MiG-29M (航空機) MiG-29OVT

MiG-29M (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/11 09:31 UTC 版)

MiG-29OVT

MiG-29OVTは、MiG-29M«9.15»の機体に、新型の推力偏向ノズル付きエンジンや各種電子装備などを装着した試験機である[15]

後部から見たMiG-29OVT。エンジンの推力偏向ノズルの駆動装置は、エンジンノズルの上部と、左右斜めの三か所にある。

装備された部品は以下の通り[15]

  • エンジンを推力偏向機能付きのRD-33OVT(RD-133)に変更。本エンジンのノズルは、ピッチ軸とヨー軸で±15度ずつ偏向可能となっているほか、新型のFADECを装備している。また、推力をミリタリー推力で5,600kgf、アフターバーナー使用時最大推力で8,900kgfにパワーアップしている。
  • 新型のデジタル式フライ・バイ・ワイヤ制御装置を搭載。
  • レーダーをN010ジュークから、N011Mバルス-29に換装。

本機はMiG-29M«9.15»の試作機のうち、「白の156号機」を改修して制作された。2003年に初飛行し、2005年8月に開催されたMAKS-2005で初めて公開飛行が行われた[15]

MiG-29SMT/UBT

1997年11月27日には9.12規格の機体にMiG-29M «9.15»で培った技術を用いて改良を行ったMiG-29SMT «9.17»1998年8月24日には複座型のMiG-29UBT «9.52»が初飛行した。MiG-29SMTはMiG-29M «9.15»と比べて改良部分が少なく、既存のMiG-29からの改修も可能[注 3]で、低価格のため、正式採用された[16]。ロシアは保有するMiG-29 150機をSMT仕様に改修する予定であるほか、2009年にアルジェリアに受領を拒否され返品された15機を受領している。また、2016年までに16機を新規調達する[17]。なお、この機体は既存機からの改修機ではなく、新規生産機であり[18]、MiG-29SMT(R)と呼ばれる[19]

ロシアのほかではインドが69機をSMT規格に準じたUPG仕様にアップグレードしているが、この仕様ではロシア以外のアビオニクスが数多く採用されている[20]。MiGではこれらの以外の国のMiG-29ユーザーに対してこの規格への改修プランを提案している。
以下のモデルがある。

