他宗教の影響
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ハディース検証学では、異国由来と想定される物語は「イスラエリヤート(Israʼiliyyat)」として知られている。この呼称は、ユダヤ教・イスラエルの源流から発展した伝承であることを示すが、キリスト教やゾロアスター教などのその他の宗教から生まれたものも存在する。近代以前の学者の中には、これらの物語を熱心に釈義に用いた者もいれば、非難した者もいた。現代では、それらはイスラム教に反するものとして批判されている。 ラシード・リダーの友人であり弟子でもあったMahmud Abu Rayya(1970没)は、1958年に出版した著書『ムハンマド教のスンナに照らしつける光』(Adwa` `ala al-Sunnat al-Muhammadiyya)という書籍の中で、「真正と思われるハディースの多くは、実際にはムハンマドに帰されたユダヤ教の伝承である」と断定している。 ハディースとユダヤ教の影響の関係を指摘した、西洋における最も初期の学者は、フランスの東洋学者バルテルミー・デルブロ(1695没)であり、彼は「真正六書のほとんど」(すなわち「六大真正ハディース大全」)、「またハディース文学の多くの部分がタルムードから流用されている」と主張した。タルムードは、ムハンマド誕生の少なくとも1世紀前(西暦2世紀から5世紀の間)にエルサレムで記録され、その後は(現在の)イラクでも記録されている。その後、アロイス・シュプレンガー(1893没)、ゴルトツィーエル・イグナーツ(1921没)などの多くの東洋学者がこの方向性で批判を続けた。 より精緻な研究成果としては、W.R.Taylorによる「Al-Bukhārī and the Aggadah」がある。TaylorはSahih al-Bukhariからのいくつかのハディースを「タルムードおよびミドラーシュから派生したアッガーダーのテキスト」と比較し、「ハディースはタルムードとミドラーシュから流用されたものである」と結論づけた。テイラーは、大量のユダヤ人の「口伝情報、報告、物語、民俗情報」が、「タルムードやミシュナーの転写の際に、アラビア半島に住むユダヤ人や教父、キリスト教圏を経由して、ハディースが形成された後に、イスラム文学全般、特にハディース文学に入ってきた 」と主張した。他の学者は、ハディースに異なる宗教的影響を見出している。Franz Buhlはハディースをよりイラン・ゾロアスター教的な背景と結びつけ、デイヴィッド・サミュエル・マーゴリュースは聖書外典のアポクリファと結びつけた他、アルフレッド・ギヨームは一般的なキリスト教による影響を強調している。
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