横綱審議委員会 批判

横綱審議委員会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 15:30 UTC 版)

批判

横審に対しては、批判も少なくなく、改革が必要との意見もたびたび挙がっている。主な批判は以下の通りとなる。

委員長及び委員の人選

委員長ならびに委員には、新聞社の社長やNHK会長など、マスコミの関係者の就任が多く見られる。これは八百長問題など大相撲に批判的な報道を封じ込める意図があるとしてしばしば批判の対象となっている。

日本人と外国人とでの推薦内規の運用の格差

外国人大関に対しては、賜杯を獲得できたとしても粗捜しをして「もっと高いレベルでの優勝」などと無理難題を突き付ける意見がたびたび出されている。日馬富士は2009年(平成21年)5月場所で14勝1敗、しかも白鵬を優勝決定戦で破り、14日目には朝青龍に勝っているにもかかわらず、立合いの変化を糾弾された末次の7月場所で14勝以上の優勝と相撲内容の充実を絶対条件とした。その7月場所では9勝6敗と期待に応えられず、昇進を勝ち得るのは昭和以降の大関史上3人目となる2場所連続全勝を果たした2012年(平成24年)秋場所後と、3年も遅れる結果になった。

琴欧洲については、2008年5月場所で日馬富士と同じ14勝1敗で優勝したにもかかわらず、やはり過去2場所の成績を批判し、「高いレベルでの優勝(このときは相撲内容が低ければ13勝で優勝しても横綱昇進は見送ると付け足している)」が条件だと厳しく指摘した[25]。なお、琴欧洲は次の7月場所は9勝6敗、9月場所・11月場所はともに8勝7敗に終わって綱とりを果たすことはできなかった。

逆に日本人大関には、「次の場所は優勝せずとも、勝利数次第では昇進の話が出てくる」など大きく内容が異なる(魁皇栃東等)。このような背景から、外国人に比べ日本人が優遇されていることへの一般のファンからの疑問[26]も存在する。さらに、日本人横綱への期待論の高まりもあって、就任前・在任中・退任後を問わず外国人横綱不要論を述べる委員もおり、外国人への差別になりはしないか、という批判も出ている。

その他

2020年11月場所後の11月23日、横綱審議委員会は両国国技館での定例会合で白鵬鶴竜に「注意」を決議した。2018年11月場所以降の計12場所の内3分の2に相当する8場所を休場している白鵬と鶴竜に対して矢野弘典委員長は「休みがあまりにも多い。深く強い責任を持って今後に対処してほしい」と語り「我々が強制するわけではないが、横綱が出場しない場所をあまり長く続けてはいけない」と述べた[27]

これに対し「差別」という声が上がり、脳科学者の茂木健一郎も自身のブログで「さらにまずいのが、外国出身の力士に対する差別、偏見ととられかねないことで、今回の白鵬、鶴竜の両横綱に対する『注意』を、稀勢の里に対する温情と比較するとその感を強くする」と批判した[28]。一方で、直近だけでなく通算での休場の多さにも問題があるといった見方もあり、翌場所休場となった際には横審以外からも苦言を呈する声が挙がっていた[29]


注釈

  1. ^ ただし、東富士・照國・羽黒山はいずれもこの時点ですでに一時代を築いた名横綱であったため、彼らの昇進自体が不当だったとする見解は存在しない。
  2. ^ 当時の吉田司家のトップであった24世追風・吉田長善が突然引退した件。このため、当時わずか7歳だった吉田長孝が急遽25世追風を継ぐことになった。
  3. ^ 玉乃島の横綱昇進が否決された際(1968年5月場所後)、当時の理事長であった時津風(元横綱双葉山)は、委員会が反対しても協会は横綱にすることがあるのかとの問いに対し「番付会議で横綱へと圧倒的な意見が出されればそういうこともありうるかも知れない」として、「尊重」といえども答申を覆す可能性があることを示唆している(朝日新聞1968年5月28日付朝刊。もっともこのときは答申通り横綱昇進を見送っている)。
  4. ^ 北の富士・玉乃島の横綱推薦を決めた際(1970年1月場所後)、当時の横審委員長であった舟橋聖一は、「委員会は諮問があれば答申するだけでなく、たとえ諮問がなくても推薦できる権限を持っている。」(朝日新聞1970年1月27日付朝刊スポーツ面)と述べている。しかしながら、手続きの確立していなかった横審初期を除けば、協会からの諮問なしで横審が横綱推薦を決めた例はなく、諮問を受けて横綱推薦を議論するという手続きが現在では確立している。
  5. ^ この一方で、東京場所初日の前日に行われる「土俵祭」の公開や、その終了後に親方衆を講師とした「相撲寺子屋」「相撲塾」の開催などは続いている。

