音楽教育 課題

音楽教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/04 00:22 UTC 版)

課題

教員養成に関する課題

日本で教員免許を取得する際には、教育職員免許法施行規則第四条に基づき、次の内容を含む科目を規定単位数以上履修する必要がある。

  • ソルフェージュ
  • 声楽(合唱及び日本の伝統的な歌唱を含む。)
  • 器楽(合奏及び伴奏並びに和楽器を含む。)
  • 指揮法
  • 音楽理論作曲法(編曲法を含む)及び音楽史(日本の伝統音楽及び諸民族の音楽を含む)
  • 音楽教育学(おんがくきょういくがく、: Pedagogy of Music):狭義に定義すれば「音楽教育」という人間の行動を対象とした研究分野を言う。広義には、音楽教育を改善するための研究、すなわち音楽教育を取り巻く制度や歴史、環境、音楽教育の内容・教材・方法、行為の主体(教師)による働きかけや、それによる行為の対象(子供)の認識過程を追究した研究分野全体を指す。

音楽に限らず、実技教科を専門とする教員は募集人数が少なく、また、採用されたとしても担当授業数の関係で講師扱いとなることも多い。大学で音楽について専門的に学んだとしても就職が安定しないことが多い。

身体性の排除

近代西欧の教育は「精神・身体二元論」に基づいて身体を軽視する傾向にあった。ことに音楽教育は音楽の独自性・自立性を強調し、身体的要素など音楽と関係がないと考えられた要素を切り離す方法で発展した。今日の日本でも音楽教育は情操教育の一環と考えられている。

こうした身体軽視の音楽教育では「音楽に合わせて自由に体を動かす」といったリズム感を身体で表現する基礎が身につかない[7]園部三郎は「情操」に対して「情動」という概念を対置し、情操主義的音楽教育を繰り返し批判している。園部は、「人間が当然自然に持っている」「生物学的な能力」である「情動」と、その土台の上で文化によって発展させていく「情操」の2つの面を指摘し、幼児期の音楽教育ではもっと本能的な情動を重視せよと主張している。

音楽教育と著作権

2017年日本音楽著作権協会は民間の音楽教室に対し、音楽著作物の使用料として年間受講料収入の2.5%を徴収すると発表。これに対し音楽教室を運営する日本国内の約250の団体、事業者が反発して提訴した。一審の東京地方裁判所の判決は協会に対する使用料の支払いを認めるものであったが、二審の知的財産高等裁判所は支払う必要はないとして一審も判断を覆した。協会は上告したが、2022年10月24日、最高裁判所は日本音楽著作権協会の上告を棄却した[8]。なお、この判決は生徒の使用料に関するものに限った話であり、教師の演奏に係る使用料については別途、支払いについての交渉が続く[9]


注釈

  1. ^ 1999年度全国消費実態調査によると、二人以上の一般世帯での音楽関連資産の所有率は、ピアノが25.2%、電子鍵盤楽器が21.9%、CD・MDラジオカセットが77.9%、ステレオセットが49.4%である。詳しくは、統計局ホームページ 用語説明を参照のこと。
  2. ^ たとえば、カール・シーショア、ゲーザ・レーヴェース、ジェームス・マーセルの研究など(供田武嘉津 1975, pp. 67–99)
  3. ^ 「生成」という概念を使う研究者もいる。日本学校音楽教育実践学会 編『生成を原理とする21世紀音楽カリキュラム』,東京書籍,2006年や、小島律子、松尾葉子、斉藤佐知子、高橋曜子、柳伸明、加藤博之「音楽の生成を核にした音楽教育の理論と実践(21世紀の音楽科のカリキュラム開発-その3 新しいカリキュラムの枠組み-)」『学校音楽教育研究 : 日本学校音楽教育研究会紀要』第8巻、日本学校音楽教育実践学会、2004年3月30日、 1-12頁、 NAID 110006937910 などを参照。
  4. ^ 石村真紀「音から始まる -創造的音楽療法と表現-」(小島律子 & 澤田篤子 1998, pp. 21–36)、下出美智子「ことばから始まる」(小島律子 & 澤田篤子 1998, pp. 37–55)、など。

出典

  1. ^ 木村博文「さまざまな音楽学習の場」高萩保治・中嶋恒雄 編『音楽の生涯学習』第5章,pp82~91,玉川大学出版部,2000年
  2. ^ 小林いつ子「音楽教育の歴史に学ぶ」(小島律子 & 澤田篤子 1998, p. 234)
  3. ^ 小島律子「表現の原理と教育的意義」(小島律子 & 澤田篤子 1998, pp. 1–17)
  4. ^ 供田武嘉津 1975, pp. 61–62.
  5. ^ 供田武嘉津 1975, pp. 57–67.
  6. ^ 山本文茂 2006, pp. 96–106.
  7. ^ 高橋昭弘「音楽と身体性」『現代と音楽』、東京書籍、1991年、 ISBN 4487752604pp.175-186.
  8. ^ 音楽教室での生徒の演奏、著作権料「支払う必要なし」 最高裁が初判断”. 産経新聞 (2022年10月24日). 2022年10月24日閲覧。
  9. ^ 最高裁がJASRACの訴え棄却、生徒演奏分は音楽教室に著作権使用料の支払い義務なし”. 日経X-TECH (2022年10月24日). 2022年10月24日閲覧。


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