新約聖書
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日本語訳
ネストリウス派のキリスト教(景教)が「流行した」と言われる中国の唐代に漢訳聖書があったことは確かであり、これが日本にも伝わったという説もあるが裏づけとなる事実はない。
日本へ最初に新約聖書をもたらしたのは1549年に来日したフランシスコ・ザビエルであり、彼は周防の大名大内氏に対して携えた聖書と注釈書を示し、「この中にわれわれの聖なる教えが全部含まれている」と語ったという。そして同時代の西洋人の証言によれば1613年までには、日本語に訳された聖書が京都で出版されていた。しかし、その後日本では宣教師が追放されてキリスト教が弾圧されたこともあり、その聖書は断片すら残っておらず、今日に伝わるのは教義書や典礼書などに使われた一部の翻訳聖句だけである。
19世紀になると日本に入国できないプロテスタントの宣教師たちが、中国で漢訳聖書を参照しながら日本語訳を開始した。この方法は開国直後に来日を果たした宣教師たちにも引き継がれた。もっとも有名なのはヘボンによる1872年の新約聖書翻訳であろう。
ヘボンはこの後、在日の宣教教会らに呼びかけて翻訳委員社中を結成して1880年に新約聖書、1887年には旧約聖書を完成。これを明治元訳と呼ぶ。新約聖書はその後1917年に改訳され、これは大正改訳と呼ばれている。明治元訳も大正改訳も他国と同様に出版は英国外国聖書協会、北米聖書教会、北英聖書協会であり、日本社会の中に広く普及した。その後、日本聖書協会が設立され、第2次世界大戦後に旧新約聖書の口語訳改定が行われる(新約が1954年、旧約が1955年)。他にも口語訳聖書は多く存在するが、日本では聖書協会のこの訳を口語訳と呼ぶ。
世界各地で行われたのと同様にこうした聖書協会系の翻訳はプロテスタント系の事業であり、カトリック教会や正教会はまた別の日本語訳聖書を用いてきた。しかし20世紀後半になって世界的にエキュメニズムの流れが進み、カトリックとプロテスタントの共同での聖書翻訳作業が行われるようになった。日本でもこの動きを受けて諸教派を代表する聖書学者たちが結集し、1978年に新約聖書のみであるが、共同訳聖書の発行が行われた。この共同訳に対しては批判的意見が相次ぎ、再翻訳が行われて1987年に新共同訳聖書が発行された。これは新約・旧約に加え、プロテスタント系聖書では従来含まれていなかった文書群を旧約聖書続編として含んでいる。現在、日本のキリスト教会においてもっとも広く用いられているのがこの新共同訳聖書である。新共同訳聖書にはローマ・カトリックの解釈と訳語が反映されている。
他方、日本正教会では日常的には聖書協会訳も用いるものの、奉神礼においては現在も自派の訳である日本正教会訳聖書を用いている。
プロテスタントのうち聖書信仰の教会によって訳された新改訳聖書は、エキュメニカル派に対比される福音派のプロテスタントでよく使われている。新改訳は文語訳聖書以来の日本のプロテスタントの訳語を継承している。また福音派による訳としては現代訳聖書もある。[9][10][11][12]
この他にも、出版された日本語聖書は多数存在する。
注釈
- ^ 青柳ほか(1995)によると「彼は王国の滅亡、捕囚というイスラエルの苦難が、律法にそむいた罰であると宣告する。しかし、自問し苦悶する彼に、神の意志として啓示されたのは、契約を破ったイスラエルの罪を許し、再び彼らとの間に「新しい契約」を結ぶというものであった。彼の預言には、それまでの預言者にはない神の愛と救済が述べられており、イエスの教えに通じるものがみられる。」とされる[6]。
- ^ 批判学の見解では実際の著者とは限らないと主張される。
出典
- ^ “諸啓典への信仰”. IslamReligion.com. 2018年11月7日閲覧。
- ^ アリスター・マクグラス『キリスト教神学入門』教文館 p.226
- ^ 和田幹男『私たちにとって聖書とは何なのか-現代カトリック聖書霊感論序説』女子パウロ会 p.137
- ^ Quaestiones in Heptateuchum 2, 73
- ^ 尾山令仁著『聖書の権威』日本プロテスタント聖書信仰同盟 (再版:羊群社) p.100
- ^ 青柳知義ほか『新資料集 倫理』一橋出版、1995年。ISBN 4891965150。
- ^ 『エレミヤ書』 - コトバンク
- ^ Carson & Moo 2009, p. 246
- ^ 『聖書翻訳を考える』『聖書翻訳を考える(続編)』新改訳聖書刊行会
- ^ 『日本における聖書とその翻訳』
- ^ 尾山令仁『聖書翻訳の歴史と現代訳』暁書房
- ^ 中村敏『日本における福音派の歴史』いのちのことば社
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