MiG-29SMT «9.17»
MiG-29UBT «9.53»
垂直尾翼前縁付け根に、単座型の9.12/9.13規格やMiG-29SMTと同型のチャフ/フレア・ディスペンサーが追加装備されている(従来型のMiG-29UBには無い)のに注目。
MiG-29SMT «9.19»
ドーサルスパインの角度が途中で大きく変わっているのに注目。
インド空軍のMiG-29UPG «9.20»
MiG-29SMT «9.17»/MiG-29UBT «9.52»
最初のモデル。改修項目は以下の通り。3機の試作機が作られたが正式採用には至らなかった[21]
  • レーダーをN019MPに換装。
  • マレーシア空軍のMiG-29Nと同型の折り畳み式空中給油装置の追加[21]
  • 背部のドーサルスパインを大型化してコンフォーマル式に1,400Lと480Lの燃料タンクを追加。なお、背部の燃料タンクはメンテナンスなどの際取り外しが可能である。この際に、テイルコーンやエアブレーキをMiG-29Mと同型に改修される。
  • エンジンを推力や寿命、信頼性が向上したRD-33シリーズ3(アフターバーナー推力81.4 kN)に換装。
  • 主脚を車輪の大きさが840 X 290mmのKT-150に換装。
  • MIL-STD-1553Bデジタルデータバスの採用。
  • GPS/GLONASSに対応したA737航法システムの搭載。
  • レーダー警報受信機をSPO-29"パステル"に換装。
  • カラット-B自己診断装置の追加。
  • 2基のMFI-68カラー液晶MFD(152×203mm)を搭載しグラスコックピット化。サイドコンソールにも小型のモノクロMFD(96×77mm)が搭載される。
  • HOTAS概念の導入。
  • ヘッドアップディスプレイの換装。
  • ペイロードを4,500kgに増加。
  • Kh-25ML、Kh-29T/L、Kh-31A/P、KAB-500などの空対地、空対艦兵装の運用能力付加。
  • 運用寿命を2,500飛行時間から4,000飛行時間に延長。
この他、オサ-2パッシブフェーズドアレイレーダーを搭載したUBTのデモ機が1機(S/N 052)作られ1999年のMAKSで展示された[22][23]
MiG-29SMT «9.17A»(MiG-29SMT-II)
9.17のアビオニクスを近代化したもの。単座の9.17規格の機体を改修したデモ機を1機製作する予定であったが、予算不足により中止された。そのため実機はない。改修項目は以下の通り[24]
  • レーダーをN010MP ジュークMに換装。
  • ラメンスコエ設計局製のアビオニクスの装備。これに伴いコックピットのMFDはMFI-10-7に変更され、サイドコンソールの小型モノクロMFDは廃止された。
MiG-29SMT «9.18»/MiG-29UBT «9.53»
9.17A規格をベースとしてさらに改良したモデル。イエメンが導入したのがこのモデルである。改修項目は以下の通り[25]
  • レーダーをN010M ジュークMに換装。
  • IRSTをOEPS-29SMに換装。
  • SAU-451-05SMT自動飛行制御装置の搭載。
  • 9.17規格で装備された背部の燃料タンクの廃止。
MiG-29SMT «9.19»
9.18規格をさらに改良したモデル。アルジェリアが一時導入を決めた(のちに取消し)、ほかロシア空軍も採用を決めた。複座型はなく、9.53規格が用いられる。改修項目は以下の通り[26]
  • 9.17規格で装備された背部の燃料タンクを前部(1,400L)のみ装備。
  • アビオニクスを改善[26]
MiG-29UPG «9.20»/MiG-29UPG-UB «9.53I»
インド向けでSMT規格をベースに大幅に改良を加えたモデル。単座は9.19規格に、複座は9.53規格に基づいている[27][28]。一部にはフランスイスラエル製機材も導入されている[20]。2010年2月4日初飛行[29]。改修項目は以下の通り。
  • 武器制御システムの更新[29]
  • IRSTをOLS-UEMに換装[29]
  • KS-129機上酸素発生装置の導入[8]
  • 右垂直尾翼にラファエル社製のRWRを追加。
  • バーラト・エレクトロニクス英語版製のチャフ/フレアディスペンサを翼下に追加[29]
  • 慣性航法装置としてSAGEM製のものを搭載[29]
  • Topowl-I HMD(タレス社製のものをライセンス生産したもの)への対応。

型式

MiG-29K «9.41»
MiG-29OVT
MiG-35D

«»は製品番号。

MiG-29M «9.15»

1987年に初飛行した改良型。量産されず。

MiG-29ME(MiG-33)
9.15規格の輸出型であったが、生産されず。
MiG-29K «9.31»
1988年に初飛行した9.15規格の艦上戦闘攻撃機型。選定でSu-27Kに敗れ開発中止。NATOではフルクラムD(Fulcrum-D)と呼んで識別した。
MiG-29OVT
2005年に初飛行。MiG-35に搭載するエンジンアビオニクス推力偏向ノズルを試験装備したテストベッド機。航空ショーにおける展示飛行では、ダブルクルビット、ブーメランを筆頭にSu-30MK以上の高機動を見せた。
MiG-29UBM «9.61»
MiG-29Mに準ずる複座練習機型。生産されず。
MiG-29KU «9.62»
MiG-29K «9.31»の複座艦上練習機型。教官席はレドーム位置に設けられる予定であった。生産されず。
MiG-29M2«9.67»
MiG-29UBM «9.61»から発展した複座戦闘攻撃機型。初飛行は2001年
MiG-29K «9.41»
MiG-29Mの艦上戦闘攻撃機型。初飛行は2007年。インド側の要求が大幅に取り入れられており、軽量化や短距離離陸能力の強化、搭載燃料の増加や低RCS塗料の採用が行われている。
MiG-35D
MiG-29M2のアビオニクスを強化したもの。NATOではフルクラムF(Fulcrum-F)と呼んで識別した。
MiG-29M(MiG-29M1)«9.61»
MiG-29M2の単座型。
MiG-29KUB «9.47»
MiG-29M2の艦上練習機型。操縦席配置はMiG-29M2のようなオーソドックスなタンデム方式。
MiG-35
MiG-35Dの単座型。
MiG-29SMT «9.17»
9.15規格の技術を用いて従来の使用機を改修する機体。初飛行は1997年
MiG-29SMTK «9.17K»
9.17規格の艦上戦闘攻撃機型。
MiG-29K-2002
MiG-29SMTKに西側装備品搭載能力を追加した輸出型。MiG-29K «9.41»と高い共通性を有する。MiG-29MTKとも呼ばれる。
MiG-29K-2008
MiG-29K-2002の能力向上型。MiG-35と高い共通性を有する。
MiG-29UBT «9.52»
複座型。初飛行は1998年
MiG-29SMT2 «9.17A»
9.17規格機の能力向上型。
MiG-29SMT «9.18»
9.18規格の改良型。
MiG-29SMT «9.53»
9.18規格の複座型。
MiG-29SMT «9.19»
9.19規格の改良型。

