人工衛星の地球診断
私たちの生活を側面からサポートする地球観測衛星のデータ
地球観測衛星は、地球上の資源の探査、環境・公害などの監視、海洋現象の観測などをおこない、私たちの生活を側面からサポートしています。ここでは、1996年8月に打ち上げられ、約1年にわたって運用された宇宙開発事業団(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))の地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」(ADEOS)のデータをもとに、地球観測データの取得・解析について見てみます。
「みどり」は、地球環境の微妙な変化をとらえる8種類のセンサを搭載
「みどり」は、地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、異常気象といった環境問題に対応した全地球規模の観測データの取得を目的として打ち上げられました。その本体には、環境の微妙な変化をとらえる8種類のセンサが搭載され、それぞれが画像データをたえまなく地上に送っていました。
衛星直下の幅約80kmの範囲を観測するAVNIRと海水や海温のデータを取得するOCTS
その核となったのは、宇宙開発事業団(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))が開発した高性能可視近赤外線放射計(AVNIR)と海色海温走査放射計(OCTS)です。前者のAVNIRは、地上から反射する太陽光を観測する高分解能の光学センサで、衛星直下の幅約80kmの範囲を細かく分割して観測します。また、OCTSは、海洋の水色や水温データを反復して取得し、クロロフィル濃度や浮遊物、水温などを把握することを目的とした光学センサです。
オゾン層分布やエルニーニョ現象の解明にも十分に役立つ
このほかには、いま大きな問題となっているオゾンの分布量などを観測するNASA散乱計(NSCAT)などが搭載されています。このNSCATは、NASAのジェット推進研究所(JPL)が開発したセンサで、2日ごとに、氷に覆われていない全海域の90%の風速と風向きを天候に左右されることなく観測することができます。これにより作成された地球全体の気象モデルを利用すれば、エルニーニョのような現象の解明にも役立つと期待されていました。
今後も、大気や海を観測する「みどりII」(ADEOS-II)や陸域観測の「だいち」(ALOS)など、後継衛星を計画
残念ながら「みどり」(ADEOS)は、1997年7月に太陽電池パネルの破断により運用を停止しましたが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は後継衛星として「みどり」(ADEOS-II)や「だいち」(ALOS)による地球観測を予定しており、「みどり」の教訓を生かして観測活動を続けていく計画となっています。2002年に打ち上げられた「みどりII」(ADEOS-II)は、世界各地での異常気象の多発、オゾンホールの拡大等、地球スケールでの環境変化の実態把握、原因究明のために、様々な地球の表情を宇宙からとらえています。高精度な観測データが各国の研究者に提供されることで、世界的な気候変動研究への貢献が期待されています。
これに対して、2006年に打ち上げられた「だいち」(ALOS)は、高解像度のパンクロマチック立体視センサーを搭載し、陸地を対象に地球環境の変化を詳しく観測しています。いずれも、世界でも有数の高性能センサをもち、日本国内だけでなく、世界に向けて貴重なデータを提供するものと期待されています。
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