移動平均 指数移動平均

移動平均

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 08:09 UTC 版)

指数移動平均

EMA の重み付け N=15 の場合

指数移動平均(: Exponential Moving Average; EMA) では、指数関数的に重みを減少させる。指数加重移動平均 (: Exponentially Weighted Moving Average; EWMA)、指数平滑移動平均 (: Exponentially Smoothed Moving Average) とも呼ばれる。重みは指数関数的に減少するので、最近のデータを重視するとともに古いデータを完全には切り捨てない(重みは完全にゼロにはならない)。右図は、重みの減少する様子を表したものである。なお、EMA は移動平均とは呼べないとする立場もあり、その場合は指数平滑平均 (: Exponential Average) と呼ぶ。

重みの減少度合いは平滑化係数と呼ばれる 0 と 1 との間の値をとる定数 α で決定される。α は百分率で表現されることもあり、平滑化係数が 10% というのは α=0.1 と同じことを表している。αを時系列区間 N で表すこともあり、その場合は となる。例えば、N=19 なら α=0.1 となる。重みの半減期(重みが0.5以下となる期間)は、約 N/2.8854 である(N>5 のとき1%の精度で)。

時系列上のある時点 t の値を Yt で表し、ある時点 t での EMA を St で表す。S1 は定義しない。S2 の値をどう設定するかにはいくつかの手法があり、S2 の値を Y1 とすることが多いが、S2 を時系列上の最初の4つか5つのデータの平均とすることもある。α が小さい場合、S2 をどう設定するかは比較的重要であるが、αが大きい場合は(古い値の重みが小さくなるので)重要ではない。

t≧3 の場合の EMA の計算式は次のとおりである。[3]

この計算式は Hunter (1986)によるものである[3]。各データの重みは、 になる。Roberts (1959) では Yt-1 の代わりに Yt を使っていた[4]

この式をテクニカル分析の用語を使って表すと次のようになる。用語が異なるだけで同じ式である

この式で を展開すると次式のようなべき級数となり、各時点の価格 p1, p2, …… が指数関数的に重み付けされている。

[注釈 2]

理論上これは総和であるが、1-α が 1より小さいので、項はどんどん小さくなって、ある項から先は無視できる大きさになる。

N 日間の EMA といった場合の N は単に係数αを示すに過ぎず、実際の計算は N 日間のデータだけでは済まない。ただし、直近の N 日間のデータが EMA において 86 %の重みをもつ。証明:

(左辺の分母は1であり、分子の等比数列の和が右辺の形になる[注釈 3]。)この極限値は、
= 1-e-2 ≒ 0.8647
になる[注釈 4](e はネイピア数)。

実際には、上のべき級数の式を使って最初のある日までの EMA を計算し、その翌日以降は最初のほうで示した式を使えばよい。

初期値の問題に戻る。古いデータに極めて大きな値があった場合、たとえその重みが小さくても全体には大きな影響を与える。そういう場合には、価格変動がそれほど大きくないと仮定できるなら、重みだけを考慮してある項目数 k までで計算を打ち切ればよい。このとき、省略される項の重みは

  

となる。すなわち、全体の重み 1 に対して に相当する部分が省略されることになる。

例えば、99.9 %の重み(精度)で計算したい場合には、計算する項目数を とすればよい。N が増えるに従って に近づいていく[注釈 5]から、N が大きいときは [注釈 6]とすればほぼ 99.9% の精度となる。

なお、 ではなく とする EMA もある(次節)。

修正移動平均

修正移動平均 (Modified Moving Average; MMA) は、Running Moving Average (RMA)、平滑移動平均 (Smoothed Moving Average) などと呼ばれる。

定義は次式による。

要するに、 とした指数移動平均である。


注釈

  1. ^ 数値計算上は、丸め誤差が累積する事に注意。
  2. ^ なので、
  3. ^ 分子は である。
  4. ^ (1+x/n)n の極限値は、n→∞ のとき ex になる。
  5. ^ α→0 のとき、テイラー展開によって、log(1-α) = -α -α2/2 - … → -α である。
  6. ^ loge(0.001) / 2 = -3.45
  7. ^ としても計算できる。

出典






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