新約聖書
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テキスト
『新約聖書』のギリシア語テキストは多くの写字生によって書き写され、後世に伝わった。写本は古代では巻物(スクロール)の形をとっていたが、やがてコデックス(冊子本)の形式が主流となった。『新約聖書』のギリシア語テキストと一言で言っても多くの異同を含むものが多数あり、それらを研究・分類するといくつかのタイプに分けることができる。このようなタイプを「型」といい、おおむね下のようなカテゴリーに分ける。
- アレクサンドリア型
- 現代ではもっとも原文に忠実であると考えられているのがこのアレクサンドリア型である。アレクサンドリア型ではほとんどの文章が簡潔で飾り気がない。特に有名なものとしてバチカン写本、シナイ写本、ボードマー・パピルスなどがある。
- 西方型
- 西方型は文章がより装飾的で長くなっていることに特徴がある。たとえば西方型の『使徒言行録』は他のタイプのものと比べると一割近く長い。ベザ写本、クラロモンタヌス写本、ワシントン写本、古ラテン語聖書などがそれにあたり、マルキオン、タティアノス、エイレナイオス、テルトゥリアヌス、キュプリアノスらの新約聖書の引用もこの型である。
- カイサリア型
- カイサリア型はアレクサンドリア型と西方型の混合であるとみられる。チェスター・ビーティー・パピルスやエウセビオス、エルサレムのキュリロスの引用に見られる。
- ビザンティン型
- 中世以降に、アンシアル書体で小文字で書かれたもので、護教的な後代の付加が多い。混合型ともよばれ、アレクサンドリア写本がこれにあたる。エラスムスが『新約聖書』のギリシア語批判版テキストを作成する際にこれを用いたため、そこから英訳した欽定訳聖書にも大きな影響を与えることになった。
現代の『新約聖書』の翻訳は、徹底した比較・研究によって再現されたより原文に近いテキストを用いて行われる。もっとも信頼性の高いテキストとされているギリシア語批判版聖書は、校訂者の名前をとって「ネストレ・アーラント」と呼ばれている。
注釈
- ^ 青柳ほか(1995)によると「彼は王国の滅亡、捕囚というイスラエルの苦難が、律法にそむいた罰であると宣告する。しかし、自問し苦悶する彼に、神の意志として啓示されたのは、契約を破ったイスラエルの罪を許し、再び彼らとの間に「新しい契約」を結ぶというものであった。彼の預言には、それまでの預言者にはない神の愛と救済が述べられており、イエスの教えに通じるものがみられる。」とされる[6]。
- ^ 批判学の見解では実際の著者とは限らないと主張される。
出典
- ^ “諸啓典への信仰”. IslamReligion.com. 2018年11月7日閲覧。
- ^ アリスター・マクグラス『キリスト教神学入門』教文館 p.226
- ^ 和田幹男『私たちにとって聖書とは何なのか-現代カトリック聖書霊感論序説』女子パウロ会 p.137
- ^ Quaestiones in Heptateuchum 2, 73
- ^ 尾山令仁著『聖書の権威』日本プロテスタント聖書信仰同盟 (再版:羊群社) p.100
- ^ 青柳知義ほか『新資料集 倫理』一橋出版、1995年。ISBN 4891965150。
- ^ 『エレミヤ書』 - コトバンク
- ^ Carson & Moo 2009, p. 246
- ^ 『聖書翻訳を考える』『聖書翻訳を考える(続編)』新改訳聖書刊行会
- ^ 『日本における聖書とその翻訳』
- ^ 尾山令仁『聖書翻訳の歴史と現代訳』暁書房
- ^ 中村敏『日本における福音派の歴史』いのちのことば社
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