ニホンザルにおける先行研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/12 00:03 UTC 版)
「文化 (動物)」の記事における「ニホンザルにおける先行研究」の解説
川村は「箕面のニホンザルのドングリのアク抜き」「高崎山のキャラメル食の伝播」などを発見していたその同時期に芋洗いを発見した。 宮崎県幸島のニホンザルの群れで観察された芋洗い行動は、餌付けした群の観察から発見されたもので、海岸の砂地に餌としてまかれたサツマイモを、1頭の若い雌ザルがすぐ食べるのではなく、近くの小さな河口の水中で転がして、汚れを落としてから食べるようになった。次第にその周辺の複数の若い個体もそれを行うようになり、その後の個体は、海水で洗い、どうやら味付けをするらしく、一口ごとに海水に浸す個体も出現した。つまり、1頭が発見した行動が、その個体を見習う形で、他の個体に伝播した。その後、この群れでは、砂地に撒かれた麦を砂ごと海水にほうり込んで砂と選別する行動なども観察され、それも一定の伝播が見られた。ただし追試の結果、フサオオマキザルやカニクイザルは砂のついた芋を与えられると、芋洗いを模倣に依存せずに個体学習することが判明したために、幸島のサルたちが本当に芋洗い文化を発明したのか不明瞭である。しかしニホンザルの毛づくろいが、母子間のみで毛づくろいが行われている低順位家系だとサルジラミの処理技術が一致し、非血縁個体にも毛づくろいをうける高順位の家系の処理技術が不一致であることから、社会関係が行動伝播に影響を及ぼすことが示唆されている。 この例は、動物に文化が存在する可能性を示唆する点で大きな効果があった。それによって、より地味な文化的行動の存在も見直された。たとえば、屋久島産の猿が多数集められた時に見いだされたそうであるが、鶏卵を与えた場合に、食べる個体と食べない個体があり、また、食べるにしても上手な個体と下手な個体があり、しかもそれが捕獲された個体の属する群れによって異なっていたということである。また、季節季節に野外で採る餌のメニューについても、群れごとの伝承があるのではないかとの示唆される。
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