童名 (琉球諸島・奄美群島)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/12 05:11 UTC 版)
歴史
家族名 | 個人名 | |
---|---|---|
琉球伝統 | 屋号 | 童名 |
日本式 | 苗字 | 名乗 |
中国式 | 姓 | 唐名 |
琉球の伝統的な人名は、身分・性別を問わず「
琉球処分後に戸籍制度が敷かれると、貴族や士族の男性は名乗や諱を戸籍名として登録することが多かった[5]。庶民にも日本風の名前を戸籍に登録する者がいたが[5]、太平洋戦争が終わる前の、特に女性においては童名をそのまま戸籍名とすることも少なくなく、カマドやウトなどの女性の名前も見られた[10][3]。そのいっぽうで、同化政策の影響により明治末期から大正期にかけて女学生のあいだで学校での呼び名を日本風に改めることが流行した[11]。この学校での通称を学校名(ガッコウナー)という[5][11]。その影響は一般にも波及し、1942年に改姓改名の手続きが大幅に簡略化されると、戸籍名を童名由来から日本風に変える人が増えた[11]。これにより学校名が戸籍名となり、童名は身内で呼び合う名前となった[12]。
20世紀末では童名が使われる事はほぼなくなったが[1]、一部では童名の風習が存続している[2]。たとえば与論島では2020年現在でもヤーナーが普通に使われており[13]、池間島では1990年代現在でも神籤を使った名づけ儀式が行われている事が報告されている[14]。また尚本家23代の尚衞は、自らの孫にも名付け継承式を行ったとしたうえで、2020年現在の沖縄本島でも古い家では童名が継承されており、迷子の呼び出し放送などで耳にすることがあるとしている[15]。
命名法
子が生まれると、生後数日[注釈 3]で童名を付ける
童名の命名法には地域ごとの原則があるがその多くは祖名継承で、とくに長男は祖父母の、長女は祖母の童名を継ぎ(隔世代継承)、次男次女以下は身内の童名から選ばれる地域が多い[7][3]。実際に一族内では同じ童名が使われる事が多く、たとえば琉球国王に継承された童名のひとつである
先祖の童名を継承する理由については、先祖を想う風習が反映されたとする説や[17]、生児を先祖の生まれ変わりとする思想があったとする説[3][17]、童名は個人の識別よりも親族関係を表示する意味合いが強かったとする説[3]、名づけが祖霊祭祀の一形態であったとする説[18]、先祖に生児の護り神になってもらうとする説[19]などがある。
その他の命名法には、長男は父方の祖父・次男は母方の祖父・長女は父方の祖母・次女は母方の祖母の童名を継ぐことが多い地域(波照間島)[20][注釈 4]、一族の童名から神籤で決める地域(宮古諸島や西表島)[21][12]、米占いで決める地域(安里や天久)[17][12]、神懸かりしたユタに名付けてもらう地域[21]、命名式の当日に最初に訪れた人の名を付ける地域[4]などがある。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h 比嘉政夫 1983, pp. 1004–1005.
- ^ a b c 牟田口章人 1974, p. 43.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 上野和男 2002, pp. 43–48.
- ^ a b c 源武雄 1983, pp. 648–649.
- ^ a b c d 大藤修 2012, pp. 204–207.
- ^ 後藤一日 1975, pp. 52–54.
- ^ a b c d e 崎原恒新 & 恵原義盛 1977, pp. 40–53.
- ^ 宮岡真央子 1996, p. 1.
- ^ a b c d 大藤修 2012, pp. 167–170.
- ^ a b c d e f 名嘉純一 1983, p. 568.
- ^ a b c 太田良博 1983, p. 660.
- ^ a b c 比嘉政夫 1992, pp. 28–31.
- ^ a b ヨロン島観光協会 2020.
- ^ 宮岡真央子 1996, pp. 3–7.
- ^ 尚衞 2020.
- ^ 那覇市企画部市史編集室 1979, p. 560.
- ^ a b c 那覇市企画部市史編集室 1979, pp. 560–561.
- ^ 宮岡真央子 1996, p. 15-16.
- ^ 宮岡真央子 1996, p. 7-14.
- ^ 宮良高弘 1972, pp. 61–62.
- ^ a b 宮岡真央子 1996, pp. 1–3.
- ^ 宮岡真央子 1996, pp. 19–21.
- ^ a b c 那覇市企画部市史編集室 1979, pp. 567–569.
- ^ a b c d 那覇市企画部市史編集室 1979, p. 567-569.
- ^ a b 牟田口章人 1974, pp. 45–46.
- ^ 牟田口章人 1974, p. 46.
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