セルマでの戦い
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翌4月2日早朝、フォレストはセルマに到着したが、その様子は「馬も乗り手も血に染まっていた」と言われている。フォレストは守備隊指揮官のリチャード・テイラー将軍にセルマ市から出て行くよう忠告した。テイラーは守備部隊の指揮をフォレストに渡した後に出て行った。セルマの町は半円状に取り巻く長さ3マイル (5 km) の城壁に守られていた。北と南の外れはアラバマ川で止まっていた。この防御工作物は2年前に造られ、その後はほとんど手を入れていなかったが、それでも頑強なものだった。壁の高さは8フィート (2.4 m) から12フィート (3.6 m)、底部の厚さは15フィート (4.5 m) あり、幅4フィート (1.2 m)、深さ5フィート (1.5 m) の濠が前面にあった。その前には高さ5フィート (1.5 m) の柱を地面に打ち込んだ柵があり、その先端は尖っていた。壁から突き出た位置には土盛りの上に大砲が置かれ、攻撃が行われた場合の地面を狙えるようになっていた。 フォレストの守備隊は、自分のテネシー護衛中隊、ヘンリー・マッカローのミズーリ連隊、エドワード・クロスランドのケンタッキー旅団、フィリップ・デール・ロディのアラバマ旅団、フランク・アームストロングのミシシッピ旅団、ポイント・クーピー砲兵隊、ダニエル・W・アダムズ将軍の州予備隊で構成されていた。これに砦守備を「志願」したセルマ市民が加わった。これら全てを合わせても4,000名足らずであり、やっとその半分が軍人だった。セルマの要塞は2万名で守るように建造されていた。フォレストの部下は胸壁の上に互いに10ないし12フィート (3 - 3.6 m) 離れて立つしか無かった。 ウィルソンの部隊は午後2時にセルマ要塞の前に到着した。ウィルソンはイーライ・ロング准将の師団をサマーフィールド道路の向こうに配置し、シカゴ・ボード・オブ・トレード・バッテリーを支援に置いた。エモリー・アプトン少将の師団はレンジライン道路の向こうに配し、アメリカ第4砲兵隊第1大隊に支援させた。ウィルソンの部隊は装備も良く、訓練を積まれた9,000名が攻撃に使えた。北軍の作戦は、暗くなった後でアプトンが300名を派遣して南軍右翼の湿地を渡り、胸壁内に入り、側面攻撃から胸壁の線にそって中央に側面攻撃するというものだった。アプトン隊の大砲からの発砲で、北軍全軍による攻撃開始の合図になる予定だった。しかし、午後5時、イーライ・ロングの後方にあった輜重隊が、フォレストの分散させていた部隊でセルマに向かっていた前衛部隊に攻撃された。ロングもアプトンもその後衛にはその様な動きに備えてかなりの人員を配置していた。しかしロングは後方からの敵の攻撃を無効化するために、セルマ要塞への攻撃開始を決断した。 ロングの部隊は3つの戦列を1列になって攻撃した。馬を下り、7連発スペンサー・カービン銃を発砲し、自部隊の大砲に支えられた。南軍は小火器と大砲で激しく反撃した。南軍の砲兵は手元に中実の砲弾しか無かったが、すぐ近くの武器庫では対人用弾丸として効果的な弾筒を数多く製造していた。北軍はロング将軍自身を含め多くの損失を出したが、攻撃を続けた。北軍兵が胸壁に達すると凶暴な白兵戦になった。両軍の多くの兵士が棍棒がわりに使われたマスケット銃で殴り落とされたが、北軍兵が胸壁の中になだれ込み続けた。守備兵が圧倒的に少なく、30分足らずの間にロング隊はサマーフィールド道路を守っていた胸壁を占領した。 一方、アプトン将軍はロング隊の成功を見て、その師団に前進を命令した。防御部隊を圧倒し、間もなくアメリカ国旗がレンジライン道路からサマーフィールド道路へ続く胸壁の上で振られているのが見られた。一旦外壁が落ちた後、ウィルソン将軍自身がアメリカ第4騎兵連隊を率いて、レンジライン道路を馬で突撃し、まだ未完成だった内側の壁に向かった。後退していた南軍兵が内壁に達したところで鼓舞され、突撃してくる部隊に破壊的な一斉射撃を浴びせた。これで突撃が止まり、ウィルソンのお気に入りの馬が負傷して、ウィルソンは地面に投げ出された。ウィルソンは直ぐに傷ついた馬に再度跨り、数個連隊による下馬しての攻撃を命じた。南軍の混成部隊がセルマの鉄道駅と、隣接する線路床に陣取って、プランターズビル道路(現在のブロード通り)の側で抵抗しようとしていた。ここでの戦闘は激しいものになったが、午後7時までに勢力に勝る北軍が南軍の側面を衝くことができた。南軍はこの駅と内壁を放棄した。
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