予備実験、基礎検討及びその解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 04:44 UTC 版)
「科学的方法」の記事における「予備実験、基礎検討及びその解析」の解説
予備実験、基礎検討とはリサーチクエスチョンの抽出や仮説、モデルの構築、オーダーエスティメーション、実験の問題点などの評価切り分け、最適条件の探索のために行う実験、検討のことである。 「実験の計画」の項目で述べたように、実際の研究では、学生実験とは違い、「初めから予想通りの結果になる」、あるいは「初めから予想を明確に反証する結果が得られる」ことは極めて稀である。実際には、最初に予想した内容を反証しているとも立証しているとも言い難い微妙な結果しか得られない。 そのため、大体の場合、研究は大雑把な仮説とその根拠になるプレリミナリーなデータを積み木のように組み立てていくことで進行する。つまり、「実験の大まかな傾向を見るための実験(予備実験)を行いながら、当初考案したモデルも修正しながら、さらにそのモデルの成否をよく判定する条件を探りながら再度予備実験を行い」というサイクルを実行する。つまり、上記の(1)-(4)の間のプロセスを長い期間往来する。このプロセスにより、価値ある研究課題と最適な実験条件が見つかり、実験手技も高まって安定していく。 予備実験の良し悪しは、その実験家のセンスそのものだという学者もいる。通常、どの研究者も、まずは初歩的な阻害要因(グランドループによる発振や電源ノイズ、振動、極端なコンタミネーション、手技の不足)をあたって、それらがドミナントでない場合には誰でもこのレベルの問題は解決できる。また、条件を振って問題の切り分けを試み、何らかの操作を行い、その応答から押さえるべきポイントを論理的に把握ることを試みる。また、複数の実験データをみながら即座にいろいろなモデルを立て、そのモデルを考慮しながら随時、実験条件の最適化を図っていくこと。しかし、最終的に整合のとれたモデルとデータの組に到達できる人は少数である。そのような者は、どうしようもないときにも「この山はハズレ」との結論に到達するまでの時間が短くさらにその決断は正しい(どのような要因が邪魔なのかをそれなりには正確に把握している)。予備実験の段階で注意すべきことを箇条書きにすると、以下のようになる。 予備実験のデータを桁違いに変化させる要因 傾向を大幅に変える要因(発振が止まる等) 変化させられるパラメータ 個々のパラメータそれぞれを独立に動かした時に測定される個々の測定値のそれぞれ変化の傾向 そのオーダー それに当てはまる実験式、定性的なモデルなど 実験の勝負は、「先行研究のリサーチ」、「予備実験」の段階で大半が決まり、これに従い、「リサーチクエスチョンの抽出」、「仮説の構築」、「最適な実験条件」が機械的に決まり、実証実験に至っては、もはやルーチンワークでしかない。このことから、研究者の成長にとって、実験の大半を予備実験や基礎検討に費やすことが遠回りなようで、実はこれが実験の成功への近道であるばかりか、若い研究者の研究能力の大きな基盤財産になると考えられている。
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