突発性発疹 突発性発疹の概要

突発性発疹

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 07:14 UTC 版)

突発性発疹
別称 exanthema subitum, roseola infantum, rose rash of infants, sixth disease, baby measles, three-day fever
Roseola on a 21-month-old girl
概要
診療科 感染症
分類および外部参照情報
ICD-10 B08.2
ICD-9-CM 057.8
DiseasesDB 5857
MedlinePlus 000968
eMedicine emerg/400 derm/378 ped/998
MeSH D005077

「小児ばら発疹」[1]、「偽性風疹」[1]、「突発疹」、「突発性発疹症」などとも呼ばれる。

なお、医学が発展していなかった時代には原因不明の乳幼児の急な発熱が「知恵熱」と呼ばれたが、その原因の多くが実際には突然の高熱と解熱後の発疹を特徴とする突発性発疹であると考えられている[4]

原因

ヒトヘルペスウイルス6型

ヒトヘルペスウイルス6型または7型初感染による。感染源は主に家族からの水平感染と考えられる。

突発性発疹罹患後、ウイルスは唾液腺の細胞などに潜伏感染し、生涯持続する。一方で感染症に対しては終生免疫を得る。二度罹患した場合は1度目が6型、2度目が7型である場合が多い。

水痘・帯状疱疹ウイルスと違い再活性化はまれであるが、起こった場合には重症となりうる。潜伏感染したウイルスは断続的に主に唾液中に排泄され、水平感染を起こす。

病態

ウイルス感染後の潜伏期間は10-14日程度と考えられている。発熱の2日程度前から、血液中にウイルスを検出できる。発熱の期間は3-4日間で、その後は血中に中和抗体が出現し、ウイルスは検出できなくなる。唾液腺細胞のほか、単球マクロファージなどにもウイルスが潜伏感染すると考えられている。神経系への親和性が高く、熱性痙攣患者の髄液中にHHV-6のDNAを検出できることも多い。

好発年齢は4ヶ月から1歳で0歳と1歳が99%を占め[2]、症状が現れない不顕感染は 20%-40%とされる[2]。季節との関連性はみられない。HHV-6のほうがHHV-7よりも初感染は早い傾向がある。

症状

39-40℃の突然の発熱で発症する。概して全身状態は良好である。発熱時に、軽度の咳や下痢を伴うことがある。中枢神経に感染しやすく、日本人では10%ほどが熱性痙攣を合併する(日本人は欧米人と比べ、熱性痙攣が多いことが疫学調査で明らかになっている)。大泉門の膨隆はさらに多いが、重篤な神経症状を起こすことはまれである。

3-4日の有熱期の後、解熱するとともに全身に発疹が出現する[1]。発疹は小豆大程度までの浮腫性紅斑(わずかに盛り上がった紅い発疹)であり、教科書的には癒合傾向を示さないとされているが、実際には多少癒合している症例が珍しくない。発疹は3-4日で瘢痕を残さず治癒する。色素沈着も残さない[1]

欧米人のHHV-6初感染では発熱のみで発疹がみられないことが多いと報告されており、この差が人種差によるものか生活習慣や環境の差によるものかの検討が必要である。

検査

白血球増多はみられず、CRP上昇もないか、あっても極軽度である。極軽度のトランスアミナーゼ上昇がみられることがある。

ウイルス感染に対する一般的な検査法は、血清抗体価測定である。HHV-6,7各々に、IgG,IgM抗体を測定できる。IgM陽性でIgG陰性ならば初感染を意味し、IgM陰性でIgG陽性の場合は、既に感染したことがあり免疫ができている。

患者血液からウイルス分離またはウイルスDNAを検出することができるが、一般的には行われない。しかしDNA検出(PCR)は迅速に結果が得られるため、造血幹細胞移植後など免疫不全状態の患者や臓器移植後のHHV-6再活性化症候群のように重篤なHHV-6感染症では、有力な検査となる。

重症の熱性痙攣や脳炎などで髄液を採取した場合、髄液からのDNA検出により中枢神経感染を証明できる可能性が高い。


  1. ^ a b c d e 突発性発疹 MSDマニュアル家庭版
  2. ^ a b c d 突発性発疹 国立感染症研究所 感染症情報センター
  3. ^ 山西弘一、「突発性発疹とヒトヘルペスウイルス6(HHV-6) (新しいウイルス感染症<特集>) -- (基礎から臨床へ)」 『臨床科学』 25(7), p863-868, 1989-07, NAID 40003764896
  4. ^ 知恵熱ってあるの?赤ちゃんの高熱の本当の原因と対処法”. hoplus. 2023年6月7日閲覧。


「突発性発疹」の続きの解説一覧




突発性発疹と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「突発性発疹」の関連用語

突発性発疹のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



突発性発疹のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの突発性発疹 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS