I"s
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/09 23:41 UTC 版)
作品背景
本作はデビュー以来『WJ』編集部から恋愛漫画の執筆を要請されていた桂が初めて編集部の意向を汲み[3]、自身の嗜好であるSF的な要素を排して執筆した作品である[4]。
同じ恋愛作品であっても、登場人物全員の気持ちを綿密に書き出し[5]、全員を上から見下ろすような視点で描かれた『電影少女』とは異なり、『エム』において用いられた一人称表現を使い、主人公である一貴1人の視点のみで物語が描かれている[6]。このため、一貴以外の心理描写や一貴が見ていない状況は原則として描かれておらず(例外有り)[6]、一貴以外の気持ちについては想像はできても、相手がその言葉を口にするまでは決して知ることはできない。読者はあくまで一貴としてロールプレイング的にこの作品を読み進めることとなる。
雑誌連載時、登場人物の心理状態などを綿密に追うよう描いていたこともあり、当初予定した話数では話を完結しきれない事態になった。しかし、既に連載回数は確定していたため、無理矢理その話数で話を終了させた。連載時に描ききれなかった部分は、単行本にディレクターズ・カットとして補足・描き足されたため、連載時と単行本では、最終話を含む数話の内容が異なっている[7]。『WJ』掲載時の最終回では、いつきから送られてきたビデオレターの設定が微妙に異なっている。
タイトルの由来
タイトルの『I"s』(アイズ)はアルファベットの「I」の複数形からきており、「I」(アイ)たちの愛や哀の物語という意味が込められている[8][9]。このため、恋愛に直接絡む登場人物は一貴(Ichitaka)、伊織(Iori)[注 1]、いつき(Itsuki)、泉(Izumi)、藍子(アイコ)と全員「アイ」を踏まえた名前になっている。また、この「I」には英語の一人称代名詞としての「I」の意味もかけられており、前述した「主人公・一貴1人の視点で物語が進む」ことも示している[6]。
本来「I」の複数形は「I's」(アイズ)であるが、作者がアメリカ人から「アルファベットに複数形はなく、無理矢理複数形にしても読みは『アイス』になる」との指摘を受けたことにより、現在の形のタイトルが生まれる[9]。この指摘を受けた桂が「アイス」では印象が冷たいとの理由から、「s」に濁点を振って「アイズ」と読ませることとし、タイトルロゴに見られるような「s」の真上に点を二つ振る形で表記することとしたからである[9]。
この「sの上に点を振る」という表記はテキストでは不可能なため、クォーテーションなどで代用されることとなるが、点が2つ振られてさえいればよく、「I"s」・「I''s」・「I”s」・「I¨s」などと様々な表記が見られる。作者の公式サイト(『I''s』シングルクォーテーション2つ)[10]と集英社の公式サイト(『I"s』ダブルクォーテーション)[11]でさえ異なる表記となっている。さらには作中で伊織が命名したチーム名「チームI's」(こちらはアポストロフィーが1個で正しい)と混同した「I's」で書かれることも多い他、何も入れない「Is」と言った表記もしばしば使われる。「s」の大小も単行本奥付では大文字、公式サイトでは小文字と曖昧な所があり、インターネット上をはじめ、テキストによる表記方法には激しい揺れが見られる。なお本稿においては『I"s 完全版』の公式サイトに倣い、ダブルクォーテーションと小文字の「s」で統一している。
一貴の恋愛には直接関わってこない人物の名前は「I」からは始まらない名前となっている。唯一の例外として、終盤に登場したイサイプロの2人(イサイ(Isai)・石川(Ishikawa))がいるが、イサイは「2人の仲を引き裂く」、石川は「伊織の恋愛に関わっている」ことにより間接的に一貴の恋愛問題に関わっている。
舞台
本作は京王井の頭線沿線が主な舞台となっており、一貴の住まいのある西永福駅および駅周辺など実在する場所が数多く登場する。そのほとんどは広告や看板まで正確に再現されており、細かいところ(背景に小さく写るだけのものなど)まで実在している場合がある。ただし、「慰徒寺」(『I"s Pure』では「慰徒神社」)については作者が「実在しないので探さないでください」とコメントしている[12]。また、現在の西永福駅・明大前駅は大規模な改築工事により当時の姿とは大きく異なっている。
注釈
出典
- ^ 『恋愛漫画の名作「I”s<アイズ>」のアパレルグッズがSPINNSにてリリース!』(プレスリリース)ヒューマンフォーラム、2019年3月29日 。2023年8月8日閲覧。
- ^ “BSスカパー!連続ドラマ『I”s』ヒロイン・葦月伊織役に決定!”. 芸映プロダクション (2018年11月9日). 2023年8月9日閲覧。
- ^ 『4C R-side 〈HEROES-side〉』, p. 72.
