押しボタン 押しボタンの概要

押しボタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/19 07:43 UTC 版)

概要

「指先で押す」という操作によって機器への入力を行うパーツである。ボタンを押すと、ストロークする(ボタンが奥へ移動する)。「カチッ」という音が鳴るボタンもある。

電子機器や産業機器においては、スイッチング回路と組み合わせて「押しボタンスイッチ」の意味で使われることが多いが、本来的にはボタンの仕様とスイッチング回路の仕様は別々の概念である。

規格

産業機器における「押しボタンスイッチ」は、日本においては一般社団法人日本電気制御機器工業会が策定するNECA規格において、「NECA C 4520(制御用スイッチ通則)」および「NECA C 4521(制御用ボタンスイッチ)」において定義されている。かつてはJIS規格(JIS C 4520-1991およびJIS C 4521-1991)において定義されていたが、これは1999年に廃止され、NECA規格に引き継がれた。

また、家電製品における「押しボタンスイッチ」に関しては、TRON仕様の中の「TRONヒューマンインターフェイス仕様」が定義している。TRON仕様においては、操作方法の分類において「指先で押すことによって操作する」ことを示す「押しボタン」(プッシュ型パーツ)という概念と、設定内容の分類において「ON/OFFなど二者択一でどちらかを選ぶ」ことを示す「スイッチ」という概念は、別々に定義されているが、「プッシュ型パーツ」のもっとも典型的な例として「押しボタンスイッチ」が例示されている[1]。TRON仕様においては、「スイッチ」は「二者択一でどちらかを選ぶもの」と定義されているため、例えばボタンの押し方の強さによって数値や量(ボリューム)を指定して機器に渡すような装置は「プッシュ型ボリューム」ということになり、「スイッチ」には含まれない。

種類

押すとオンになる(回路が閉じる)タイプのスイッチ
押すとオフになる(回路が開く)タイプのスイッチ

スイッチング回路の仕様において分類すると、大きく分けて、押すとオンになる(回路が閉じる)タイプのスイッチと、押すとオフになる(回路が開く)タイプのスイッチが存在する。より複雑な動作(押し初めだけオンになるなど)をするかのようなボタンもあるが、そういうものもほとんどはこの2種類のいずれかと電気回路との組み合わせで実現されている。

ボタンを押したときの位置が保持される期間において分類すると、大きく分けて、自動復帰型(モーメンタリスイッチ)と位置保持型(オルタネートスイッチ)が存在する。モーメンタリスイッチとは、押している間だけ一時的にスイッチが「オン」または「オフ」になり、ボタンを離すと自動ですぐに元に戻るスイッチである。NECA規格およびTRON仕様では共に「モーメンタリ」型と呼称する。オルタネートスイッチとは、一度ボタンを押すとその後もずっと「オン」または「オフ」の位置が保持されるスイッチであり、押すたびにオンとオフが反転する。NECA規格では「オルタネート」、TRON仕様においては「セットアップ」型と呼称する。オルタネート動作を実現する構造はいろいろあり、代表的なものとしてはハートカム方式、回転カム方式、ラチェットカム方式がある。

電気的なスイッチでなく、流体の流路の開閉など機械的なスイッチングをするボタンもある。アコーディオンを開閉するボタン、トイレを流すボタンなどがその例である。

キーボードのキーも「押しボタンスイッチ」の定義に当てはまる。平らで隙間なく並んだものを特にキーと呼ぶことが多いが、ボタンと呼ぶかキーと呼ぶかの境目はあいまいである。

SUI(ソリッド・ユーザー・インターフェイス、物理的なスイッチ)とGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース、画面上のスイッチ)において同様のインターフェイスを規定しているTRON仕様においては、SUIの位置保持型スイッチのことを「セットアップ」型と呼称する一方で、GUIの位置保持型スイッチのことを「オルタネート型」と呼称している。

なお、NECA規格においては「引きボタンスイッチ」(指でボタンを引っ張るタイプのスイッチ。手を離すとばねの力などで自然に元の位置に戻る)や「押し引きボタンスイッチ」(押した後に自然に元の位置に戻らず、押した人が引っ張って元の位置に戻すタイプのスイッチ)なども押しボタンスイッチの一種に含まれている。

