手段の例としては行政訴訟権、司法府から立法府への抑制手段の例としては違憲審査制がある。 行政訴訟権 司法府から行政府への抑制手段としては行政訴訟権がある。但し英米法系と大陸法系とでは、行政権に対する司法権の関わり方に大きな違いがある。英米法系の諸国では行政裁判所制度をとらず、行政事件も通常の裁判所が審理する。イギリス・アメリカのほか、アメリカ法の影響を強く受けた日本国憲法下の日本も、行政裁判所の設置を認めない。大陸法系の諸国では、行政権の司法権からの独立が強調され、行政裁判所制度を持つ。行政裁判所は行政事件を専門に審理する行政部内の特別裁判所で、通常の裁判所の系統から独立した機関である。大陸法系の国であるフランスやドイツで採用されている。大日本帝国憲法の下では日本でも行政裁判所が置かれた。 違憲審査制 司法府から立法府への抑制手段としては違憲審査制がある。
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