準静的過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 19:22 UTC 版)
原理
ボイル=シャルルの法則が常に成り立つ気体として、熱力学ではしばしば理想気体が取り扱われる。理想気体に対してはボイル=シャルルの法則が完全な等式として成立し、体積 V、圧力 p、温度 T について以下の関係を満たす。
上記の関係は以下に示す理想気体の状態方程式から直ちに得ることができる。
これらの式が成り立つのは気体が平衡(熱力学的平衡)の状態にあるときに限られる[1]。平衡とは、時間がたっても系の状態が変化しないことをいう。
物体(系)の温度や圧力などが変化する過程では、変化の途中の段階では状態が連続的に変わっているため、一般的には平衡とみなせない。したがって、これらの式はつねに成り立つとは限らない。しかし、温度や圧力の変化を非常にゆっくりと行えば、変化の途中段階を含めてすべて平衡として取り扱うことができる。このような過程が準静的過程である[2]。
熱力学的平衡には、力学的平衡、熱平衡、化学的平衡が含まれる。 したがって、系全体の圧力が均一な状態(力学的平衡)が保持できる程度にゆっくりと行われる膨張・圧縮や、系内に温度不均一が生じない(熱平衡)程度にゆっくりと行われる加熱・冷却 は準静的変化と見なすことができる。 また、系内で化学変化または成分物質の物質移動が生じる場合は、 (化学量論的関係を含めた)各成分の化学ポテンシャルが均一な状態(化学平衡)を保持できる程度にゆっくりと生じる変化は、準静的過程であると見なすことができる [3]。
ある状態変化において、
が満たされれば、この変化は可逆過程となる [4]。 ただし文献によって用語の定義に相違や曖昧さがあり、 可逆過程と準静的過程を同義に使う文献[5]もある。
- ^ 芦田(2008) pp.12-13
- ^ 田崎(2000) p.36
- ^ Zemansky(1957) pp.52-53
- ^ Zemansky(1957) pp.196-197
- ^ 原島(1978) pp.32-34
- ^ キャレン(1998) p.130
- ^ 白井(2011) p.76
- ^ a b キャレン(1998) p.26
- ^ a b キャレン(1998) p.133
- ^ キャレン(1998) pp.133-134
- ^ 竹内(2002) pp.142-144
- ^ 高林(1999) pp.139-140
- ^ カルノー(1973) p.44
- ^ a b c カルノー(1973) p.48
- ^ a b c カルノー(1973) p.49
- ^ カルノー(1973) p.46
- ^ 山本(2009) p.235
- ^ 山本(2009) pp.171-173
- ^ 高林(1999) p.146
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