EVOLTA EVOLTAの概要

EVOLTA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 09:53 UTC 版)

EVOLTA
左から乾電池、充電式、充電式e

2008年4月26日にアルカリ乾電池「EVOLTA」が発売され、同年10月1日に充電式ニッケル水素電池「充電式EVOLTA」が発売された。2010年4月20日にエントリーモデルの「充電式EVOLTA e」が発売された。2017年1月、持続時間・保存性・液漏れ防止に優れた「EVOLTA NEO(エボルタネオ)」を発売した[1][2]

「EVOLTA」の名は、「進化」を意味する「EVOLUTION」と、「電圧/みちあふれようとする力」を意味する 「VOLTAGE」から命名された[3]

EVOLTA

EVOLTA(乾電池)

2008年4月26日に、事実上のオキシライド乾電池の後継製品として発売されたアルカリ乾電池である[注 1]。正極に二酸化マンガンMnO2黒鉛Cと新開発のオキシ水酸化チタンを、負極に亜鉛Znを使用している。

電池の外装缶には新開発の「超薄型差厚缶」を使用し封口部の強度を上げ、またガスケットの構造と材料を改良し、強度を保ちつつ外装缶自体の体積を減らした。それにより発電に必要な材料の内容量を増やし、正・負極の材料も改良、材料を従来品と比べて高密度に充填することにより、発電の反応効率を上げることに成功している[3]

これらの改良により、世界No.1の長持ち性能[4]と業界最長[注 2]の使用推奨期限10年を実現した[3][注 3]。また、「世界一長持ちする単3形アルカリ乾電池」として数々のギネス世界記録に認定されている。(2009年「乾電池を動力にし、遠隔操作されたモデルカーの最長走行距離」、2013年、1本の乾電池で「最も長いプラスチック製のおもちゃの電車レール」約5.6kmを走破[5]、2018年、 「乾電池を動力にしたロボットが泳いだ世界最長距離」[6]。)

パナソニックは公式サイトで通常のアルカリ乾電池と区別したり、EVOLTA専用の公式サイトも用意するなど、通常のアルカリ乾電池との差別化を図っている。ただし、分類上はアルカリ電池である。

EVOLTAの発売により、パナソニックは国内電池市場のシェアを2008年の4割から2009年に5割に引き上げることを目標としている。アルカリ乾電池市場の世界シェアも2006年の19%から、2009年には26%に引き上げることを目標としている。

なお、上記の改良により国際規格の範囲内で乾電池の外形寸法の変更を行った。このため、電池ケースの寸法との関係で電池が入りにくい場合や、電池のプラス極側が機器のプラス端子に届かないために機器が作動しない場合があるとして、パナソニックでは注意を呼びかけている[7]ほか、電池の製品名こそ明記されてはいないが同様のケースに関する注意喚起を行う機器メーカーも存在する。[8]

EVOLTA登場による、ユーザーサイドでの変わった歓迎例としてはミニ四駆用ハイパワー電池としての使用例[注 4]があったが、2011年2月現在はルール改定のため当てはまらなくなった[注 5]

オキシライド乾電池との比較

オキシライド乾電池は初期電圧が1.7Vと、アルカリ乾電池より高く、それの使用を想定していない機器では電子回路や電子部品に対する負担が大きくなり、過度の発熱や寿命が短くなる等の問題を生じる恐れがあった。EVOLTAは、普通のアルカリ乾電池と同じく初期電圧は1.6Vであり、前述の問題が起こることはない。

なお、EVOLTAの発売後、しばらくはオキシライド乾電池は併売されていたが、生産は大幅に縮小され、2009年に生産と販売が終了された。EVOLTA登場後の新しい乾電池として、2011年10月に単3形・単4形のリチウム乾電池(単3形:FR6SJ、単4形:FR03SJ)が発売された[注 6]デジタルカメラストロボなど大電流を必要とする機器でアルカリ乾電池を上回るハイパワーと長寿命化を実現するとともに、アルカリ電池に比べて使用温度が幅広く、耐寒性もある為(-40℃〜60℃)保存性にも優れている。公称電圧はアルカリ乾電池などと同じ1.5Vであるが、初期電圧は1.8Vと、オキシライド乾電池よりもさらに0.1V高いため、オキシライド乾電池と同様の注意事項がパッケージに書かれている。

充電式EVOLTA/充電式EVOLTA e

充電式EVOLTA(HHR-3MWS)と急速充電器(BQ-CC12)

2008年10月1日に発売[9]。なお、発売当日に社名変更しているが、社名変更前に出荷した製品は松下電器産業株式会社・松下電池工業株式会社(充電器セットは松下電器産業のみ)と旧社名で記載される。電池の材料・構造・工法を融合させた新技術により、従来品の充電式ニッケル水素電池ECO(HHR-3MPS)より繰り返し回数が約1,000回→約1,200回と20%向上し、新開発の「水素吸蔵合金」やEVOLTAと同じ「超薄型差厚缶」等を採用したことで使用回数を重ねても、1回あたりの使用時間が10%長くなった。生産国は中国。また、別売りのサイズ変換スペーサーを使用することで、単3電池を単1電池や単2電池として使用できる。

