漁船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/08 03:59 UTC 版)
日本の漁船
太平洋戦争(大東亜戦争)後の食糧難解決のため、戦後大量の漁船が建造された。しかし、それらの急造漁船はその機能性および安全性などに劣るものが多く見られた。こういった背景から、漁業の振興及び漁船の適正化を図るため、1950年(昭和25年)、議員立法により漁船法が制定された。
- 漁船法上の定義
漁船は、漁船法では、以下のように定義されている。
- もつぱら漁業に従事する船舶
- 漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの
- もつぱら漁場から漁獲物又はその製品を運搬する船舶
- もつぱら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締に従事する船舶であつて漁ろう設備を有するもの
1950年の漁船法の定義を採用すれば、漁船法上の漁業種類は刺網漁業、定置漁業といった一般的なもののほか、漁獲物運搬船、真珠養殖船なども含まれる。また、水産系の大学および試験研究機関の有する調査船や漁業取締船は官公庁船として分類されている。
上記の分類から遊漁船は漁船に含まれず、一般には小型船舶登録を受けている。ただし漁船との兼用も可能である。
- 漁船登録
漁船は漁船登録を受けた上で船名と漁船登録番号を船体に標示しなければならない、と定められている。
漁船法による分類
漁船登録は漁船法による以下の分類にしたがって漁船登録を行う。
- 1級船(100トン以上の海水動力漁船)
- 2級船(5トン以上100トン未満の海水動力漁船)
- 3級船(5トン未満の海水動力漁船)
- 4級船(5トン以上の海水無動力漁船)
- 5級船(5トン未満の海水無動力漁船)
- 6級船(淡水動力漁船)
- 7級船(淡水無動力漁船)
上記の分類は重複することも可能である。例えば、海面と河川・湖沼などの内水面(ないすいめん)と両方で用いる5トン未満の漁船であれば、3級船と6級船の両方で登録する。
漁船登録番号
漁船登録番号は各都道府県が配布し、必ず船体に標示しなければならない。形式としては以下の例のように、都道府県の識別標(アルファベット)、漁船の等級標(1から7)、横線、漁船の番号を組み合わせる形式を採る(漁船法施行規則付録第二)。
例)HK2-10000
前2文字のアルファベットが所属都道府県を示す(識別標という)。例に掲げたHKは北海道である。次の1文字は1-7の数字が入り、1級船から7級船を示す(等級標という)。横線(ハイフン)の後は各都道府県の配布する登録順の番号である。この番号は漁船の所有者が変わっても県外に出ない限り保持される。
茨城県は、「いばらき」が正式な読みであるため、識別標はIKを付与されるのが本来であるが、石川県とアルファベットが重複しているため、IGが付与されている。
- 都道府県の識別標一覧[4]。
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- 等級標の一覧
- 海水面において使用する漁船
- 総トン数100t以上の動力漁船 - 1
- 総トン数100t未満5t以上の動力漁船 - 2
- 総トン数5t未満の動力漁船 - 3
- 総トン数5t以上の無動力漁船 - 4
- 総トン数5t未満の無動力漁船 - 5
- 淡水面において使用する漁船
- 動力漁船 - 6
- 無動力漁船 - 7
- 海水面において使用する漁船
船名
船名は任意である。例えば「第八幸福丸」といった「第・・丸」という船名が多いが、「丸」を付けなくても良い。「丸」を付けるのは単なる伝統や慣習に過ぎない。また、「第・・」という番号も全くの任意であり、「第八」と言っても8隻同じ名称の船があるとは限らない。むしろ縁起を担いで第八、第八十八、といった形で命名している場合の方が多い。船名に使用できる文字は平仮名、片仮名、漢字およびローマ字(外国語は不可)に限られる。
トン数
漁船のトン数は通常の船舶と同様に「船舶の総トン数の測度に関する法律」に基づき算定(測度)されている。漁業許可の一部は使用する漁船についてトン数の制限が定められているため、必要以上の大きな漁船を建造することはない。一般の小型船舶は日本小型船舶検査機構が、大型船舶は国土交通省の各地方運輸局が測度する。漁船については、小型漁船は都道府県が、大型漁船は各地方運輸局が測度している。
その他
船首や船尾に化粧板による装飾が見られた[5]。船首に魔除けとして唐草や目玉があるのが北伊勢地方の特徴で、船尾の千里は各所にみられる。三河地方の漁船は打瀬船のような舳先が垂直となったズンド水押に変わったため、目玉を魔除けとする風習は明治20年頃になくなった[6]。
- ^ Global Note
- ^ 船と海の研究会編 『海洋船舶の科学』 日刊工業新聞社 2008年4月30日初版第1刷発行 ISBN 9784526060533
- ^ [1]
- ^ 情報通信審議会諮問第50号 「海上無線通信設備の技術的条件」のうち「簡易型 AIS 及び小型船舶救急連絡 装置等の無線設備に関する技術的条件」(案) 別紙3 27-28頁 総務省
- ^ “積丹が生んだ「巨匠」造形家 竹谷隆之”. NHK北海道. 2024年1月8日閲覧。
- ^ “漁船の化粧板”. khirin-a.rekihaku.ac.jp(国立歴史民俗博物館). 2024年1月8日閲覧。
- ^ a b 諸外国(EU、米国、ノルウェー)の漁業と漁業政策の概要 水産庁
- ^ a b c d e “ノルウェーの漁業及び漁業管理について”. 水産庁. 2021年9月26日閲覧。
漁船と同じ種類の言葉
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