中国・モンゴル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 09:30 UTC 版)
中国では気象局の定める定義で、砂粒や土ぼこりが空中を漂って空の色が濁り視程が低下している天気を「砂塵天気」とし、そのうち視程10キロ未満は「揚砂」、視程1キロ未満は「砂塵暴」と呼ぶ。砂塵暴は洪水・暴風といった他の気象災害と同様に3段階の警報が定められており市民に周知される。 砂塵天気(沙尘天气)の分類名称基準備考日本語中国語簡体字/英語浮塵浮尘/suspended dust 風力3未満(5.4m/s未満)、かつ視程10キロ未満 揚砂扬沙/blowing sand 視程1キロ以上10キロ未満 砂塵暴沙尘暴/sand and dust storm 視程1キロ未満 強砂塵暴强沙尘暴/severe sand and dust storm 視程500メートル未満 目安として、風力8 - 9程度(約17 - 24m/s) 特強砂塵暴特强沙尘暴/extremely severe sand and dust storm 視程50メートル未満 目安として、風力10以上(約25m/s以上) 砂塵暴気象警報 (沙尘暴天气预警信号)の分類名称基準日本語中国語簡体字 砂塵暴黄色警報沙尘暴黄色预警信号 今後12時間以内に、砂塵暴が発生する、あるいは継続すると予想される 砂塵暴橙色警報沙尘暴橙色预警信号 今後6時間以内に、強砂塵暴が発生する、あるいは継続すると予想される 砂塵暴赤色警報沙尘暴红色预警信号 今後6時間以内に、特強砂塵暴が発生する、あるいは継続すると予想される 東部でよく観測され、都市部では、最近の経済発展によるスモッグ(煙霧)との相乗効果で、視程がかなり悪くなることがある。北京や天津などは発生地とされる砂漠に近く、近年はたびたび大規模な黄砂に襲われている。 発生地から比較的離れた地域でも、黄砂による被害をたびたび受けている。2007年4月2日には、上海で623µg/m3(マイクログラム毎立方メートル)と過去最大の量の黄砂を観測し、大気汚染指数が500と過去最悪の数値を観測した。大気汚染指数(API)は二酸化硫黄とPM10の濃度を基準にした中国独自の指標である。0 - 500の数値で表され、300以上が「重度」とされている。華北や東北地方では日常的に指数が100前後と高く、これまでに500を記録したことはあったが、上海で「重度」となったのは初めてのことだった。南方の台湾でも最高500µg/m3程度の黄砂が春を中心に観測される。 ただ、発生地周辺の中国内陸部やモンゴルでは、単なる黄砂の降下よりも砂塵嵐による被害の方が大きい。農作物に砂が積もることによる不作のほか、住居に砂が侵入したり、視界不良による事故などで死者が出ることもある。 強砂塵暴には「黒風」(簡体字: 黑风)、特強砂塵暴には「黒風暴」(簡体字: 黑风暴)の俗称がある。 これまででもっとも大きな被害は、1993年5月5日に中国北西部(寧夏回族自治区、内モンゴル自治区アルシャー盟、甘粛省)で発生した黒風暴によるものである。死者・行方不明者112人、負傷者386人、家畜・牛馬の死亡・行方不明約48万3,000頭、4,600本の電柱が倒壊、被害を受けた耕地21万 ha、森林被害18万ha、経済損失66億円のほか、多くの道路や鉄道が埋没するという甚大な被害を出した。死者の多くは学校から帰宅途中の子どもであった。この時、甘粛省で22.9mg/m3(22,900μg/m3)という記録的な黄砂の濃度を観測している。 中国の森林管理局によれば、黄砂の影響を受けている中国人は約4億人で、直接的な被害だけでも540億元(約840億円)に及ぶという。また別の推定では、1990年代の黄砂に伴う経済損失は年間15億元(Yang および Lu, 2001年)だとされている。
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