2010年4月20日に、充電池の普及拡大を目指し、パワーを低く抑えながら約1,500回繰り返し使えるエントリーモデル「充電式EVOLTA e」が発売された[10]

同年10月1日には「充電式EVOLTA」の第2世代モデル(HHR-3MVS/4MVS)が発売された。繰り返し回数が約1,200回→約1,600回、先に発売された充電式EVOLTA e(HHR-3LVS)よりも約1.8倍長持ち(いずれもメーカー発表値)と性能がさらに向上している。ただし、容量が第1世代「充電式EVOLTA」よりも僅かに減少している。(単3のみ。min.2000mAh→min.1950mAh)

2011年4月21日には、「充電式EVOLTA e」の第2世代モデル(HHR-3LWS/4LWS)を発売。「充電式EVOLTA」の第2世代モデルと同じく繰り返し回数を大幅アップし、約2,100回に向上。また、従来モデルでは設定されていなかった単4形が追加された。なお、外装パッケージにはオレンジボディの「エボルタ・ロボット」が描かれている。

2011年10月21日には「充電式EVOLTA」の第3世代モデル(HHR-3MWS/4MWS)が発売された。繰り返し回数が1,600回から1,800回へと上昇し、1年後の容量残存が従来の80%から85%と改善されている。また、放電性能も上昇させているとのこと。単3の容量は今回も減少しており、公称値がeneloop等と同じmin.1900mAhとなった。これによって、売りの一つが無くなったといえる。翌月の同年11月21日には『ONE PIECE』とコラボレーションし、外装・電池本体を専用デザインに変更した「ワンピースバージョン」4種類(単3形・2本入り包装のみ)が追加、さらに、2012年5月には好みや色で使い分けができるレインボーカラーを追加した。

三洋電機がパナソニック傘下となったことに伴い、同社が販売していた「eneloop」と競合する形となったため、三洋電機の製品が順次パナソニックブランドに変更されてからも、唯一SANYOブランドのまま販売が継続される形になっていたが、2013年4月26日にeneloopと共にモデルチェンジした[11]。「充電式EVOLTA」は第4世代モデル(BK-3MLE/4MLE)、「充電式EVOLTA e」は第3世代モデル(BK-3LLB/4LLB)となる。「充電式EVOLTA」は「eneloop」との特長をより明確にするため、正極材料の組成最適化によって材料の利用率を向上させたことにより、繰り返し使用回数はそのままで定格容量を単3形はmin.50mAh、単4形はmin.30mAhそれぞれアップ(単3形:min.1950mAh、単4形:min.780mAh)。「充電式EVOLTA e」は繰り返し使用回数が約4,000回に大幅向上した。併せて、従来からの「充電式EVOLTA」にあたる「スタンダードモデル」に加え、単3形で定格容量min.2500mAhを実現した大容量タイプ「充電式 EVOLTA ハイエンドモデル(BK-3HLC/4HLC)」を新設し3タイプとなった。なおハイエンドモデルのみ日本国内で生産されている。また、充電器セット品に同梱される充電器は電池に合わせた充電制御により、三洋電機時代に発売されていた世代品を含むすべての「eneloop」と兼用で使用できるようになった。

2015年10月には「充電式EVOLTA ハイエンドモデル」が初めてモデルチェンジし、第2世代へ移行(BK-3HLD/4HLD)。定格容量を単3形はmin.50mAh、単4形はmin.20mAhそれぞれアップ(単3形:min.2550mAh、第4形:min.950mAh)した。

2018年9月に「充電式EVOLTA スタンダードモデル」のリニューアルと同時に、「充電式EVOLTA ハイエンドモデル」が「eneloop」のハイエンドモデルである「eneloop pro」に統合される形で廃止され、既存のお手軽モデル「充電式EVOLTA e」との2種類に整理された(反対にeneloop側はお手軽モデル「eneloop lite」が「充電式EVOLTA e」に統合され廃止)。

2019年3月にJISの改正に伴うくり返し回数の試験条件の見直し(充電のタイミングが約60%放電から100%放電に、流れる電気の量が2倍にそれぞれ変更)によってくり返し回数の表記が変更となり、「充電式EVOLTA スタンダードモデル」は約1,800回から約500回に、「充電式EVOLTA e」は単3形が約4,000回から約1,200回に、単4形が約3,000回から約1,000回となった。なお、電池性能そのものの変更はない。

2023年4月に「eneloop」のリニューアル(一度廃止されていた「eneloop lite」が「充電式EVOLTA e」を上回る容量にアップして復活)[12]を行うにあたり、パナソニック製の充電式ニッケル水素電池(ブランド名が付いてない単1形・単2形を含む)のブランド名を「eneloop」に統一することとなり、「充電式EVOLTA」は生産終了となった。


