革靴 甲革の加工

革靴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 21:25 UTC 版)

甲革の加工

製造工程

革靴は基本的に以下の工程で製造される。

  1. 採寸 - 使用者の足のサイズを測る。量産される靴は、あらかじめ一般的な使用者を想定してラストを作成する。
  2. ラスト作成 - 採寸したデータを基に、ラストと呼ばれる木型を作成する。
  3. 裁断 - あらかじめ提供されたデザインに基づき、型紙から各パーツを革から断裁する。
  4. 縫製 - 甲革と内張りをそれぞれ縫製する。
  5. 内底張り - ラストに内底を固定する。この段階ですでにシャンクが内底に装着済みの場合もある。通常釘で打ち付けるが、釘の抜き忘れが懸念されることから最近では糊張りも見られる。ただし、糊張りだと後工程でずれてしまうこと、きれいにはがれないことなどから、現在でもなお釘うちが主流である。
  6. 補材挿入 - 甲革と内張りの間に、かかと芯・つま先芯など、固さを出したい部位に補材を挿入する。
  7. 釣り込み - ソールに補材と内張りが施された甲革を乗せ、内底の上に固定していく。この際、釘が多用される。
  8. くぎ抜き - 全ての釘を抜き、ラストを甲革から抜き取る。この段階で、ようやく靴の外観が現れる。
  9. シャンク付け - シャンクを取り付ける。シャンクはかかとが高くなっている革靴の、足の裏の強度を保つ金属あるいは木製部品である。
  10. 底つけ - 甲革に底をつける。底のつけ方は多種あるが、下記「製法による分類」を参照のこと。

手入れ

革靴に限らず、皮革製品は手入れを怠ると劣化する。そのため、定期的なメンテナンスが必要となる。ここでは、代表的かつ一般的なタイプの靴の清掃を紹介する。靴によっては、独自の手入れが要求される場合もあるので、商品の取扱説明書も参照されたい。皮革の手入れについては皮革靴磨きを参照。

  1. 汚れのふき取り ブラシで大まかに甲革の汚れを払い、へらで靴底の汚れを取る。更にやわらかい木綿の布で甲革全体を拭く。
  2. 靴墨の塗布 靴墨を適量とり、広く甲革全体に塗り広げる。広げ終わった後に、靴墨が乾かないうちに簡単に柔らかい布で拭き取る。このとき使用した布は廃棄する。
  3. 上記を片方ずつ行い、約10分ほど放置する。概ね靴墨が乾燥したところで、別の柔らかい布でこすり、つやを出す。

1.は毎日靴を脱いですぐ、2.と3.は7日に一回程度行う。

革靴は履く事により皺ができ形が崩れるため、脱いだ後はシューキーパーを使用するのが望ましい。

寸法表示

靴の寸法表示には現在幾つかの標準がある。ただ、同一の規格内でも国やメーカーによって実際の大きさに差がある。

センチメートルによる表示法

特定の寸法を持つ足の長さ(かかとからつま先まで)をセンチメートル(cm)で表示する。この場合、靴に入る足の大きさを表示するので、厳密には靴の寸法ではなく足の寸法である(足入れサイズ)。22.5cm、25cmなどの表示。端数は通常0.5cm単位であるが、まれに0.25cmのものもある。主に日本中国などで使用されている表示法で、日本では最も一般的である。

大麦による表示法

靴の甲革のかかとからつま先までの内側の長さを大麦の粒(1/3インチ)の個数で表示する[1]。6、7 1/2等の表示で読み方は、『インチ』ではなく『サイズ』である。主に英国米国南米などで使用されている表示法で、輸入靴の寸法表示で日本でも見ることができる。

オート麦による表示法

脱穀したオート麦を並べ、その個数で靴底の大きさを表示する。35、40などの表示になり、端数は無い。通常単位表示はなされず、数字だけの表示となる。主に欧州で使用されている表示法で、輸入靴の寸法表示として日本でも見ることができる。

文数による表示法

一文銭を並べて足の大きさを表示する表示法。この場合も、靴の大きさではなく足の大きさを表示する。七文、十文半等と表示する。なお、この表示法は現在革靴にはほぼ見られなくなり、下駄草履地下足袋などに僅かに見られるのみである。

幅の表示

日本ではJIS S 5037「靴のサイズ」に基づき、足囲の表示としてアルファベットで表示される[2]日本人の足は西洋人に比べて甲高といわれており、このため洋靴(革靴)は日本人には幅が狭いことが多い[要出典]と信じられている。これは年配者によく見られる傾向であり、中年以下や若年者にはあまり当てはまらない。むしろ幅の広すぎる靴で足を変形させたり痛めたりするケースが広く見られる。また、日本の寸法表示が足の大きさでなされ、靴の大きさを示す洋靴(革靴)の着用に際して誤解を生じることも多かった。このため、1977年から1979年にかけて全日本履物団体協議会が通商産業省生活産業局からの委託を受け、「靴型基準の作成のための調査研究」を行い、JIS S 5037で幅に関する基準が制定された結果である。表示はセンチメートル表示された足長に続いて行われ、AA、A、B、C、D、E、EE、EEE、EEEE、F、Gと後のほうほど甲高・幅広になる。またEの列はEの数が増えるほど甲高・幅広になる[2]。またFはEEEEEと表示される場合も多い。婦人靴の場合表示されていない場合も多い[2]


  1. ^ 靴のサイズの豆知識【ケルトの森】
  2. ^ a b c 大塚斌、菊田文夫、近藤四郎、高橋周一「日本人成人の足の計測値からみた革靴の適正サイズと自称サイズの一致度」『日本家政学会誌』第43巻第4号、社団法人日本家政学会、1992年4月15日、311-318頁、NAID 110003167481 






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