仕事と準静的過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 19:22 UTC 版)
シリンダーに入った気体をピストンを引いて膨張させる過程について考える。このとき、シリンダー内の気体はピストンを押し広げたことになる。この過程においてシリンダー内の気体は外部に対して仕事をしたという。 そして熱力学では、このときシリンダー内の気体がした仕事 W は、 W = p d V {\displaystyle W=pdV} で表せる。dV は、シリンダー内の気体によって広がった分の体積である。 しかし、この式もつねに成り立つとは限らない。なぜなら、ピストンを引いている最中、シリンダー内の圧力 p は徐々に減少するが、ピストンを引く速度が速い場合、すなわちピストンを勢いよく引いた場合は、シリンダー内の圧力はどこでも同じでなく、場所によって多少のムラが出てしまうからである。その場合は、ピストン移動中の圧力が定まらず、結果として仕事を上述の式で表すことはできない。 この式が成り立つのは、ピストンを引いている間、気体がつねに平衡の状態にあるときである。そこで、準静的過程の考え方が適用される。すなわち、ピストンを動かす速さを可能な限り遅くし、無限の時間をかけてシリンダー内の体積を変化させるようにする。こうすることで、ピストンの移動中も含めたすべての状態において平衡と考えることができ、式が成立する。
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