- ^ 『第12巻』, 表紙そで.
- ^ 桂正和「GOKURAKU CLUB 6」『電影少女 13巻』集英社〈ジャンプ・コミックス〉1992年9月9日、ISBN 4-08-871703-1、191頁。
- ^ a b c 『第6巻』, 表紙そで.
- ^ 『第15巻』, 表紙そで.
- ^ 『第1巻』, 表紙そで.
- ^ a b c 『第4巻』, 表紙そで.
- ^ 「+ 桂正和プロフィール +」『+ 桂正和公式サイト K2R村 +』 2013年1月4日閲覧。
- ^ 『I"s公式サイト』 2013年1月4日閲覧。
- ^ 『週刊少年ジャンプ』1997年51号(集英社)。
- ^ 『第3巻』, p. 174, 「第25話 勝負の月」.
- ^ 『第11巻』, p. 156, 「第102話 深刻な悩み」.
- ^ 『第9巻』, p. 34, 「第75話 それどころじゃない!」.
- ^ 『4C R-side 〈HEROES-side〉』, pp. 74–75.
- ^ “#163【アフタートーク】伊織ちゃんの声 - 空気階段の踊り場”. Podcast on Spotify (2020年6月). 2023年8月8日閲覧。
- ^ “岡山天音、男子中高生の恋愛バイブル「I”s」実写化で主人公に! 「僕なりに体現していきたい」”. シネマカフェ (イード). (2017年10月30日) 2017年10月30日閲覧。
- ^ “実写ドラマ『I"s』葦月伊織役は白石聖に決定 オーディション700人の中から選出”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年11月9日) 2018年11月9日閲覧。
- ^ a b c “「I"s」徹底ガイド、「I"s」女子旅、『演劇人は、夜な夜な、下北の街で呑み明かす…』 番外編〜ドラマ「I“s」スペシャル〜”. ドラマ『I"s(アイズ)』 公式サイト. BSスカパー!. 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
- ^ a b c d 伊島空; 小越勇輝; 冨田佳輔(インタビュアー:宮津友徳)「「I”s」特集 伊島空(寺谷役)×小越勇輝(越苗役)×冨田佳輔(木田役)座談会」『コミックナタリー』、ナターシャ、2019年3月29日 。2023年8月8日閲覧。
- ^ “白石聖、『I”s』伊織役の決め手は“笑顔” 原作・桂正和氏が太鼓判「ヒロイン感があった」”. ORICON NEWS. oricon ME (2018年12月13日). 2020年8月13日閲覧。
- ^ “白石聖、漫画家・桂正和の宝物!? ドラマ『I"s』で漫画の葦月伊織を完コピ?『白石聖のわたくしごとですが...』”. 文化放送 (2020年1月31日). 2020年8月13日閲覧。
- ^ “桂正和「I"s」実写ドラマ化、美少女ヒロイン伊織役は白石聖”. シネマトゥデイ. (2018年11月9日) 2018年11月9日閲覧。
- ^ “白石聖、ドラマ『I”s』伊織と真逆の“毒舌キャラ” 思ったことを全部いう「悪い癖」”. ORICON NEWS. oricon ME (2018年11月30日). 2020年8月13日閲覧。
- ^ “連続ドラマ『I”s』、柴田杏花が収録で直面した困難 -監督から言われた一言は「もっと下手くそに」【連載インタビュー】”. 超!アニメディア. 2020年8月13日閲覧。
- ^ 萩原みのり(インタビュアー:斉藤貴志)「PICK UP ACTRESS 萩原みのり」『HUSTLE PRESS OFFICIAL WEB SITE』、2019年1月30日 。2023年8月8日閲覧。
- ^ “加藤小夏、役者の道を選んだ理由は『I”s』 尊敬する共演陣に囲まれ「初めてがI”sで幸せです」”. ORICON NEWS. oricon ME (2019年4月12日). 2020年8月13日閲覧。
- ^ a b c d “実写「I”s(アイズ)」一貴&ヒロインたち取り巻く追加キャスト発表 キービジュアル公開”. アニメ!アニメ! (2018年11月26日). 2022年4月16日閲覧。
- ^ 「2006」『プレイステーション2パーフェクトカタログ(下巻)』前田尋之 監修、ジーウォーク〈G-MOOK〉、2022年1月27日、122-165頁。ISBN 978-4-8671-7275-9。
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