NECA規格において押しボタンスイッチの一種とされる「引きボタンスイッチ」

紛らわしい例

ある程度の面積がある一つのパーツにおいて、押す場所によって別々のスイッチング回路を開閉するような装置を「押しボタンスイッチ」と呼ぶこともある。プラスとマイナスが一続きになった「セレクタ」や、ゲームパッド十字キーがその例である。ただし、このようなパーツが「押しボタンスイッチ」であるというようなことはNECA規格にもTRON仕様にも定義されていないため、「押しボタンスイッチ」と呼ぶのは誤りである。TRON仕様においては、複数の選択肢の中から1つ(あるいは複数)を選ぶようなパーツは「スイッチ」ではなく「セレクタ」に分類される。なお、十字キーは長らく任天堂の特許であり他のメーカーは実装できなかったため、1つの十字キーと同じ機能を4つの押しボタンスイッチ(十字ボタン)で実装しているコントローラーも存在する。

メンブレンスイッチは、押すスイッチではあるけれどもボタンではないので、押しボタンスイッチに分類されない。なお、TRON仕様においてはメンブレンスイッチは「プッシュ型」にすら分類されず、押したら凹むパーツだけが「プッシュ型」に分類され、押しても凹まないパーツは「タッチ型」に分類されるので、言うなればメンブレンスイッチは「タッチパネル」である。

ボタンに類似する形をしていても、機械的に動作する機構がなく、圧力静電気などを感知することでスイッチのオン・オフを行う装置もあるが、これは押しボタンスイッチではなく、タッチパネルである。なお、iPhoneの「ホームボタン」については、iPhone 6S以前のiPhoneは本物の押しボタンスイッチを搭載していたが、iPhone 7以降のiPhoneは物理ボタンが廃止されて感圧式タッチパネルとなっているので、同じ名前と同じ形をしていても、「押しボタンスイッチ」どころか「ボタン」ですらない。

形状

主な形状

ガード付きボタン(降車ボタン)。体が当たったりして間違って押してしまう危険性が少ない。

NECA規格で定義されているものは次の5つ。

長ボタン
縦に長いボタン。周囲から柱形状にボタンが突き出している。長いので、ボタンを全部押し込んでも周囲と同じ高さにならない。
突型ボタン
凸型をしている。長ボタンよりも長さが短く、ボタンを押し込むと周囲と同じ高さになる。ボタンの先は平ら。
平型ボタン
周囲からボタンは飛び出さず、周囲と同じ高さになっている。ボタンを押すと周囲よりも低くなる。
きのこボタン
キノコ型(マッシュルーム型)をしており、周囲から突き出た軸の先に、大きく中央が膨らんだ円盤がついている。押しやすいが、異物が挟まることがある。非常停止ボタンは赤いきのこボタンでないとならないことがNECA規格で定義されている。
ガード付きボタン
ボタンの周囲にガードがあり、ボタンの高さはガードよりも低くなっている。ボタンがガードに守られているので、手が当たったりして間違って押してしまう危険が少なく安心である。

その他の形状

他にも、見た目によっていろいろな分類の仕方がある。

コーン
きのこボタンの亜種で、先が末広がりの円錐形になっている。非常ボタンによく使われる。
凹型
長ボタンの亜種で、周囲から柱形状にボタンが突き出している一方、ボタンの先はへこんでいる(指が上記凸型(突型)にあたるため、ボタンと指の密着度が高い)。
丸型・角型
ボタンの平面形。「丸平型」「丸凸型」のようにも表す。
タッチボタン
機械的に動作する機構がなく、圧力静電気などを感知する。圧力は押したときに反応する「タッチエッジ」型と、離したときに反応する「リリースエッジ」型の2種類ある(誤タッチを防ぐためにリリースエッジ型の方が好ましい)。SUI(物理のスイッチ)ではなく液晶ディスプレイなどに表示されたGUI上のボタンであることもある。実際の所、これは「タッチパネル」であり、「ボタン」を称していても定義上は「押しボタン」ではない。

  1. ^ 『トロンヒューマンインタフェース標準ハンドブック』、p.17


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