注釈

  1. ^ 発売当時の社名は松下電器産業株式会社・松下電池工業株式会社。
  2. ^ 2008年1月15日現在。アルカリ乾電池において。保存条件、常温保存20°C±2°C、相対湿度60%±15%
  3. ^ 2012年には、パナソニックアルカリ乾電池も改良を施し、単5形及び9V角形を除き(従来通り2年)、EVOLTAと同じ使用推奨期限10年を実現している。
  4. ^ EVOLTAがアルカリ乾電池であることと当時のニッケル水素が使用不可というルールが理由。
  5. ^ EVOLTA発売当時のミニ四駆公認競技会規則では使用できる電池がマンガン電池・アルカリ電池・ニッケルカドミウム電池のみとされており、それが適用される競技ではeneloopや充電式EVOLTAなどのニッケル水素電池やオキシライド電池が原則使用できなかった。そのためアルカリ乾電池であるEVOLTAはそのパワーもあってそれなりに重宝されているという現象が起こっていたようである。しかし、その後のルール改定で 2011年以降は特に但し書きがない限りタミヤブランドの電池しか使用できなくなり、また同時にタミヤブランドでニッケル水素電池(FDK製)が発売され、事実上ニッケル水素電池の使用が限定的に解禁された。
  6. ^ それ以前にも富士フイルムエナジャイザーと提携していた時代に、単3型リチウム電池を発売していた。
  7. ^ 2016年11月3日から延期。
  8. ^ 直線距離ではない。

出典

  1. ^ a b 新・アルカリ乾電池「EVOLTA NEO」を発売』(プレスリリース)パナソニック株式会社、2017年1月30日http://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/01/jn170130-2/jn170130-2.html2019年10月5日閲覧 
  2. ^ “パナソニック、同社史上もっとも長持ちするアルカリ乾電池「エボルタ ネオ」”. 家電 Watch. (2017年1月30日). https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/1041511.html 2019年10月5日閲覧。 
  3. ^ a b c 新・乾電池「EVOLTA(エボルタ)」を発売』(プレスリリース)パナソニック ナショナルウェルネスマーケティング本部、2008年1月15日https://news.panasonic.com/jp/press/jn080115-12019年10月5日閲覧 
  4. ^ 2009年3月1日現在、アルカリ単3乾電池でのANSI・IEC・JIS基準における全放電モードの平均値より(パッケージ包装に記載)
  5. ^ ギネス世界記録(R)60周年記念認定証を受賞 パナソニックの世界一長もちする単3形アルカリ乾電池「EVOLTA」”. Panasonic Group (2015年2月24日). 2023年7月12日閲覧。
  6. ^ 「エボルタNEO」3キロちゃぷちゃぷ 3時間22分、ギネス世界記録”. 朝日新聞 (2018年11月13日). 2023年7月12日閲覧。
  7. ^ 新アルカリ乾電池EVOLTA(エボルタ)のご使用にあたってのおしらせ”. パナソニック株式会社 (2008年10月1日). 2018年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月5日閲覧。
  8. ^ 乾電池使用商品に関するお知らせ - 東京マルイ、2023年2月19日閲覧
  9. ^ 「充電式EVOLTA(エボルタ)」シリーズを発売』(プレスリリース)パナソニック ナショナルウェルネスマーケティング本部、2008年8月28日https://news.panasonic.com/jp/press/data/jn080828-1/jn080828-1.html2019年10月5日閲覧 
  10. ^ ニッケル水素電池「充電式EVOLTA(エボルタ) e」シリーズを発売』(プレスリリース)パナソニック アプライアンス・ウェルネス マーケティング本部、2010年1月22日https://news.panasonic.com/jp/press/jn100122-12019年10月5日閲覧 
  11. ^ ニッケル水素電池「エネループ」「充電式エボルタ」シリーズを発売』(プレスリリース)パナソニック コンシューマーマーケティング ジャパン本部、2013年2月28日https://news.panasonic.com/jp/press/data/2013/02/jn130228-2/jn130228-2.html2019年10月5日閲覧 
  12. ^ パナソニックの充電池は「エネループ」へ名称を統一 充電式ニッケル水素電池「エネループ」シリーズを発売』(プレスリリース)パナソニック株式会社、2023年3月30日https://news.panasonic.com/jp/press/jn230330-12023年4月4日閲覧 
  13. ^ 電池ロボ「エボルタ」、箱根越えリベンジに成功-京都・三条大橋への挑戦は続く 小田原箱根経済新聞 2010年10月12日
  14. ^ メディアミックス部門グランプリ”. フジサンケイグループ広告大賞. 第43回受賞作品一覧. 2014年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月5日閲覧。
  15. ^ 由利高原鉄道YR2002号車「エボルタ電池鉄道」ラッピング車両、3/30運行開始 マイナビニュース 2016年3月17日
  16. ^ エボルタチャレンジの経緯について”. エボルタチャレンジ2016. Panasonic. 2016年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月5日閲覧。
  17. ^ 無念!乾電池飛行機のパナソニックエボルタチャレンジ、世界記録ならず 2016年11月6日 マイナビニュース
  18. ^ 中国新聞 2018年11月11日付 37面「乾電池ロボ宮島へ遠泳 3キロギネス認定」





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