注釈

  1. ^ 旧型の9.15規格と区別するために、MiG-29M1とも呼ばれる
  2. ^ 多用途戦闘航空機 (multi role combat aircraft)
  3. ^ 改修対象は、初期型の9.12規格や9.13規格から新しい背部構造を持った9.17規格まで広範囲におよぶ。複座型のMiG-29UBTでは同じく初期の複座型であるMiG-29UB «9.51»より改修される。

出典

  1. ^ Russia launches production of new MiG-29M/M2 fighter
  2. ^ MiG-29 production enters transformation
  3. ^ 軍事研究2007年8月「ロシア空軍戦闘機&攻撃機の戦力動向」
  4. ^ IN FOCUS: 'Unified' MiG-29 has bright future, says Korotkov
  5. ^ The Mikoyan MiG-29 "Fulcrum"
  6. ^ Russian Avionics
  7. ^ ШКАИ-29
  8. ^ a b Кислородная система КС-129
  9. ^ OLS-UEM
  10. ^ a b Jウイング2015年5月号P.26-29
  11. ^ “MiG” Corporation has developed the Military Aircraft Automatic Landing System
  12. ^ “MiG” Corporation has Developed Automated g-load Limit Control System
  13. ^ 世界の傑作機シリーズ MiG-29 フルクラムP.64
  14. ^ Klimov Production: Aircraft Program, RD-33MK
  15. ^ a b c RUSLET (2014年). “Mikojan-Gurjevič MiG-29OVT” (チェコ語). 2021年5月28日閲覧。
  16. ^ Mig-29 Fighter
  17. ^ Минобороны РФ подпишет контракт на поставку 16 истребителей МиГ-29СМТ (ロシア語)
  18. ^ Russia orders more MiG-29SMT fighters
  19. ^ Новые МиГ-29СМТ(Р)
  20. ^ a b Indian MiG-29 upgrade
  21. ^ a b Mikojan-Gurjevič MiG-29SMT (iz.9.17) (‘Fulcrum F’)
  22. ^ Mikojan-Gurjevič MiG-29UBT (iz.9.52) (‘Fulcrum G’)
  23. ^ Mig-29 UBT
  24. ^ Mikojan-Gurjevič MiG-29SMT (iz.9.17A) (‘Fulcrum F’)
  25. ^ Mikojan-Gurjevič MiG-29SMT (iz.9.18)
  26. ^ a b Mikojan-Gurjevič MiG-29SMT (iz.9.19)
  27. ^ Mikojan-Gurjevič MiG-29UPG (iz.9.20)
  28. ^ Mikojan-Gurjevič MiG-29UPG-UB (iz.9.53I)
  29. ^ a b c d e take-off june 2015 P.38
  30. ^ Yemen Air Force
  31. ^ India, Russia ink MiG-29 upgrade deal
  32. ^ Истребители несирийного применения
  33. ^ Багдад на сто персон
  34. ^ Russia opens criminal case over MiG fighters returned by Algeria
  35. ^ MiG-29M2 product page
  36. ^ MiG-35
  37. ^ MiG-35 Fulcrum-F Multirole Fighter, Russia
  38. ^ MiG-35
  39. ^ Russia to Unveil Latest MiG-35 at Bangalore During Aero India 2007.
  40. ^ Подвесной контейнер целеуказания Т220/Э





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