Static Random Access Memory
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/30 15:13 UTC 版)
用途・用例
DRAMと比べて下記の特徴と用途が見られる。
- 内部構造が複雑であるため、DRAMほど高密度に実装できず、大容量メモリには向かないため、記憶容量あたりの単価が高く、比較的データ量の少ない用途によく用いられる。パーソナルコンピュータの主記憶装置のような低コストが要求される用途には使われていない。
- 高速な情報の出し入れが可能な点を生かしてキャッシュメモリに用いられる。
クロック周波数と消費電力
SRAMの電力消費は、どの程度頻繁にアクセスされるかに依存する。頻繁にアクセスされる用途ではDRAMと同程度に電力を消費し、一部のICは最大帯域幅で使用すると何ワットも消費する。一方でアクセス頻度が小さい場合、例えばやや低いクロック周波数で駆動したマイクロプロセッサで利用する場合などは極めて消費電力が低くなり、アクセスがないアイドル状態ではほとんど無視できる程度の電力消費(数マイクロワット)となる[注 1]。
そのため、電池交換中程度の短時間の電源喪失であれば比較的大容量のキャパシタで駆動できる。
また、保存性のよい小さな電池を内蔵あるいは外部に配置することで不揮発メモリ(NVRAM, コンピュータの時計やBIOS設定情報の保持など)のようにも利用できる(バッテリーバックアップ機能)。フラッシュメモリが一般化する以前には、ゲーム機などのカートリッジ内のセーブデータ用に多用された。
SRAMには主に次のようなものがある。
- 汎用製品
- 「非同期」インタフェース。28ピンの32k×8ビットのチップ(XXC256 などの名称)や類似の製品。最大16Mビットのチップまである。
- 「同期」インタフェース。キャッシュメモリなどバースト転送を要求される用途で使用される。最大18Mビット(256k×72ビット)のチップまである。
- チップ上への統合
- RAMまたはキャッシュとしてマイクロコントローラに搭載(通常、32バイトから128KBの容量)
- 一次キャッシュとしてx86ファミリーや他の高性能マイクロプロセッサに搭載(8KBから数MB)
- マイクロプロセッサなどのレジスタの実装に使われている。レジスタファイルを参照。
- 特殊なICやASICに搭載(一般に数KBのオーダー)
- FPGAやCPLDなどのプログラマブルロジックデバイス
プログラマブルロジックデバイスへの応用は、SRAMの高速動作を利用したものであり、記憶セルの状態によってマトリクス状の配線を接続・切断することにより、ゲートアレイとして機能させる。プログラマブルロジックデバイスの一種であるFPGAは、配線だけでなく論理セルの構造もSRAMによるLUT(ルックアップテーブル)で構成されているものもある。
組み込み用途
産業システム、科学技術システム、自動車の車載エレクトロニクスなどによく遣われている。最近の電子機器や電子玩具には、ある程度の量(数KBかそれ以下)のSRAMがほとんど必ず搭載されている。デジタルカメラや携帯電話、シンセサイザーなどの複雑な製品には数MBのSRAMが搭載されている。
デュアルポート型のSRAMは、リアルタイム方式のデジタル信号処理回路に使われることもある[要出典]。
コンピュータにおける用途
SRAMは、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、ルーター、その他周辺機器にも使われている。CPU内蔵のキャッシュメモリ、外付けのバーストモードのSRAMキャッシュ、ハードディスクドライブのバッファ、ルーターのバッファなどである。液晶ディスプレイやプリンターも表示(印刷)する画像を保持するのにSRAMを使っていることが多い。CD-ROMドライブやCD-RWドライブでも256KB程度のバッファをSRAMで構成しており、ブロック単位でデータをバッファリングするのに使っている。同様にケーブルモデムなどの機器もSRAMをバッファとして使っている[要出典]。
趣味
インタフェースが単純ということで趣味でデジタル回路を作る際にはSRAMが好まれることが多い。DRAMに比べてリフレッシュサイクルがなく、アドレスバスとデータバスを多重化せずに直接アクセスでき、回路設計が単純である。バスや電源供給以外にSRAMが必要とする制御は Chip Enable (CE)、Write Enable (WE)、Output Enable (OE) の3種類だけである。同期SRAMでは Clock (CLK) も必要となる[要出典]。
注釈
- ^ そのような動作モードを設計としてハードウェア的に持っている製品もある。
出典
- ^ Sergei Skorobogatov (June 2002). Low temperature data remanence in static RAM. University of Cambridge, Computer Laboratory 2008年2月27日閲覧。.
- ^ A 160 mV Robust Schmitt Trigger Based Subthreshold SRAM
- ^ United States Patent 6975532: Quasi-static random access memory
- ^ United States Patent 6975531: 6F2 3-transistor DRAM gain cell
- ^ 3T-iRAM(r) Technology
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