出典

  1. ^ a b c d 日本相撲協会定款 日本相撲協会、2018年11月26日閲覧。
  2. ^ a b c d 塩田勝編『現代用語辞典』金園社、1987年11月、382頁
  3. ^ a b 高永・原田、134~136頁
  4. ^ a b c d e f g h i 横綱審議委員会、最大5期10年報酬なし 日刊スポーツ、2018年11月26日閲覧。
  5. ^ 朝日新聞1953年1月28日付朝刊スポーツ面
  6. ^ 横綱審議委員会規則第4項
  7. ^ 横綱審議委員会規則第6項
  8. ^ 横綱審議委員会規則第5項による。元協会員(退職者)に対してもこの規則は適用される。
  9. ^ 横綱審議委員会規則第10項
  10. ^ 横綱審議委員会規則第9項
  11. ^ 横綱審議委員会規則第2項
  12. ^ 横綱審議委員会規則第11項
  13. ^ a b 高永・原田、180~185頁
  14. ^ 横綱審議委員会規則第3項
  15. ^ 朝日新聞1954年5月25日付朝刊
  16. ^ 朝日新聞1988年1月1日朝刊スポーツ面
  17. ^ 朝日新聞1988年1月26日朝刊スポーツ面
  18. ^ a b c 「激励」右膝負傷で途中休場の稀勢の里に横審が決議 日刊スポーツ、2018年11月26日閲覧。
  19. ^ “横審が3場所連続休場の白鵬と鶴竜に「注意」の決議”. 日刊スポーツ. (2020年11月23日). https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/202011230000592.html 
  20. ^ “【大相撲】照ノ富士に横審が〝出場勧告〟 山内委員長「初場所はぜひ姿を見せてほしい」”. 東京スポーツ. (2023年11月27日). https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/284109 
  21. ^ 「稀勢の里に横審が異例の注文」 日刊スポーツ2009年3月31日紙面
  22. ^ 「大海に横審が引退勧告、負け越しで休場発表」 デイリースポーツ2009年9月22日紙面
  23. ^ 「大相撲:内館委員、大関陥落・大海に「物言い」--横綱審議委員会」 毎日新聞2009年12月1日 東京朝刊
  24. ^ “相撲協会:NHKの生中継中止を批判 横審・鶴田委員長”. 毎日新聞. (2010年8月25日). http://mainichi.jp/enta/sports/general/sumo/news/20100826k0000m050062000c.html [リンク切れ]
  25. ^ 読売新聞社東京本社刊 『大相撲』 2008年7月号(名古屋場所展望号) 2頁
  26. ^ 高槻ご意見番:外国人力士に負けるより、ルールを曲げるほうが恥。北岡隆浩高槻市市議会議員2006年04月11日
  27. ^ 横審、2横綱に初の「注意」決議 日本経済新聞 2020/11/23 18:45 (2020年11月24日閲覧)
  28. ^ 相撲協会の「外国人親方はダメ」ルール誕生の背景が、ヘイトスピーチすぎて愕然 週刊女性PRIME 2020/12/1 (文・和田靜香、2020年12月5日閲覧)
  29. ^ 『こっそり休場』の鶴竜、これで19回目…少しずうずうしすぎると思いませんか【北の富士コラム】 中日スポーツ・東京中日スポーツ 2021/1/10 (2023年5月14日閲覧)
  30. ^ 田中亮『全部わかる大相撲』(2019年11月20日発行、成美堂出版) pp.8-9
  31. ^ “無料なのに 横審総見、国技館はガラガラ…内容も低調”. スポーツニッポン. (2011年4月29日). https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2011/04/29/kiji/K20110429000722950.html 
  32. ^ 「横審稽古総見は一般公開せず」 日刊スポーツ2012年7月16日
  33. ^ 横審委員ら、白鵬張り手なし「ほっとした」初日総見 日刊スポーツ、2018年11月26日閲覧。
  34. ^ a b c 横審が6場所出場停止の朝乃山に”恩赦”議論「なんとかならないのかという意見が出た」」『東京中日スポーツ』2022年1月24日。2022年1月24日閲覧。
  35. ^ 春場所で綱取りの貴景勝 横審の高村委員長「レベルが高い優勝ということを我々の中から言う人はいないのでは」と私見 - スポーツ報知 2023年1月23日
  36. ^ 歴代文部科学副大臣”. 文部科学省ホームページ. 文部科学省大臣官房総務課. 2023年9月9日閲覧。
  37. ^ a b 横審新メンバーに紺野美沙子氏と池坊保子氏 女性委員は内館牧子氏以来」『日刊スポーツ』2022年3月31日。2022年3月31日閲覧。
  38. ^ a b 元垣添の雷親方が入間川部屋継承、名称変え「雷部屋」62年ぶり復活 入間川親方4月定年」『日刊スポーツ』2023年1月26日。2023年1月26日閲覧。
  39. ^ a b c 相撲』2020年6月号、ベースボール・マガジン社、2020年、122頁。 
  40. ^ 衆議院歴代議長・副議長一覧”. 衆議院ホームページ. 衆議院事務局庶務部広報課. 2023年9月9日閲覧。
  41. ^ 横綱審議会委員に仏文学者の鹿島茂氏」『産経新聞』2024年2月1日。2024年2月1日閲覧。
  42. ^ “横審新委員にJT会長で元官僚丹呉氏、総数変わらず”. 日刊スポーツ. (2019年2月8日). https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/201902080000580.html 2019年2月8日閲覧。 
  43. ^ 横審、白鵬は7月の結果で最終判断 方針を維持 照ノ富士の綱とりに期待」『SANSPO.COM』2021年5月24日。2021年5月25日閲覧。
  44. ^ 任期満了の横審・高村委員長、3場所連続休場の横綱照ノ富士に「できるだけ早く土俵に戻ってきてほしい」」『サンケイスポーツ』2023年1月23日。2023年1月23日閲覧。






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