督姫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/20 18:01 UTC 版)
督姫の生年について
生年を永禄8年とする史料と天正3年とする史料が両方存在するが、永禄8年説の場合、末子の輝興を出産したときの督姫の年齢が47歳になる[注釈 6]。
天正3年説でも北条氏直と結婚したときの年齢は9歳[20]になり、氏直と死別した17歳前後までに2女をもうけたことになる[注釈 7]。
現時点では生年を検証するような論考がないが、督姫の没年に「督姫が疱瘡を患ったが四十餘歳なので以ての外大儀である」という旨の記述[21]があり、享年を41とする天正3年説と合致する。義演が督姫の年齢を勘違いしていた可能性もあるが、義演は輝政の没後に督姫から忠継の身上のための祈祷を依頼されていて[22]、督姫とも交流があるため年齢も把握していたと見る方が自然である。
毒饅頭事件の虚構性について
16歳で亡くなった忠継の死には以下のような伝説がある。
忠継の母・督姫が実子の忠継を姫路城主にすべく、継子で姫路城主であった利隆の暗殺を企て、岡山城中で利隆が忠継に対面した際、饅頭に毒を盛って利隆に勧めようとした。女中が掌に「どく」と書いて見せたため、利隆は手をつけなかったが、これを察知した忠継は利隆の毒入り饅頭を奪い取って食べ、死亡した。こうして身をもって長兄で正嫡の利隆を守ったという。また、督姫もこれを恥じて毒入りの饅頭を食べて死亡したとされる[23]。
史実として忠継は、慶長20年(1615年)2月23日に岡山城内で疱瘡で死去し、督姫は同年2月4日に二条城で死去しているため、死亡した場所や順番、死亡原因全てにおいて異同がある。池田家は利隆系と忠継系に分かれ、それぞれの子孫が岡山藩と鳥取藩の藩主となっていくが、両方の藩の史料で毒殺は否定されている[24][25]。加えて利隆の嫡男・光政は忠継の跡を継いだ忠雄が死去した際に、親密な関係を窺わせる追悼歌[26]を残しており、上記のような経緯があったとは考えにくい。
また、昭和53年(1978年)に忠継廟の移転の際に発掘調査が行われ、その際に毒死疑惑検証のため遺体の調査が行われた。その結果でも毒物は検出されることはなかった。
注釈
- ^ 督姫の母方の祖母は今川氏親の娘であり瑞渓院とは姉妹になるため、瑞渓院の孫である氏直とは、再従兄妹(はとこ)の関係である。
- ^ ここで出てくる池田輝政の娘は没年、院号、戒名などが万姫と一致しており、輝政の養女となっていた万姫のことだと分かる。
- ^ この催しに関する4月19日付の池田輝政書状が鳥取県立博物館に所蔵されている。『因州藩の能楽』155ページ
- ^ 2人の並びは没年順であり、姉妹の生年順とは一致していない可能性もある。
- ^ 『因府年表』では池田利隆の許嫁とし、『池田氏家譜集成 池水記』では妙玄院(法名の誤記と思われる)が死んだとき17歳だったとする記述がある。
- ^ 実年齢ではおおよそ45歳になり、現代でも高齢出産の範囲になる。
- ^ 氏直とは13歳差になる。当時の結婚で夫と年齢差があるのはよくあることだが、初婚で子もいない氏直がまだ出産できない年齢の女性を正室に迎えたということになる。
出典
- ^ 『徳川幕府家譜』
- ^ a b 『池田氏家譜集成』巻30収録『因州鳥取慶安寺略記』. pp. 69-71
- ^ 『幕府祚胤伝』
- ^ 『池田氏家譜集成』巻30収録『因州鳥取慶安寺略記』. p. 69
- ^ a b 『蓮葉院余光記』 2018年12月30日閲覧。
- ^ “中筋村の飢饉”. 兵庫県宝塚市. 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『言経卿記』
- ^ a b 『当代記』 2018年12月30日閲覧。
- ^ “町指定文化財 蓮華寺礼盤”. 兵庫県播磨町. 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『当代記』 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『寛政重修諸家譜』 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『譜牒余録』 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『駿府記』 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『徳川実紀』
- ^ 鳥取県立博物館. 昭和54年度『資料調査報告集 第七集 「菅家文書」「乾家文書」』「菅家文書」22、23、24 良正院局書状 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『本光国師日記』
- ^ 福昌山本教寺にある督姫の肖像画の裏書より
- ^ 岡嶋正義. 『因府年表』
- ^ 『池田氏家譜集成』巻1. pp. 26-27
- ^ 『池田氏家譜集成』巻30『慶安寺覚書』. p. 75
- ^ 『義演准后日記』元和元年正月晦日の条 2018年12月30日閲覧。
- ^ 『義演准后日記』元和元年六月十六日の条
- ^ 『武徳編年集成』
- ^ 『池田家履歴略記』文禄三年甲午 良正院殿入輿
- ^ 『池田氏家譜集成』
- ^ “『池田忠雄追悼歌』”. 林原美術館. 2018年5月20日閲覧。
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